2025年1月8日 21:19(1月8日 21:52更新)
【遠軽】町白滝を舞台とした短編小説を収録した作家・伊与原新さんの短編集「藍を継ぐ海」(新潮社)が第172回直木賞の候補作に選ばれた。白滝に暮らす家族の姿が情感たっぷりに描かれており、直木賞選考会を15日に控え、町民の期待が高まっている。
5編ある収録作の一つ「星隕(お)つ駅逓」は、雪原が広がる3月終わりの白滝の山中に、小さな隕石(いんせき)が落ちたことから物語が始まる。隕石の捜索隊が続々と現地を訪れる中、白滝の農場で働く涼子は廃止が決まった郵便局の局長を務める父のために、ある作戦を思い付く-というストーリー。
涼子が働く農場は白滝に実在する農家民宿「えづらファーム」を想起させる。民宿を運営する江面陽子さん(44)は「過疎が進む白滝に愛着を持ち、生活している私たち農家の思いに寄り添った作品。訪れた観光客にも小説のことを紹介したい」と喜ぶ。
涼子の夫信吾が勤める「白滝郵便局」はJR白滝駅付近に実在。10年以上局長を務める中田卓也さん(52)は以前から伊与原さん作品の大ファンだったといい、「作中の情景描写は実際の白滝の風景そのもの。直木賞受賞で白滝を全国に知ってもらいたい」と期待する。
舞台を遠軽町にしたのは、伊与原さんがフランス留学中に出会った遠軽高吹奏楽局OGのクラリネット奏者黒岩真美さん(48)=苫小牧市在住=に紹介されたからだという。黒岩さんは「いつも穏やかで、温和な伊与原さんの人柄がにじむ小説。大好きな地元のことを書いてくれてうれしい」と語る。
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-作中の情景描写は、遠軽の景色そのもので驚きました。郷土史を基にした表現も多いです。
「黒岩さんを通じて知り合った遠軽高出身の郵便局員さんに、遠軽や郵便配達のことをメールを通じて教えてもらいました。小説に登場する駅逓や囚人道路、アイヌ民族の伝承などは文献を読んで調べました」
-遠軽町の印象は。
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