東京新聞 2024年12月24日 06時00分
まもなく閉会する臨時国会。会期中にただされたひとつが、アイヌ民族の人たちが直面する働き方の問題だった。公共施設で働く人がいる一方、非正規という不安定な形で雇用される例が目立つという。アイヌ民族の経済基盤の弱さが、進学率低迷など貧困に起因するさまざまな問題を引き起こしている。改革はどうあるべきか。(木原育子)
◆「残業代もボーナスも出ず…苦しかった」
「残業代もボーナスも出ず、アイヌというだけで正規職員と差をつけられているようで実は苦しかった」
率直に話したのは、北海道内でアイヌ生活相談員を担うアイヌ民族の男性だ。
札幌のシンボルとして愛され札幌市時計台。北海道の開拓が進む1881(明治14)年に設置された=資料写真
2020年度から自治体における臨時・非常勤職員の任用要件を厳格化した「会計年度任用職員制度」が始まり、少し支給されるようになったというが、「年に1度ある道内の生活相談員の研修会では、自家用車で相談に回ったりガソリン代は自腹など、地域差はあるようだ」と続ける。
別の地域の生活相談員も「子どもの就学資金や貸付制度などシビアな相談も多い。精神的負担の大きい仕事だったりする」と待遇充実を求める。
◆「ウポポイ」でも非正規職員の多くは
アイヌ生活相談員は、アイヌ民族の困り事に耳を傾ける制度。40年以上前からあり、和人(アイヌ民族ではない日本人)だと差別につながる恐れがあるため、多くはアイヌ民族が担ってきた。現在は30人。多くは非正規で、不安定な雇用形態が問題になってきた。
北海道白老町に整備された民族共生象徴空間「ウポポイ」の職員も非正規職員が目立つ。アイヌ民族文化財団によると、160人余の職員のうち非正規は41人で非正規率は25%。多くのアイヌ民族が働いている。
非正規公務員の問題は、今月18日の衆院内閣委員会でも取り上げられた。上村英明衆院議員が「雇用の確保や生活の安定は、アイヌ施策...
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