北海道新聞 2025年2月16日 21:13(2月17日 1:02更新)
地元のファンも増えつつある「とかちリトル映画祭」。昨年は十勝を舞台に映画を制作した逢坂芳郎監督らのトークイベントが行われた=2024年2月9日、ホテルヌプカ(中川明紀撮影)
世界の短編映画を上映する「とかちリトル映画祭」が21日、帯広市と幕別町で開幕する。映画祭は今年で6回目。市中心部の複数会場で上映するため、街なかに人が訪れる効果も出ている。例年200人ほど来場し、清水町で関連イベントが初企画されるなど地元ファンも増えている。
「街なかで映画祭をやれば街が盛り上がる」。札幌国際短編映画祭に感銘を受けた帯広市在住の映像作家、逢坂芳郎さん(44)と市内でホテルヌプカを運営する十勝シティデザイン創業者の柏尾哲哉さん(58)らが2016年11月に初開催した。今年のリトル映画祭は23日までの3日間、札幌国際短編映画祭の入選作など16作品を上映する。
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■帯広ゆかりの2作品、22日上映
とかちリトル映画祭では帯広ゆかりの作品も上映される。特別プログラムとして22日に上映される2本を紹介する。
帯広市と開拓姉妹都市提携を結ぶ静岡県松崎町の有志が自主制作した映画「BEN BEN」が初めて上映される。
松崎町は十勝開拓の先駆者、依田勉三の出身地。主人公の女子高生が勉三の挑戦を知り、夢を持つ大切さを知るという物語だ。制作は2023年の映画祭で、松崎町長らを招いたトークイベントがきっかけだった。
23年4月から約1年間かけて、静岡大生と同大学院生の2人が映画監督のアドバイスを受けながら制作した。主人公やナレーターは松崎高生2人が務めた。松崎町で全て撮影し、出演者の多くが町民だ。
「われこそが依田勉三なり」とさまざまな職業の人が言い合うシーンがある。監督の同大4年の松永理子さん(22)は「勉三の情熱や諦めない精神を伝えたかった」と語る。
松永さんは大学卒業後、静岡で映画関係の仕事に就く。松永さんは映画祭に訪れる予定で「依田勉三を通して松崎と帯広がつながっていることがとてもすてき。その場に立ち会えることがうれしい」と話す。
帯広市の屋台村「北の屋台」のアイヌ料理店「ポンチセ」を舞台にしたドキュメンタリー「ポネオハウ」も上映される。「ポネオハウ」は同店名物の豚骨が入ったスープ。店主の豊川純子さん(48)には温かくもあり、苦くもある思い出の詰まった味だ。
豊川さんが「アイヌであることを隠して生きた」子ども時代から、「北の屋台で店を開く夢をかなえたい」と同店をオープンし、新たなスタートを切るまでを描いている。豊川さんは「幼なじみがお店に来て、アイヌであることを言えないで生きてきたことなどを語り合う場面が印象的」と取材時を振り返る。
作品は北海道テレビ放送(HTB)の広瀬久美子さん(49)がディレクターを務め、21年に初回放送した。広瀬さんは「差別があるということを声高に叫ぶのではなく、活動から距離を置く彼女が語る言葉こそ訴えるものがある」と力説する。
「BEN BEN」は22日午後4時、「ポネオハウ」は同5時からホテルヌプカで無料上映する。いずれも関係者が撮影秘話などを語るトークセッションを行う。