先住民族関連ニュース

先住民族関連のニュース

まなぶん連載「ミンタラ」 ニュース豊富な3冊目 多様性にポイント

2025-01-11 | アイヌ民族関連

米山貴志 会員限定記事

北海道新聞2025年1月11日 4:00

 第2、第4土曜日に本紙に折り込まれる「道新こども新聞 週刊まなぶん」で月1回連載され、イラストと共にアイヌ文化を紹介するコーナー「ミンタラ」をまとめた本の3冊目「アイヌ民族33のニュース」が、北海道新聞社から刊行された。ニュースを素材に夫婦別姓やLGBTQ+(プラス)、マイノリティーなど多様性について、アイヌ民族の視点や文化、歴史から学ぶことができる。

 時事、文化、一般、歴史の4章で構成。アイヌ民族で北大アイヌ・先住民研究センター教授の北原モコットゥナシさん、京都在住の編集者、瀧口夕美さんが文章を、日高管内平取町在住のイラストレーター小笠原小夜さんが絵を担当した。

 北原さんと瀧口さんによる対談や、アイヌ料理13品のレシピ集も掲載。北原さんは「思いがけないところに先住民が関わっていることを知ってもらいたい」と話している。

・・・・・・

 ※「ミンタラ」の「ラ」と「モコットゥナシ」の「シ」は小さい字

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1109799/


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ハンガリーの口琴バンドが公演 15日、白老・ウポポイで

2025-01-11 | 先住民族関連

 

斎藤雅史 有料記事

2025年1月10日 21:46(1月10日 21:58更新)

「ZOORD(ゾールド)」特別公演のポスター

 【白老】ハンガリーに伝わる金属製の口琴「ドロンブ」を演奏するバンド「ZOORD(ゾールド)」による特別公演が15日午後1時からアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」の体験交流ホールで開かれる。

 ゾールドは世界的な口琴奏者のシラージ・アーロンさんを中心に結成された、バイオリンと太鼓の3人組バンド。公演は約40分を予定している。ゾールドが8曲ほど演奏するほか、ウポポイの職員がアイヌ民族の口琴「ムックリ」を披露する。

・・・・・・ウポポイの入場料が必要。問い合わせはウポポイ、電話0144・82・3914へ。

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1109865/


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ゴールデンカムイ』から見る、アイヌ民族の衣服文化の世界

2025-01-11 | アイヌ民族関連

 

ファッションテックニュース 1/10(金) 8:10配信

北海道に隠された金塊をめぐる冒険漫画『ゴールデンカムイ』。

作中には、“不死身の杉元”と称された元兵士・杉元佐一と、アイヌ民族の少女・アシㇼパをはじめ、多くのキャラクターが登場する。アシㇼパたちアイヌ民族が身にまとう衣装は、実際に着用されていた伝統的な装いを再現しており、その代表的なものが「アットゥㇱ」である。

樹皮から作られた服として知られるアットゥㇱとは、どんな服なのだろうか。

この伝統的な衣服に込められた知恵と技術、そしてアイヌ民族の豊かな衣服文化について、国立民族学博物館人類文明誌研究部の齋藤 玲子さんにお話を伺った。

(※本記事は漫画『ゴールデンカムイ』のネタバレを一部含みます)

樹皮を採って、アットゥㇱができるまで

ーはじめに、アットゥㇱとはどんな服なのでしょうか?

アットゥㇱ(国立民族学博物館所蔵)

アットゥㇱは、オヒョウ(ニレ科)の樹皮を素材として作られるアイヌ民族の伝統的な衣服です。木綿の生地が手に入る前から着用されていた、基本的な衣服といえます。

その名称は、アイヌ語で「アッ(オヒョウの樹皮)」「ルㇱ(毛皮)」が語源と考えられていて、「オヒョウ樹皮で作った毛皮(のようなもの)」という意味だろうと思います。

ー作中では、アットゥㇱは「オヒョウの木の皮を下からはがして作る」と説明されています。実際はどうやって作っていたのでしょうか?

私も一度だけ採取のお手伝いをしたことがありますが、実際も漫画のようにオヒョウの皮を下から剥いでいきます。

その後に外側の硬い皮を取り除き内皮だけにして、昔は集落の近くの川や湖、温泉に浸けていました。

樹皮は何層にもなっているので、水に漬けてやわらかくした後、薄く剥いでいき、それを割いて糸にしていました。

ー非常に手間がかかる作業に思えますが、樹皮を採ってから服ができるまで、どれくらいかかるのでしょうか?

織物だけに専念したとしても少なくとも2~3ヶ月はかかったはずです。

アットゥㇱを1着作るには、仮に計算してみると、3~4kmの長さの糸が必要ということになります。重さでいうと、1~1.2kgくらいです。

初夏にオヒョウの皮を採り、日々の作業の合間に糸を作ることを繰り返していたと思います。

「アイヌの女性は常に糸をよっていた」という話もよく聞き、また幼い頃から糸を作る手伝いをしていたともいいます。

作中で、大きくなっても山に行くばかりでまだ裁縫ができないアシㇼパさんが、祖母であるフチに心配されているのも、そうした背景があるからと思われます。

ー現代人から見ると、毛皮などで服を作る方が手軽で暖かいように感じます。アイヌがアットゥㇱを好んだ理由は何でしょうか?

北海道から樺太のアイヌ民族は、世界的に見ると「毛皮ではなく、衣服として織物を作る地域」の最北端に位置しています。

これより北の地域では、伝統的な衣服は毛皮や革で作られてきました。しかし北海道は気候的に毛皮では暑すぎる、まさに境界線上の地域なのです。

あとは、糸の素材となるオヒョウの木が身近にあったことも理由の一つかもしれません。

オヒョウは本州などにも見られますが、北海道には特に多く生えている木なんです。いまでも全道的に見ることができます。

アシㇼパの服の文様は樺太アイヌのもの

アシㇼパは子どもですが、実際のアイヌの子どももアットゥㇱを着ていたのでしょうか?

江戸時代の絵を見ると、幼い子どもが裸で過ごす様子が多く描かれています。ただ、もちろん寒いときはアットゥㇱなどを着ていたと思います。

その場合は、大人の古着を小さくしたり、あまった布を仕立てたりして、子どもむけに作り変えていたのではないでしょうか。

ー冬の寒さが厳しい北海道ですが、アットゥㇱは寒くないのでしょうか?

アットゥㇱは、繊維の間に空気を含むので暖かかったようです。

大正生まれの方で「オヒョウ樹皮の靴下は冬でも暖かかった」と語る方にもお会いしたことがあります。

ほかに「アットゥㇱの内側に毛皮を付けて暖かくする」という工夫もあったようですね。

ーアシㇼパの金塊探しの旅は2年ほどでした。その間、アシㇼパはずっと同じ服を着ていますが、実際にアットゥㇱはどれくらい持つのでしょうか?

アットゥㇱを2年間にわたって毎日着用し続けることは、実際にはありえないと考えます。

アットゥㇱは非常に耐久性の高い衣服として知られていますが、肘や袖口、お尻のあたりなどは日常的な使用で摩耗しやすい箇所でした。

補修を重ねながら丁寧に着用することで、長期の使用も可能であったと推測されます。

ーアシㇼパは自分の服をアットゥㇱだと思っていますが、正確には「テタラペ」という樺太アイヌの服だったことが物語の後半でわかります。

アシㇼパの服の文様は、北海道アイヌではなく樺太アイヌのものに似ています。

樺太のテタラペは、北海道のアットゥㇱより文様が複雑で、刺繍の曲線や糸の色なども違うことが多いです。

ー柄のほかに、テタラペとアットゥㇱに違いはありますか?

テタラペは、イラクサという草から作られます。細い繊維がとれるのでアットゥㇱよりやわらかく、雪にさらすことできれいな白色になります。

アットゥㇱの方が丈夫ですが、テタラペの方が着心地がいいと思いますよ。

博物館ではさまざまな衣服を見ることができる

ー『ゴールデンカムイ』では、アシㇼパ以外にもたくさんのアイヌ民族が登場します。そのうちのひとりであるキロランケが着ているのが「カパラミㇷ゚」ですが、これはどういう服なのでしょうか?

(北海道の中央南部に位置する)日高地方などでカパラミㇷ゚と呼ばれるのは、木綿地の上に、白くて大きな布を切り抜いてアップリケのように縫い付けて、文様とした服です。

アイヌの衣服のなかでは比較的新しく、まさに作品の舞台になっている明治末に出てきた服ですね。地域による違いはありますが、日高地方をはじめ、現在は儀式や舞踊などのときに、このカパラミㇷ゚を着る人は多いです。

ー続いては、インカㇻマッという占いをする女性。彼女は、アシㇼパの父からもらった「チンチリ」という服を着ています。

インカㇻマッの服は、(作品の設定に合わせて)樺太アイヌの文様が描かれていますね。

北海道の太平洋側などでチンチリ、チヂリと呼ばれてきたものです。古くからある服と考えられ、刺繍だけで文様をつけています。

刺繍する面積が大きいので、現代の作り手はチヂリが一番大変だと言います。

ーインカㇻマッを含め、作中に登場するアイヌの服を見ていると男女で大きな差がないように感じます。

その通りで、アイヌの服には男女の差がありません。

個人の好みやサイズの違いはあったでしょうが、「男性はズボン、女性はスカート」といった性別による様式や文様の違いは顕著ではありませんでした。

ー作中には、メインキャラクターの服以外にも先住民族の服が多く登場します。その中から、特に気になったものを選んだので、解説してもらえますか。

ルウンペ(背面) (国立民族学博物館所蔵)

漫画の4巻カバー下に登場する「ルウンペ」は、(北海道南西部にあたる)胆振地方で「ル(道)ウン(ある、持つ)ペ(もの)」と呼ばれる衣服です。テープ状に裁断した布を、伸ばしたり折り曲げたりしながら着物に縫い付け、その上から刺繍を施して制作します。

4巻カバー下に描写されているのは、釧路市立博物館が所蔵する、貴重な衣服をモデルにしたものと思います。酷似した衣服がロシアに2点存在しており、同一人物の手によるのではと推測されるほどです。

これらは現存するアイヌの衣服の中では最古級とされ、ロシアの博物館にある2点の収蔵時期は18世紀です。

5巻カバー下イラストに登場している「チェㇷ゚ウㇽ」は、サケやマスなどの皮で作った服です。

現在まで残っているのは樺太アイヌのもので、数は少ないですが、国立民族学博物館などに収蔵されています。

チェㇷ゚ウㇽ(国立民族学博物館所蔵)

7巻カバー下イラストに登場する「ウㇽ」はアザラシの毛皮で作られた服です。チェㇷ゚ウㇽよりも現存するものが少なく、国内では早稲田大学 會津八一記念博物館に所蔵されています。

7巻カバー下イラストに登場する「ウㇽ」はアザラシの毛皮で作られた服です。チェㇷ゚ウㇽよりも現存するものが少なく、国内では早稲田大学 會津八一記念博物館に所蔵されています。

ウㇽ(早稲田大学會津八一記念博物館所蔵[協力/公益財団法人アイヌ民族文化財団])

また、10巻カバー下イラストの「チカㇷ゚ウㇽ」は、羽根が付いたままの海鳥の皮を何十枚も縫い合わせて作られたもので、千島アイヌが着用していました。

チカㇷ゚ウㇽ(複製)(国立民族学博物館所蔵)

現存する実物は極めて少なく、その希少性から一般公開される機会は限られています。実物は徳島県立鳥居龍蔵記念博物館と、北海道大学植物園内の北方民族資料室に収蔵されています。後者では複製品を見ることができます。

17巻カバー下イラストの「ポクト」は、サハリン(樺太)の先住民族ウイルタの伝統的な衣服です。写真は戦前の樺太で収集されたものです。終戦後、ウイルタやニヴフの人々の一部は北海道へ移住し、網走市にも居住していました。

ポクト(国立民族学博物館所蔵)

17巻カバー下イラストの「ポクト」は、サハリン(樺太)の先住民族ウイルタの伝統的な衣服です。写真は戦前の樺太で収集されたものです。終戦後、ウイルタやニヴフの人々の一部は北海道へ移住し、網走市にも居住していました。

2007年にウイルタ民族の北川アイ子さんが逝去され、以

2007年にウイルタ民族の北川アイ子さんが逝去され、以降、日本ではウイルタのアイデンティティを表明している方はいないと思います。

ーアイヌ民族の衣服文化の継承という観点から、アットゥㇱをはじめとする伝統的な衣装の今後についてお聞かせいただけますでしょうか。

アイヌ民族の伝統的な衣服は、明治以降の同化政策などにより、ほとんど制作されない時期がありました。

1980年頃から、文化復興に伴い、儀式や舞踊などのための晴れ着が作られるようになりました。それらをアレンジしたバッグや壁掛けなどの小物が、工芸品として販売されています。

アットゥㇱについては、平取町の二風谷アットゥㇱと二風谷イタ(木盆)が2013年に経済産業省の「伝統的工芸品」として、北海道で初めて指定されました。

この指定により、国有林や道有林からオヒョウ樹皮の安定的な確保が図られるようになりました。現在ではアットゥㇱの制作講座が開催されるなど、二風谷を中心として、他地域へも伝統技術の継承が広がりつつあります。

このように、アイヌ民族の伝統的な衣服文化は、新たな時代の中で着実に受け継がれ、その価値が再認識されています。この貴重な文化遺産を守り、次世代へと伝えていくために、博物館や研究者に何ができるかこれからも考え続けていきます。

https://news.yahoo.co.jp/articles/109a1a27a7a003333f496e33e6541ce6b47831d2?page=1


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

山岳民族に残る「嫁さらい」の実情を追う 『霧の中の子どもたち』と日本の非婚化

2025-01-11 | 先住民族関連

 

日刊サイゾー 2025/01/10

<配信ドキュメンタリーで巡る裏アジアツアー> 第一回

アジアには世界人口の約60%が住み、GDPの地域別シェアは1980年から約4倍になるなどの爆発的な経済発展を遂げてきた。だが、社会の変化に伴い、所得格差や貧困問題、少子高齢化、非婚化、自殺率の高さなど多くの問題が顕在化してきている。映像配信サイト「アジアンドキュメンタリーズ」の代表・伴野智氏に、いま注目すべきアジアのドキュメンタリー作品をピックアップしてもらおう。

テレビや新聞では報道されないアジアの実情を描くドキュメンタリー作品を紹介する本連載。記念すべき第1回目で取り上げるのは、ベトナムの山岳地帯で暮らす少数民族・モン族に今も残る風習「嫁さらい」、いわゆる誘拐婚の実情を描いた衝撃作『霧の中の子どもたち』(製作国/ベトナム)だ。日本には「いい夫婦の日」という記念日(11月22日)があるが、結婚の在り方について考えさせる内容でもある。

今なお「嫁さらい」が風習として根付いているのは、北ベトナムの山間部で暮らすモン族の社会だ。モン族と聞いてもピンとこない人が大半だろうが、クリント・イーストウッドが主演&監督した『グラン・トリノ』(2008年)に出てきたアジア系少数民族と言えば、「あぁ、一族の結束が固い、あの難民一家のことか」と思い出す人もいるのではないだろうか。ベトナム戦争時に米軍に協力したため、米軍撤退後は難民として米国へ渡ったモン族も少なくなかった。

ベトナムに残ったモン族は、深い霧が漂う山奥に暮らし、狭い田畑を耕し、家畜の世話をしながら、昔ながらの質素な生活を送っている。一見すると穏やかそうに映る山の暮らしだが、「春節」が近づくと少女たちはソワソワし始める。嫁さらいの季節でもあるからだ。

嫁さらいに遭った少女を3年間にわたって取材

本作の主人公は、学校に通いながら家事を手伝うジー。あどけない表情が残る少女だが、最近はスマホを使ってのSNSのチェックに余念がない。「嫁さらい」と言っても、一方的に男性が女性を連れ去るわけではなく、事前にSNSなどでやり取りがあることが多いようだ。本作の監督ハー・レ・ジエムもベトナムの少数民族出身の女性で、取材当初は12歳だったジーが14歳となり、実際に嫁さらいに遭い、その決着がつくまでの3年間を丹念に追っている。

スマホが浸透したことで、伝統的な社会はその在り方を否応なしに更新されることに。14歳になり、急に大人びた化粧をするようになったジーをロックオンしたのは、同世代の少年・ヴァンだった。SNSでメッセージを交換した後、ヴァンはジーを自宅へと連れていく。

だが、さらわれたジーは結婚に同意しない。ジーは学校で勉強を続けたいし、「嫁さらい」で母をさらった父は酒ばかり飲んで、母だけを働かせているという結婚の現実を知っている。自分も同じような将来を辿りたいとは思わない。頑ななジーの抵抗に遭い、この嫁さらい婚は暗礁に乗り上げてしまう。基本的に嫁さらいには親は介入できないのだが、双方の家族、親族、学校も巻き込んだ騒動になっていく。

山岳民族独自の環境から生まれた風習

――嫁さらい婚の実情に迫った本作は、ベトナムで大きな反響を呼び、各国の国際映画祭にも出品され、アムステルダム国際映画祭最優秀監督賞など多くの賞を受賞している。アジアのドキュメンタリー作品に精通している伴野氏に、『霧の中の子どもたち』の面白さをより詳しくレクチャーしてもらおう。

伴野 モン族は東南アジア一帯で暮らす少数民族で、中国ではミャオ族と呼ばれています。アジアンドキュメンタリーズでは『ミャオ族の聖歌隊』(https://asiandocs.co.jp/contents/272)も配信しており、こちらもぜひ観て欲しい作品です。

僕が『霧の中の子どもたち』の中で面白く感じたことのひとつが、山奥での昔ながらの社会にもスマホがすでに浸透し、SNSなどが普通に使われているところです。伝統的な風習が残る暮らしと、スマホによるネット文化が並行して存在している。それまでの伝統的な生活は、新しい文化が入ってくることで崩壊が始まっているわけです。その様子が克明に描かれています」

「嫁さらい」婚というパワーワードもあり、『霧の中の子どもたち』はアジアンドキュメンタリーズの配信作品の中でも注目度が高いという。

伴野 嫁さらいという言葉には暴力的な響きがありますが、環境に応じ、工夫されて生まれてきた風習でもあると思うんです。ただし、それは圧倒的に女性の犠牲の上に成り立ってきた。

作品を観ると、モン族の人たちは代々質素な暮らしを続けていることが分かります。嫁さらい婚なら、男性側はお金がなくても、イケメンでなくても、行動力さえあれば嫁を手にいれることができた。

そうやってモン族は子孫を残してきた。ジーの母親も祖母も、さらわれて結婚しています。しかし、若いジーの世代になると、スマホを通じて外の社会とも繋がり、また教育の充実もあり、嫁さらいは女性の人権を侵害していることが表面化してくる。

本作では描かれていませんが、ジエム監督がジーたちを取材している間、村では同じようにさらわれた女の子がレイプされたり、殺されてしまったという事件も起きています。僕らが想像するより恐ろしい現実があるわけです。

一方で、嫁さらいの風習を否定することは、山奥で暮らすモン族社会そのものが消滅してしまう可能性をも示唆します。これまで女性の犠牲の上に成り立ってきた社会が成り立たなくなるからです。

モン族と日本社会との意外な共通点

――日本では、親が決めた相手と「見合い」して結婚するケースが昭和時代までは多かった。また、かつては「夜這い」という風習が全国各地で行われていた。現代は交際相手をネット上で探す「マッチングアプリ」が人気を呼んでいる。ネット文化がそれまでの結婚の在り方を大きく変えたという点においては、山奥で暮らすモン族も日本人も似たような状況ではないかと伴野氏は指摘する。

伴野 マッチングアプリは手軽さから多くの人が利用するようになりましたが、逆にそのせいで結婚できない人も増えているように思います。マッチングアプリでは、経済状況や容姿などが問われ、そうした条件に恵まれた人でないと選ばれません。

条件を満たした人でも、『もっといい相手が見つかるかもしれない』と考え、結婚に踏み切れずにいる人もいるんじゃないでしょうか。本作は山岳民族の内情を追ったドキュメンタリーですが、まったく別世界の出来事ではなく、日本での結婚の在り方についても考えさせる内容だと思います。

――東南アジアには「児童婚」の問題もある。貧困層ほど早く結婚し、出産も早いため、学校に通うことができず、負の連鎖が次の世代にも受け継がれることになってしまう。とりわけモン族の児童婚率は高く、2人に1人は未成年で結婚しているという。児童婚には女性から就学や就職のチャンスを奪ってしまう側面もある。

伴野 最後まで嫁さらい婚を受け入れなかったジーのようなケースは、モン族ではまだまだ珍しいと思います。他の社会を知らない彼らにとっては進学や就職を優先するのか、それとも民族の存続を重視するのか、簡単には決められない問題でしょうね。

モン族のひとりの少女が、「嫁さらい」という風習を経験し、大人へと成長していく姿を鮮やかに映し出す『霧の中の子どもたち』。スマホやSNSといった最新のツールによって、ベトナムの少数民族、そして非婚化・晩婚化が進む日本も含め、アジア全体の結婚観や家族制度が揺れ動いている時代なのかもしれない。

(取材・文=長野辰次)

『霧の中の子どもたち』はアジアンドキュメンタリーズで配信中

『霧の中の子どもたち』(https://asiandocs.co.jp/contents/1440?fcid=1
製作国/ベトナム 監督/ハー・レ・ジエム 編集/スワン・ドゥビュス/2021年製作/作品時間92分

「アジアンドキュメンタリーズ」
https://asiandocs.co.jp/

https://nordot.app/1250395765592965203?c=110564226228225532


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

熱帯雨林を本来の守り手たちに返還する──特集「THE WORLD IN 2025」

2025-01-11 | 先住民族関連

 

WIRED 2025.01.10

アマゾン熱帯雨林から追い出された先住民族はついに故郷を取り戻す法的な力を得た。これは正義の回復にとどまらない。先住民たちの手に委ねることで、森林は生命力を取り戻すことができるだろう。

世界中のビジョナリーや起業家、ビッグシンカーがキーワードを掲げ、2025年の最重要パラダイムを読み解く恒例の総力特集「THE WIRED WORLD IN 2025」。アマゾンに暮らす先住民族の権利保護や熱帯雨林の保護に取り組むネモンテ・ネンキモとミッチ・アンダーソンは、先住民の知恵によって森は再生するのだと確信する。

2025年、自らを「多彩な民」と称する先住民族が、80年の時を経て故郷の地に帰還する。この出来事は、アマゾン熱帯雨林全域で祖先伝来の土地の法的権利を求めて闘う先住民族たちの活動を勇気づけ、勝利への道を開くことになるだろう。そしてその勝利は、地球規模で重要な意味をもつことになる。

シエコパイ(セコヤ)族は何世紀にもわたって、アマゾン西部、現在のエクアドルとペルーの国境付近で暮らしてきた。16世紀ごろには、独自の品種のトウモロコシを育て、ポルトガルからの侵略者を撃退し、その進軍を阻止するほどの軍事力をもつ強大な文明を築いていたのだ。しかしその後、疫病により人口が激減し、天然ゴムを求めて進出してきた略奪者たちによって奴隷化され、イエズス会の宣教地への移住を強制される。約80年前、エクアドルとペルー間の戦争により、生き残っていたシエコパイ族は居住地を追われることとなった。戦争終結後の1979年、領土争いの末に、シエコパイ族の故郷を貫くかたちで新たな国境が設定された。現在、シエコパイ族の生存者は1,950人を数え、そのうち750人がエクアドル、1,200人がペルー領内に住んでいる。

エクアドルでは、先住民族は国の環境省と地主・借地人契約を結んでいる。そして、先住民族の熱帯雨林のおよそ20,000km2の土地が、「保護区」として環境省の管理下にある。つまり、ヤスニ国立公園における採掘権を付与する権限、あるいは借地人契約の内容を変更する力などを有しているのは政府なのだ。実際、クヤベノ野生動物保護区を設定したとき、政府は先住民族に対して狩猟、漁業、開拓を禁止した。実質上シエコパイ族は、自らの土地で暮らしているにもかかわらず、不法侵入者になってしまったのだ。

ペルーでは、土壌のタイプに応じたさまざまな目的のために、政府が先住民族に土地を貸与している。シエコパイ族の所有と認められているのは、先住民族の土地のわずか20%だけで、残りの80%は国有林に指定され、国家が「貸し出している」状態なのだ。

しかし近年、シエコパイ族はこうした土地所有権法の正当性に異議を申し立て、エクアドルとペルーの両国で重要な法的勝利を手にし、先祖伝来の土地に対する所有権を認めさせることに成功した。21年、シエコパイ族はペルーにおいて2,000km2を超える土地の所有権を獲得。22年9月には、国境沿いの先祖伝来の地ペケヤの所有権回復を求めてエクアドル政府を提訴した。23年11月、エクアドルの上訴裁判所はシエコパイ族の主張を認める判決を下した。網の目のように水路が走る森林地帯と、先祖伝来の土地の中心部に位置するブラックウォーター・ラグーンの所有権をシエコパイ族に付与したのだ。これは、保護区内に伝来の土地をもつ先住民族に対して、政府が初めて土地所有権を認めた画期的な出来事となった。

25年、「Amazon Frontlines」ならびに「Ceibo Alliance」──アマゾン熱帯雨林の水源保全と同地先住民族の自治権を求めて手を結んだ支援組織──と協力しながら、シエコパイ族は土地の所有権の拡大を求め、エクアドルの国立公園内にある20,000km2ほどの熱帯雨林を恒久的に保護するための道筋を確立するつもりだ。ペルーのシエコパイ族は、法的および政治的障壁を取り除き、アマゾン内の推定16万km2ほどの先祖伝来の土地の所有権を主張する計画を立てている。そうした画期的な勝利が得られれば、法的な前例となり、アマゾンに散らばっている何百万ものほかの先住民も、先祖の土地に帰還する希望がもてるようになるだろう。

先住民の知恵で森は再生する

恒久的な土地所有権は、先住民族の命と文化の継承にとって不可欠だが、それだけではない。熱帯雨林を守る人類の集団的能力にとっても、極めて重要だ。アマゾン熱帯雨林はティッピングポイントに近づいており、それを過ぎるともう二度と回復できないと考えられている。1985年から2022年まで、人類はアマゾンの11%を伐採もしくは焼き払ってきた。これは、フランスとウルグアイを足した面積よりも広い。このペースで森林が破壊され続ければ、熱帯雨林そのものの存続が危ぶまれるだろう。2050年までに、全領域がサバンナ化の道をたどり、もう元に戻すことができなくなると考えられる。アマゾンが破壊されれば、それと同時に300を超える民族も失われることになる。つまり、これは大規模な生態系破壊であるとともに、民族虐殺でもあるのだ。

だが、先祖伝来の熱帯雨林を先住民族の手に委ねることで、この流れから逆戻りできるかもしれない。例えば、国連が最近行なった研究では、先住民族が自ら土地を管理することで、政府が土地を管理した場合よりも2倍以上効果的に森林破壊が防止できることが明らかになった。そこには自然保護区や国立公園も含まれる。先住民族が自治し、土地をコントロールする場所で、森林は息を吹き返す。つまり、先住民族の文明維持の闘いは、世界規模の森林破壊と気候破壊に抵抗する闘いでもあるのだ。

2025年、シエコパイ族はついに故郷の地に帰還し、独自の文化とアマゾンの水源を守る役目を担うことになる。その結果、数百万の樹木が二酸化炭素を吸収し、降雨をもたらし続けることになるだろう。シエコパイ族の活動を通じて、気候危機への解決策が先住民族コミュニティにあることが世界に示されるはずだ。

かたちだけの保護区指定や、排出権取引、官僚的な土地分類制度では、もはや問題は解決できない。皮肉にも、二酸化炭素の削減という点で、故郷の森を守ろうとする先住民族コミュニティは、最新技術を駆使する行政官たちよりも優れた成果を上げている。

先住民族は森に蓄えられた炭素を守る術を知っている。大地の石油も、山中の金も、掘り出そうとはしない。この土地を永続的に守る資格をもつのは先住民族にほかならない。それは先住民族自身のためであると同時に、わたしたち人類すべての未来のためでもある。

ネモンテ・ネンキモ | NEMONTE NENQUIMO
アマゾン先住民族であるワオラニ族の伝統的領地、エクアドル・パスタサ地域を拠点に活動。ワオラニ族の女性リーダーとして、石油開発に対する先住民の権利を守る闘いを率いてきた。先住民族による非営利団体「Ceibo Alliance」の共同設立者。

ミッチ・アンダーソン | MITCH ANDERSON
アマゾンの先住民族の権利と熱帯雨林の保護に取り組む国際NGO「Amazon Frontlines」の創設者兼エグゼクティブ・ディレクター。先住民族の権利擁護活動に従事する。

(Originally published in the January/February 2025 issue of WIRED UK magazine, translated by Kei Hasegawa/LIBER, edited by Mamiko Nakano)

Related Articles

プラスチック汚染の解決へ、国際条約を締結できるか──特集「THE WORLD IN 2025」

国際プラスチック条約は、使い捨てプラスチックの生産に終止符を打つ、その始まりになる可能性を秘めている。ただし、この汚染物質をめぐる闘いに勝利できるかどうかは、依然として不透明だ。

AIの環境負荷が気候変動対策の足かせとなる──特集「THE WORLD IN 2025」

データセンターはすでに世界の電力の2%を消費し、冷却には大量の淡水を必要とする。生成AIの貪欲な資源消費は、現実の環境に多大なコストをもたらしているのだ。

子どもを大気汚染から守るため、ついに親たちが立ち上がる──特集「THE WORLD IN 2025」

大気中の粒子状物質が、子どもたちの発達に重大な影響を及ぼしている。健康を維持できる空気の質を担保するため、いまこそ化石燃料に依存しない持続可能な社会の実現へと動き出すべきだ。

雑誌『WIRED』日本版 VOL.55
「THE WIRED WORLD IN 2025」発売中!

『WIRED』の「THE WIRED WORLD IN 20XX」シリーズは、未来の可能性を拡張するアイデアやイノベーションのエッセンスが凝縮された毎年恒例の大好評企画だ。ユヴァル・ノア・ハラリやオードリー・タン、安野貴博、九段理江をはじめとする40名以上のビジョナリーが、テクノロジーやビジネス、カルチャーなど全10分野において、2025年を見通す最重要キーワードを掲げている。本特集は、未来を実装する者たちにとって必携の手引きとなるだろう。 詳細はこちら

https://wired.jp/article/vol55-returning-fragile-lands-to-their-true-caretakers/


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

トランプ大統領、グリーンランド購入を主張するも断固「ノー」

2025-01-11 | 先住民族関連

 

ドライビングエコ  8 1月2025   

アルベルト・ノリエガ   

トランプ大統領はグリーンランド購入への関心を改めて表明したが、グリーンランドとデンマークの指導者らはグリーンランドの主権と戦略的関連性を強調してこれを拒否した。

ドナルド・トランプ氏のグリーンランド獲得への新たな関心は、デンマーク王国内でのグリーンランドの自治と自決権を強調するグリーンランド指導者らによってきっぱりと拒否されている。 グリーンランドのムテ・エゲデ首相は、この島は「売り物ではない」と再確認した。 米国の国家安全保障にとって北極の重要性についてのトランプ大統領の主張に直面して、気候変動が北極に対する戦略的関心を高める中、それは決して実現しないだろう。 グリーンランドは、外部からの圧力に直面して主権と国家アイデンティティを維持するために苦闘し続けている。

グリーンランドからの断固とした「ノー」

グリーンランドのムテ・エゲデ首相は明快かつ率直に次のように述べた。 「グリーンランドは私たちのものです。 「私たちは売り物ではありませんし、売り物になることは決してありません。」 このメッセージは、デンマークが外交政策や防衛などの分野を管理し続けているにもかかわらず、内政の大部分を掌握した2009年以来、その自治を誇りに思う国家の立場を反映している。グリーンランドの法的枠組みは、先住民族の権利に関する国連宣言によって支持されており、 彼らの自己決定権を強化し、いかなる販売も事実上不可能にします。

ケン・ハウリーを駐デンマーク米国大使に任命する際にこの提案を提示したトランプの主張にもかかわらず、 グリーンランドだけでなくデンマークの指導者からも抵抗があった。 両者は、島の主権と国民のアイデンティティが経済取引や地政学的利益の影響を受けないことに同意している。

グリーンランドにおける米国の歴史的関心

トランプ大統領がグリーンランドに新たな関心を示したのは今に始まったことではない。 米国は19世紀以来、その戦略的価値を強調してこの島を購入しようとしてきた。 1867年、アラスカを獲得した後、ウィリアム・スワード国務長官は、新たな領土拡張にグリーンランドとアイスランドを含めることを提案した。 1946年後半、ハリー・トルーマン政権はデンマークに100億ドルの金を提供し、冷戦中のアメリカの安全保障にとってグリーンランドの重要性を強調した。

気候変動はこの地政学的な関心をさらに強めています。 北極の融解により、グリーンランドは新たな貿易ルートや、現代技術に不可欠な鉱物などの天然資源へのアクセスにとって重要な位置にある。しかし、主権を守るというグリーンランドの歴史的な姿勢は、米国の購入計画を常に挫折させてきた。

北極の戦略的重要性

グリーンランドは北極地域の重要な位置を占めており、世界の大国にとって戦略的な関心の的となっている。 トランプ大統領は、米国の国家安全保障にとってその役割が「絶対に必要」であるとして、この島への関心を正当化した。 米国政府の観点からすれば、グリーンランドは軍事監視、ミサイル監視、そして北極におけるロシアと中国の活動の追跡にとって不可欠である。

戦略的な立地に加えて、 グリーンランドの広大な鉱床は、経済的に大きな魅力を与えています。 この島には、電子機器やクリーンエネルギーシステムの製造に不可欠なレアアース元素が豊富に含まれています。気候変動により新たな航路が開拓されると、グリーンランドは重要な物流拠点に変貌し、世界貿易における重要性が高まる可能性がある。

主権と地政学: 利害の衝突

主権をめぐる戦いは、グリーンランドの抵抗運動の中心テーマである。 人口の大部分を占めるイヌイットの人々は、自主性を確保し、外圧から文化を守るために数十年にわたって努力してきました。 彼らのアイデンティティを維持するこの努力は、彼らの自己決定を保護する国際法によって強化されています。

さらに、 北極における地政学的競争の激化により、米国、中国、ロシアなどの関係者の関心が高まっています。 グリーンランドは貿易同盟と国際協力を追求する中で、これらの関係が自国の主権を損なうことがないことを明確にしている。同国の指導部は、この島は営業を行っているが、領土や資源の管理を放棄するつもりはないと強調している。

変化する北極のジレンマ

グリーンランドの事例は、国益と世界的な力関係の間の緊張を示しています。 北極の姿を変えつつある気候変動は、北極の人々と政府に特有の課題をもたらしています。 氷が溶けると、経済的チャンスが現れるだけでなく、環境的、政治的リスクも生じます。北極の守護者としてのグリーンランドの立場は、持続可能な開発と主権の維持のバランスを取る能力を試している。

同時に、 北極資源へのアクセスを求める大国からの圧力により、国際的な力関係が抑制されている。 この状況を踏まえると、グリーンランドは対外関係を慎重に管理し、独立性を損なうことなく経済的利益を最大化する必要がある。

世界的な例としてのグリーンランドの回復力

グリーンランドは、世界の主要国からの圧力に直面しても、主権には交渉の余地がないことを示した。 彼らの抵抗は、地政学的利益に直面して先住民族や小国の権利を守ることの重要性についての明確なメッセージを送っています。

天然資源と戦略的地位の争いがますます激しくなっている世界で、 グリーンランドは、回復力と自己決定の例として紹介されています。 この訴訟は、外部の利益よりも地域社会の権利と願望の尊重を優先する、国際関係における倫理的アプローチの必要性を浮き彫りにしています。

北極が21世紀の重要な舞台となる中、グリーンランドの指導力は、同様の課題に直面する他の国々の調子を決める可能性がある。この島は、国家としての強いアイデンティティーを持ち、その土地の将来は購入したり交渉したりすることができないことを示し続けています。

https://www.drivingeco.com/cosechas-record-pero-perdidas-dificil-panorama-economico-agricultores-ee-uu-2025/


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ニュージーランド公立小の"自由で刺激的"な日常 移民大国で根付く「ダイバーシティ教育」の実際

2025-01-11 | 先住民族関連

 

東洋経済2025/01/10 08:00

ニュージーランド公立小の"自由で刺激的"な日常

(東洋経済オンライン)

いま、子どもたちの教育現場では、暗記偏重の「勉強」が敬遠され、「主体的・対話的で深い学び」(アクティブ・ラーニング)にみられるような「学び」という言葉が積極的に取り入れられています。しかし、現代社会で使われる「学び」を大人たちはどこまで理解し、実践しているのか。勉強が役に立たないというのは本当なのかーー。

教育者であり、福岡で学習塾を経営する鳥羽和久さんの新著『「学び」がわからなくなったときに読む本』は、「学び」という言葉への疑わしさの感覚を出発点に、本来の「学び」を自らの手に取り戻すためにどのような取り組みが有効なのか、そのことを知るために、学びの現場にいる人たちに話を聞きにいった、その対話の記録です。

同書から一部を抜粋、編集し3回に分けてお届けします。

2回目となる今回は、芸術学者の平倉圭さんとの対談です。

前回記事『「暗記勉強は無意味」では全くないと断言できる訳』

ニュージーランド公教育の現場から

鳥羽:平倉さんに直接お目にかかりたくて、単身でニュージーランドまでやってきました。

平倉:はるばる来てくださってありがとうございます。正直、びっくりしました。

鳥羽:横浜の大学で芸術論を教えていた平倉さんですが、いまはサバティカルでウェリントンにいらっしゃると知って。いやー、遠いなぁと思ったのですが、やはり平倉さんとは面と向かってお会いしないと、というか、からだを向き合わせて喋らないと対談の意味が薄まってしまうような気がしたんです。これは、平倉さんのこれまでのお仕事に対する僕なりの1つの答えです。

今朝、平倉さんのお子さんたちが通ってる小学校を見学させていただきましたね。とても刺激を受けました。硬直化したカリキュラムではなく、自由度の高いフレキシブルな学習をしているのがすぐに感じられました。

さらに、自由でありながらも、子どもたちに伝えるべきことはちゃんと伝えるぞ、という先生たちの気概も同時に感じられました。実際にお子さんを通わせて、こちらの学校にどんな印象を抱きましたか?

平倉:子どもたちは地元の公立校に通っているのですが、とにかく自由でリラックスしています。教室では、床に座っても椅子に座ってもいい。靴を履いていても履かなくてもいい。先生たちもくつろいでいて、子どもにも保護者にも気さくです。決まった教科書はなく、子どもたちは先生が用意する課題や実践をきっかけに、各自のペースと興味関心に沿って探究を広げていく。その自由さがいいなと思いました。

子どもたちはこちらの学校を気に入っていて、日本に戻れるか心配なくらいです。先生は1つの教室に2、3人体制で、子どもたちと一緒に活動することもあれば、教室の隅にいて、必要なときだけサポートをすることもあります。

1クラス複数体制

鳥羽:先生たちはあくまでも補助なんですね。それにしても、1クラスに複数の先生が常駐しているのは贅沢です。

平倉:そうですね。子どもたちが通っている小学校は、少人数ということもあって2学年で1クラスになっています。さっき小学校を訪問した際に、鳥羽さんが校長先生に質問されましたよね。「自由に育てている分、リスクも生じると思うけど、自由とリスクのバランスはどうやって取っていますか?」と。それも「1クラス複数体制」につながる話でした。

鳥羽:それは、自由にはリスクが付きものだから、先生が1クラスに複数いることで安全が担保され、そのおかげで自由な空間が実現できている、という意味でしょうか。

平倉:ええ。規律で管理せずに子どもの自由にさせる──と言葉で言うのは簡単ですが、とりわけ低学年では、自由は思いがけない危険と隣り合わせになる。

鳥羽:このときに校長先生が「すべては予算の問題なんだ」と、はっきりおっしゃっていたのが印象的でした。

生きた環境に触れる授業

平倉:先生を複数つけられるのも、実験的な教室空間をつくれるのも、あくまで予算があってのこと。ちょうど、これから学校の教育方針を教育省に伝えて予算を取りに行くところだ、と話されてましたね。

鳥羽:ニュージーランドでは、校長の裁量が大きく認められているんですか。

平倉:そのようです。教育省が設定した目標を、各学校がそれぞれの仕方で解釈してカリキュラムを組む。同じ公立校でも、もっと整然と配置された机に向かって勉強するところもあり、学校ごとに異なる個性があります。それは各学校の伝統であると同時に、地域の特徴も反映している。地域の平均的な経済水準や、エスニシティー(民族)構成によって、学校の特色は変わってきます。私の子どもたちが通っている学校では、生徒の多様性と、カリキュラムの柔軟性・横断性に大きな特色があります。

鳥羽:具体的にはどんな授業が行われているんですか。

平倉:授業については、子どもたちの話を通して断片的に知るだけなのですが──印象的だったものにこんな授業がありました。

低学年の移民生徒向けの英語の授業で、ニュージーランド固有種の鳥についての本を読んでいたとき、先生が教室から中庭に出て、鳴き真似を始めたそうです。すると実際にその鳥が飛んできたんです! 子どもたちはそこで、言葉の勉強から、生き物の観察へと連続的に移行します。本に書かれていた言葉が、生きた世界のなかで命を得る。

さらに授業を重ねると、ニュージーランド固有の生態系とそれを生んだ地理、島にやってきた人と人が連れてきた哺乳類によって生態系が破壊されていること、先住民マオリにとっての鳥の重要性などへと学習が広がっていきます。生きた環境に触れながら、言語・生物・地理・歴史・文化など、特定の教科にとどまらない学びの場がつくられている。

高学年になると、ガーデニング(園芸)とビーキーピング(養蜂)が中心的なプロジェクトになります。学校に隣接した畑で野菜を育て、収穫して調理する。巣箱でミツバチを育ててハチミツを採り、ラベルをデザインして販売する。ここでも生きた環境のなかで、複数の教科にまたがる実践が行われています。

子どもたちは自分たちで試し、観察し仮説を立て、またDIY精神に富んだ地域の大人たちから技を学び、成長していく。どの場面でも、大人も子どもたちもリラックスしていて、とにかく楽しそうなんですよ。もう一つ大きな特徴を挙げるとすれば、学校の理念に「どうやってレイシズム(人種主義)を乗り越えるか」という視点が入っていることです。

鳥羽:それはすごいな。日本ではなかなか考えられないことですね。

平倉:ニュージーランドは移民大国なので、当然生徒にも移民ルーツの子が多い。私の子たちの通う小学校では、40カ国くらいの異なるルーツの子が集まっています。それぞれ異なる文化で育ち、いろんなバイアスを持っている。学校では、そのバイアスを頭ごなしに否定するんじゃなくて、互いのバイアスを持ち寄り比べてみようと。そういう機会がカリキュラムに組み込まれています。私たちも移民として来ているので、1年間だけですが、そういう環境で学べるのはラッキーですね。

問題は具体的な予算と人員

鳥羽:本当にいい経験になりますね。日本では多様性(ダイバーシティ)という言葉が実質をともなっていません。この言葉は、いまや中学公民の教科書にも太字で載っていますが、子どもたちだけでなく、教える側の大人さえも、その言葉の本体のようなものがわからないままに多用している。多様性というのは混沌とした収まりがつかないものなのに、それが単なるイマどきの言葉として消費されている。

それに比べて、この地でダイバーシティ教育が根付いていることは羨ましいし、子どもたちにとってはシンプルに刺激的だろうなと想像します。

平倉:先ほどの予算の話にもつながりますが、ダイバーシティの実現のためにも予算が必要です。多様性という言葉には、国籍や民族的ルーツだけでなく、個々人の心身のさまざまな特性も含まれます。

例えば、授業中にバーッと外に飛び出していってしまうような落ち着きのない子が、同じ空間で学ぶためにはどうすればいいか。そのためには専門のスタッフをつけるしかないわけで、そこにもお金がかかる。ダイバーシティの実現も絵空ごとじゃなくて、具体的な予算と人員の話になるんです。

鳥羽:なるほど。そういったリアリティがニュージーランドでは感じられます。実際にやるためにはまずは予算なのだ、というプラクティカルな話になるところが非常に頼もしいです。

なぜ入学式で「カパ・ハカ」を踊るのか

鳥羽:今日は公立の小学校だけでなく、公立の高校も見学しましたが、どちらの学校にも共通していたのが、先住民族マオリのカラーを前面に打ち出していることでした。

現代で伝統的な文化を扱うとなると、単にファッションとして消費されたり、すでに死んで標本化したものを死体のまま生きたように再現するような、ある種グロテスクな展示がなされたりしがちです。

ところが、ここではちゃんと土着のものとして向き合っているように感じられました。それらは守られるべきものというよりは、いきいきと生かされるべきものとして扱われているように感じられました。

平倉:マオリはまさに生きた文化です。また、それを生きたものとして「取り返す」ための実験が絶えず行われている。背景には、ニュージーランド──マオリ語では「アオテアロア(長く白い雲のたなびく地)」──において、ヨーロッパ系入植者たち(パケハ)がマオリから不当に土地を奪い、戦争で殺戮し、社会的・経済的な苦境下に抑圧してきた長い歴史があります。

1960年代まで、学校でマオリ語を話すと体罰を受けるような状況だったと近所の人から聞きました。マオリの文化は一度、強制的に潰されかけたんです。

1970年代から高まるマオリの復権運動のなかで、立ち返るポイントとなったのが1840年に締結された「ワイタンギ条約」でした。これは、イギリス女王とマオリの首長たちの間で結ばれた条約で、条約締結の際に英語からマオリ語に翻訳されていますが、英語で読むとマオリは「主権(sovereignty)」をイギリスに全面的に譲渡したことになっている。

ところが、マオリ語版ではイギリスは「監督」を行うだけで、土地を含むマオリのすべての「宝」についての権限は、マオリの首長が有すると謳われているんです。つまりマオリの首長たちがサインしたのは、マオリとパケハが共同で土地を管理するという条約だった。

この条約はその後、長く無視されていましたが、マオリの復権運動の展開と1975年に制定された「ワイタンギ条約法」を通して、マオリ語で書かれた条文の意義が再認識されたんです。

そこからこの国は、どうやったら先住民マオリと入植者の子孫による「共同統治」を実社会で実現できるかを模索し始めた。これは、アオテアロア/ニュージーランドという国家のかたちを構想し直す現在進行中の実験です。学校でマオリの文化が重視されているのも、このワイタンギ条約の理念に基づいています。

鳥羽:興味深い話です。では、先ほど学校で見たマオリカルチャーは、この国のあらゆる教育現場に浸透しているという認識でいいんですか。

平倉:現実には地域や学校によって大きく異なりますが、理想はそうです。マオリ語とニュージーランド手話は、英語とともにこの国の公用語になっていて、子どもたちはその2つの言語も楽しそうに学んでいます。

先日、小学校で入学式があったんですが、マオリの歓迎の儀式「ポーフィリ」に部分的に則して行われるイベントでした。儀式はマオリ語での挨拶のあと、マオリの先生が手に枝を持ち、呼びかけの言葉を唱えつつ波のように手招きして、新入生と保護者たちを建物へ導いていくところから始まります。招き入れられて、大きな建物のなかに入ると、全校生徒の迫力ある「カパ・ハカ」によって迎えられる。それを受けて新入生の保護者たちが母国語で感謝を伝えるんです。

マオリ文化を一種のファンダメンタル(土台)としつつも、多様なバックグラウンドの移民たちをそこに受け入れる。まさにこの国の理想の1つが示されていますね。しかもそれが堅苦しくなく、リラックスしたイベントとして行われているんです。

共存の仕方を模索している

鳥羽:真面目くさった感じで、「反省しています」という感じじゃないところがいいですね。

平倉:ええ。入植者によってマオリの土地が奪われ、命が奪われる悲劇的な過去があったことは片時も忘れることができない。でもそこで、反省と謝罪によって問題を一挙に過去のものとして済ませるのではなく、実際にいま同じ土地の上で、マオリとパケハという大きな2つの異なる文化が、あるいは他の移民たちの文化が、どうやって共存できるのかを実験しようとしている。それも歌ったり踊ったり、食べたり読んだり話したりする、生きたからだのあり方として。

私の生活拠点はウェリントンなので、国全体の話として一般化することはできませんが、この街にはそういう空気が満ちていますね。

平倉圭
専門は芸術学。横浜国立大学大学院都市イノベーション研究院Y-GSC准教授。1977年生まれ。著書に『かたちは思考する──芸術制作の分析』『ゴダール的方法』などがある。2023年4月から2024年3月までヴィクトリア大学ウェリントン(ニュージーランド)客員研究員。3児の父。

著者:鳥羽 和久

https://news.goo.ne.jp/article/toyokeizai/business/toyokeizai-845565.html?page=1


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

生物多様性条約(CBD)の第16回締約国会議(COP16)の成果のポイント

2025-01-11 | 先住民族関連

 

EICネット2025.01.10

一般財団法人自然環境研究センター 主任研究員 川口敏典

 2024年10月21日から11月1日にかけて生物多様性条約COP16がコロンビア・カリにて開催されました。会議時間を延長して最終日の翌朝まで夜通し議論されたものの、一部の締約国が帰国のために退出したことから定足数を満たせなくなり、会議は中断されました。しかし、中断までに多くの決定が採択されましたので、それらのポイント等を紹介します。

1.COP16の背景

 2022年の第15回締約国会議(COP15)で、愛知目標を含む戦略計画に代わる新たな国際枠組みとして昆明・モントリオール生物多様性枠組(KMGBF)が採択され、2050年のあるべき姿を示す4つのゴールとともに、そのゴールに向けて2030年までに達成すべきこととして23の行動目標(ターゲット)が設定されました。採択後、日本ではKMGBFに対応した生物多様性国家戦略2023-2030が2023年3月に閣議決定されています。
 COP15では、さらに、各ターゲットの進捗を確認するための指標を含むモニタリング枠組みや、締約各国によるKMGBFに即した計画や目標の策定と実施の状況を点検するための仕組み、KMGBF実施のための資源動員戦略、遺伝資源に関するデジタル配列情報(DSI)の利用から生まれる利益の配分のための多数国間メカニズムの設置などが決定されました。
 他方で、上述の様々な仕組みの詳細が決まっていないほか、時間的な制約で先送りとなった議題が多くあり、COP16では、こうしたKMGBFの実施に向けた課題やCOP15での未解決事項に対応すべく議論が行われました。

2.COP16の主要議題の成果

 COP16では、KMGBFの実施から技術的な内容のものまで、多岐にわたる31の議題が取り上げられました。特に重要な議題として扱われた事項(DSI、先住民族及び地域社会、資源動員、モニタリング枠組みを含む点検等のための仕組み)をはじめ、能力構築・科学技術協力や広報・教育・普及啓発(CEPA)、気候変動、侵略的外来種、健康、海洋と沿岸域の生物多様性、合成生物学、植物保全戦略、持続可能な野生生物管理等について議論されました。ここでは決定が採択された議題の主なポイントについて、議論の背景等を示しつつ、以下のとおり紹介します。

・議題9 遺伝資源に関するデジタル配列情報(DSI)
・議題14 条約第8条(j)項及び関連条項
・議題12 能力構築・開発と科学技術協力など
・議題25 生物多様性と気候変動
・議題21 侵略的外来種
・議題16 KMGBFの実施における科学技術的なニーズ
・議題20 海洋と沿岸域の生物多様性
・議題22 生物多様性と健康

出典:「昆明・モントリオール生物多様性枠組(暫定訳)」(https://www.env.go.jp/content/000097720.pdf)より抜粋。
「昆明・モントリオール生物多様性枠組の構造」の図は環境省作成図(https://www.biodic.go.jp/biodiversity/about/treaty/gbf/kmgbf.html)より

【議題9 遺伝資源に関するデジタル配列情報(DSI)】

 COP16では、COP15で設置が決定した多数国間メカニズムの運用の詳細などについて議論されました。その結果、DSIから利益を得る業界のDSI使用者が、利益などの一部を「カリ基金」とよばれるグローバルな基金に拠出することを締約国が促すことや、それを生物多様性条約の目的のために使うこと等が決定されました。企業の売上や利益の内の何%を拠出するのかや対象となる企業の規模の目安や基金の各国(主に途上国)への配分方法などは次回COP17までの期間に更に検討される予定です。

【議題14 条約第8条(j)項及び関連条項】

 生物多様性条約(CBD)では、先住民族及び地域社会(IPLCs)が有する知識・工夫・慣行を尊重すること、それら知識等の適用を促すこと、そうした知識の利用がもたらす利益を衡平に配分すること等が掲げられており(第8条(j)項等)、IPLCsの伝統的知識が生物多様性の保全と持続可能な利用に果たす役割が認識されています。
 本件についてはこれまで専門の作業部会が作業してきましたが、COP16では、IPLCsの生物多様性保全への参画を強化・確保するため、作業部会に代わる常設の補助機関の設置が決定されました。この決定はある意味で本件の格上げともいえ、その採択時には、会場は大きな拍手に包まれお祭りのようでした(採択時の様子はUN Web TVより視聴可能【1】)。先住民族に関する議論は普段の生活ではあまり聞きなれない話かもしれませんが、COP16での重要な成果の1つといえます。このほか、本件に関する作業計画も採択されました。

【議題12 能力構築・開発と科学技術協力など】

 この事項は、KMGBFのターゲット20で掲げられているほか、日本の国家戦略においても国際連携の一環として目標が設定されています。
 COP15では、能力の構築・開発のための長期戦略的枠組みが採択されたほか、科学技術協力のための新たな仕組みの構築が決定されました。この仕組みは、世界の各地域に固有なニーズ等を踏まえて科学技術協力と技術移転を推進する役割を担う地域センターとそのセンター同士のネットワーク、世界全体で調整を行う主体で構成されるものです。
 COP16前の準備会合で18の組織が地域センターとして選定されたことを受け、COP16では、世界全体で調整を行う主体とその運用を決めるべく議論が行われました。
 結果、運用方法が採択され、条約事務局が調整を行う主体となることが決定されたほか、地域センターに対しては2か年の作業計画の作成を求めることを決定しました。今後、科学技術協力がより推進され、世界各地で生物多様性の保全が一層進むことが期待されます。

【議題25 生物多様性と気候変動】

 KMGBFには、気候変動対策関係のターゲット8や自然を活用した解決策(NbS)等を通じた生態系サービス等の回復を掲げるターゲット11があり、国家戦略においてもその基本戦略2でNbSが掲げられています。
 議論の結果、これらターゲット等に取り組む際に、生物多様性の取組と気候変動対策との相乗効果(シナジー)を最大化しつつ、気候変動対策が生物多様性に意図せぬ悪影響をもたらすことを回避することなどを締約国に求める内容が盛り込まれました。また、気候・生物多様性・海洋のネクサス(相互関係)への対応や気候変動枠組条約との協力の推進等が掲げられており、今後これらについて作業が進展することが期待されます。

【議題21 侵略的外来種】

 侵略的外来種への対応はKMGBFのターゲット6で扱われており、COP15以降、生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)第10回総会(2023年)で侵略的外来種とその管理に関するテーマ別評価報告書【2】が承認されたほか、侵略的外来種に関するG7ワークショップが開催されるなどの国際的な動きがありました。
 COP16では、同評価報告書が歓迎されたほか、専門家会合での議論を経た侵略的外来種対応等に関する5つのガイダンス(気候変動等からのリスクを踏まえた侵略的外来種の管理に係るガイダンス、植物防疫措置の活用や侵略的外来種の導入経路ごとの管理手段等についての助言をまとめたもの等)が承認されました。締約各国には、自国の生物多様性国家戦略等の更新・実施におけるこれらガイダンスの活用が求められています。

【議題16 KMGBFの実施における科学技術的なニーズ】

 条約事務局の分析等により、KMGBF実施のために追加的な取組みが必要と考えられる事項として、「生物多様性に配慮した空間計画」(ターゲット1等)、「汚染と生物多様性」(ターゲット7)、「生物多様性を活用した持続可能な活動・製品等」(ターゲット9)、セクションCの「衡平性と人権本位のアプローチ」が挙げられました。
 議論の結果、これらに加え、セクションCの「多様な価値体系」も候補に加えられました。今後、作業負荷や他の条約や国際プロセスにおける取組みとの重複を考慮しながら、CBDで取り上げられることが見込まれます。
 ちなみに、汚染は、「気候変動、生物多様性の損失、汚染に取り組むための効果的で包括的かつ持続可能な多国間行動」をテーマとして2024年2月26日から3月1日にかけて開催された第6回国連環境総会(UNEA6)において、気候変動、生物多様性の損失と並んで、3つの世界的な危機の1つとして認識されています。また、空間計画については、IPBESにおいて「生物多様性を考慮した統合的空間計画と生態系の連結性に関する方法論評価」が2025年から2027年にかけて実施される予定です。このように、CBD以外でもこれらの分野についての国際的な動きがあります。

【議題20 海洋と沿岸域の生物多様性】

 この議題では生態学的又は生物学的に重要な海域(EBSA)と海洋の生物多様性の保全と持続可能な利用が取り上げられました。その中でも、念願の成果が得られたEBSAについて紹介します。EBSAの抽出は2023年に採択された国家管轄権外区域の海洋生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する協定(BBNJ協定。2024年12月24日時点で未発効)にとっても有益な情報になる可能性があるとして、その潜在性が期待されています。
 2008年のCOP9でEBSAの基準が採択を受け、世界各地で地域ワークショップが開催され、EBSAの基準に合致する海域が抽出されました【3】。日本でも、2010年のCOP10で採択された愛知目標11(陸域17%・海域10%の保護地域等による保全)の達成に向けた各種検討の基礎とするべく、CBDの基準を踏まえた日本独自の基準に基づき「生物多様性の観点から重要度の高い海域」の抽出が行われています。
 2016年のCOP13以降、そうした海域についての記述内容の変更や新規に抽出するための手続きを定めるべく作業が行われてきましたが、法的・政治的な懸念により、意見がなかなか収束しませんでした。しかし、約8年の議論を経て、COP16でようやくEBSAの手続きが採択され、その際には会場が大きな拍手に包まれました。今後はこのプロセスに沿って基準に合致する海域の抽出等が行われる見込みです。

【議題22 生物多様性と健康】

 2020年にIPBESの生物多様性とパンデミックに関するワークショップが開催され【4】、KMGBFでは、「実施における配慮事項」(セクションC)の1つとして、「健康」が挙げられています。COP14(2018年)で生物多様性と健康との相互関係を政策などに主流化する支援のために生物多様性と健康に関する行動計画の作成が始まり、4年の議論を経てCOP16でようやく採択に至りました。
 行動計画では、人、動物、植物及び生態系の健康を持続可能な形で調和・最適化するべく、KMGBFの各ターゲットについて健康との関係や生物多様性と健康の双方にとって好影響をもたらす行動などが示されており、締約各国は、行動計画の実施とその実施についての報告が求められています。

3.議論以外の注目ポイント:COP16への参加者数

 こうした成果以外にも、COP16には注目すべきポイントがあり、これまでのCOPに比べた時、その参加者数やサイドイベントの多さは注目すべきポイントです。
 KMGBFが採択されたCOP15の時の参加登録者数は約9,500人程度でしたが、COP16では13,000人を超え、これまでにないほどの人々が参加しました。COP16 での注目議題が資源動員と先住民関係であることを受けてか、特に、ビジネス・産業界からの参加者とIPLCs団体・組織からの参加者はCOP15からほぼ倍増しました(ちなみに愛知県名古屋市で開催されたCOP10の参加登録者数は7,418人でした)。
 会議と並行して開催されたサイドイベントについてはCOP16期間中に開催可能なイベント数である320程度の枠に対して1,200程度の開催希望がありました。その中で、KMGBFのターゲット19でも言及されている生物多様性クレジットについては、賛否双方の立場からその動向が注目されており、関係のイベントでは満席であるにも関わらず会場に入り込む人や会場外から傍聴する人がいました。そうしたイベントの開催も相まって参加者の増加につながったのかもしれません。
 同様に国連とその専門機関、政府間機関からの参加も倍増しており、生物多様性についての認識が幅広いセクターに広がってきていることが伺えます。

4.今後の作業とまとめ

 COP16は翌年(2025年)2月にイタリア・ローマで再開予定です。主に以下の事項について議論が再開されます。

■計画・モニタリング・報告・レビューの仕組み

いわゆる実施のPDCAサイクルに相当するものといえます。現在(2024年11月2日時点)、44カ国が国家戦略等を、112カ国がKMGBFに沿った国内目標を提出しています。今後、各国の取組を集約し、KMGBFの実施・達成状況の点検を行うことになっています。KMGBFの実施には、社会全体で取り組むこと(“whole-of-society approach”)の重要性が認識されており、国以外の主体からのコミットメントをこの点検にいかにして取り込むかについても議論されました。再開会合ではその点検方法の詳細が決まることになります。

■モニタリング枠組み

この枠組みは上記の仕組みの構成要素であり、KMGBFの進捗を計測するための世界共通のものさし(指標)を各国に提示するものです。KMGBFの達成に向けた世界的な取組み状況を明らかにするべく、締約各国はこの指標に基づいて国家戦略等の実施について報告することになります。ただ、同枠組みはCOP15で採択されたものの、十分開発された指標が無いターゲットがあるなど多くの欠点が残されています。再開会合では、その欠点を補い、枠組みを一旦完成させるための指標のほか、各締約国に対し主要な指標の計測方法等の詳細などが記されたガイダンスの活用を促す内容が記された決定案を採択するための議論が行われます。

■資源動員

ターゲット19ではすべての資金源から少なくとも2,000億米ドルを毎年拠出すること等が掲げられており、そのためのガイダンスとして、資源動員戦略フェーズ II(2025-2030)等が議論されました。生物多様性に特化した新たな基金の設立を一部途上国が求めましたが、既に存在する基金との関係からその必要性を疑問視する先進国が反対するなど、締約国同士の溝は埋まらないままとなっていて、再開会合でも難しい議論が予想されます。

 COP16は中断されましたが、最大規模のCOPとなったほか、様々な分野で多くの成果が得られ、長年の懸案事項についても一区切りついた機会になったといえます。CBDでは多岐にわたる事項について議論されており、保全や持続可能な利用に関係するガイダンスなどの成果物もたくさん作成されていますので、引き続き国際的な議論に注目しつつ各自の活動に活用・反映してくことは重要といえます。そうした取り組みが社会全体として積み重なり、国家戦略、さらにはKMGBFの実施が進むことで、自然と共生する社会の実現につながっていくことになると考えられます。

【1】条約第8条(j)項関連の採択時の様子(UN Web TV)

【2】IPBES「侵略的外来種とその管理に関するテーマ別評価報告書」

【3】生態学的または生物学的に重要な海域

【4】IPBESによるパンデミックと生物多様性ワークショップ報告書の概要

記事に含まれる環境用語

関連リンク

COP15(2022年)以降の作業の流れ(環境省(2023))

https://www.eic.or.jp/library/pickup/295/


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

純白の砂漠や砂岩が輝く古代遺跡etc.、2025年に訪れたい世界の絶景スポット10

2025-01-11 | 先住民族関連

 

GQ  1/10(金) 9:00

ムーカンチャイ(ベトナム)

アメリカ・ネバダ州のカラフルな岩山、ニューメキシコ州の純白砂漠、そしてニュージーランドの神秘的な鍾乳洞など。一生に一度は訪れたい、世界各地の絶景スポットをフューチャー。2025年の旅計画を早速立ててみては?

【写真の記事を読む】一生に一度は訪れたい、世界各地の絶景スポットをフューチャー。2025年の旅計画を早速立ててみては?

◼︎ムーカンチャイ(ベトナム)/世界一美しい棚田に会いにいく

山の斜面に整然と階段状に並ぶ、その美しい姿が人々を魅了する棚田。少数民族モン族が人口の9割を占めるベトナム北西部の田舎町ムーカンチャイを一躍有名にしたのも、コンデナストトラベラーが「世界の最も美しいスポット50選」に選んだのも、この棚田だ。春先は水の張られた田が巨大な鏡となって輝き、初夏には黄緑色だった若芽が色鮮やかな緑の稲に成長し、稲穂がたわわに実る秋には辺りが黄金色に染まる。稲の成長と共に表情を変える景色は、日本人の懐かしい故郷の原風景と重なる。

◼︎フライガイザー(アメリカ)/砂漠の中に佇むアートのような岩山

アメリカ合衆国ネバダ州北部のブラックロック砂漠に突如現れる、摩訶不思議な岩のアート。1960年代に地熱エネルギー会社が試掘したが、事業化できずに埋め戻したところ、水圧に耐えかねて温水が噴き出した。巨大な円錐体群は、その中に含まれる炭酸カルシウムが凝固したもので、50年以上経った今も勢いは衰えることなく、複数の噴出口から熱湯を吹き出し続けている。温水中の鉄などの金属や好熱性の藻類によって黄色やオレンジ、赤や緑など強烈な色彩をまとい、美しくも奇怪な姿へと変貌遂げた。

◼︎ペトラ遺跡(ヨルダン)/映画のロケ地としても有名なヨルダンの秘宝

紀元前1世紀頃に、この地に移り住んだナバタイ人が残したピンク色の古代都市。シークと呼ばれる断崖絶壁の間の隠れ道をたどっていくと、岩を彫って造られた圧倒的な迫力のエル・カズネが突然姿を現わす。ギリシャの神々の緻密な彫刻が施された遺構には、宝物殿という名前が付けられているが、実際には人智によって水を操り、砂漠を豊かな都市へと変えたナバタイ王の墓だと考えられている。映画『インディー・ジョーンズ・最後の聖戦』のロケ地としても知られ、その荘厳な姿が好奇心と冒険心を掻き立てる。

◼︎地獄の門(トルクメニスタン)/直径90m!50年以上燃え続ける巨大クレーター

トルクメニスタンの首都アシガバードから北に約260キロ離れたカラクム砂漠にある、灼熱の炎を上げる直径90mの巨大クレーター。1971年に地質学者たちが天然ガスの充満した洞窟を発見したが、掘削中に崩落。有毒ガスの放出を食い止めるために点火したところ、地下から吹き出す可燃性のガスのために、50年以上過ぎた現在でも燃え続けている。2024年10月にはトルクメニスタンの国営企業が、この地域で天然ガスを採取する計画を発表。温室効果ガス削減の動きもあり、地獄の門が燃え続けられるのもあと数年かもしれない。

◼︎トーレス・デル・パイネ国立公園(チリ)/壮大なパタゴニアの大自然を体感

パタゴニアの南西部にあり、3,000m級の高山から、複雑に入り組んだフィヨルド、ターコイズブルーの氷河湖、多様な植物が生息する森林まで、圧倒的な自然の美しさと厳しさが共存する世界。ここを訪れた際にぜひ泊まりたいのが、公園の入り口にあり、流線形の建物が特徴のラグジュアリーホテル「ティエラ・パタゴニア」だ。周囲の自然と調和するようにパタゴニアの天然木とガラスで構成され、大きな窓には公園名の由来でもある3本の険しい岩峰トーレス・デル・パイネが見事な姿を披露する。

◼︎ルム採石場(エストニア)/澄んだ湖と廃墟と化した採石場のコントラスト

透き通った湖と、その中に半分沈んだ今にも崩れそうな廃虚。そのコントラストが見る者に不思議な感覚を呼び起こす。もともとは旧ソ連時代の石灰岩の採石場跡で、刑務所が運営し、働き手は受刑者たちだった。採掘が中止になり、水を汲み上げていたポンプが止まると、大量の水があふれて一帯は湖に。夏はペダルボートやSUPボードのレンタルもあるが、水中に有刺鉄線などの残骸があり、水泳はあくまでも自己責任。近くにあった刑務所も既に閉鎖されているが、音声ガイド付きのセルフツアーがあり、廃墟の歴史を紐解くことができる。

◼︎ラップランド(スカンディナビア半島)/ヨーロッパ最北の地でオーロラを

スカンディナビア半島北部からロシアにまたがる、先住民のサーミ人が住むヨーロッパ最北の地。夏は太陽の沈まない白夜になり、冬は一転して、カーモスと呼ばれる日の昇らない極夜が続く。雪と氷に覆われる北極圏の秘境では、夏の終わりから翌年春にかけて、一生に一度は見ておきたい自然の神秘、オーロラに出合える確率が格段に上がる。幻想的な光を放ちながら大空を舞う姿を、ラップランドでは1年のうち約200夜、空が澄んでいる日には2分の1の割合で観察できるのだ。

◼︎ホワイトサンズ国定公園(アメリカ)/どこまでも純白な砂漠が創り出す2つの絶景

アメリカ・ニューメキシコ州のトゥラロサ盆地にある、世にも珍しい純白の砂漠。日中は青空を背景に、風が描き出す白砂の波紋が陽光を浴びてキラキラと煌めき、夕刻には沈みゆく太陽が砂漠一帯をオレンジ色に染めていく。白砂の正体はアラバスターと呼ばれる雪花石膏で、周囲に川や海がないため、石膏が溶けて流れ出さずに盆地にとどまり、長い年月をかけて風化・浸食されたもの。日中でもさほど熱くならず、素足で砂の台地を踏みしめることも可能だ。

◼︎ワイトモ洞窟(ニュージーランド)/洞窟を埋め尽くす無数の光の正体は?

オークランドから車で2時間半ほどのニュージーランド北島のワイカト地方にある巨大な鍾乳洞。その名は、先住民族のマオリ族の言葉で水「ワイ」と洞窟「トモ」から。地下を流れる川と天井から落ちる水滴が、数千年の時をかけて作り上げた洞窟の中で、無数に煌めく青白い光。一度見たら脳裏に刻まれるこの幻想的な光の主は、実はツチボタルと呼ばれる、オセアニアだけに生息するヒカリキノコバエの幼虫だ。正体はともあれ、暗闇の中で繰り広げられる神秘的な光のショーは得も言われぬ美しさだ。

◼︎シシーギリヤ・ロック(スリランカ)/狂気に取りつかれた王が残した空に浮かぶ王宮

密林にそびえる巨岩の頂上に築かれた要塞は、5世紀後半に実の親を廃して王位に就いた狂気の王、カッサパ1世が残した天空の城。500人もの愛妃と沐浴を楽しんだといわれる「水の庭園」をはじめ、その愛妃たちだとも、インド神話に出てくる天女だともいわれる鮮やかな色彩の美女のフレスコ画、頂上近くに鎮座する守護神のような巨大ライオンの足の像など、栄華を極めた王朝を偲ばせるヘリテージが見る者の心を惹きつける。約1,200段のスリリングな階段を登り切った先には、遥かかなた地平線まで続くジャングルの一大パノラマが待っている。

https://news.yahoo.co.jp/articles/ac55766b0566938d3a8f636d8c661b8a37f0770a


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ファッション通信【Vancouver - 知られざる多文化共生都市 -】

2025-01-11 | 先住民族関連

 

BSテレ東 2025-01-10

2025年1月11日(土) 23時00分~23時30分

番組内容

番組初上陸となるカナダ・バンクーバーを特集!
若手デザイナーの登竜門バンクーバー・ファッションウィークからファッション通信的バンクーバーの歩き方。近日公開の注目映画や、カナダの先住民文化にフォーカスしその土地ならではの現代アーティストを紹介。
自然と都市が融合したあなたの知らないバンクーバーを一挙にお届け!

紹介内容

バンクーバーファッションウィーク、ル・マルシェ・セント・ジョージ、ホーマーストリートカフェアンドバー、新渡戸記念庭園、アイ・ライク・ムービーズ、アルテリア、UBC人類博物館、ブライアン・ユンゲン

番組概要

ファッション通信は、1985年11月の放映開始以来、世界でも類をみないファッション専門の長寿番組として、ファッションシーンの最前線を伝え続けています。パリ、ミラノ、ニューヨーク、ロンドンなど世界中のコレクション現場を取材。年間400本以上に及ぶファッションショーのレポートから、注目のクリエイターやモデル、ショップ、パーティーまで多岐にわたる内容は、現在も多くのファッショニスタの支持を集めています。

https://www.tv-tokyo.co.jp/broad_bstvtokyo/program/detail/202501/16663_202501112300.html


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【世界地理】アラスカ北部の先住民といえば?(第222問)

2025-01-11 | 先住民族関連

 

citrus2025年1月10日

SNSで盛り上がった選りすぐりのネタを紹介するcitrus。

今回は話題の情報から少し離れてひと休み。頭の体操でリフレッシュしましょう!

出題するのは世界地理に関するクイズです。

■気になる解答は…

答えは……「イヌイット」でした!

こちらの問題は、『一般常識一問一答.com』を参考に出題しています。

サイトでは、ほかにも国語、算数、理科、社会、音楽などなど……日本人として最低限知っておきたい義務教育レベルのキーワードを中心に、数多くの問題が掲載されています。

一般教養を学びたい方だけでなく、定期試験や受験の対策をしたい学生やクイズ番組をより楽しみたい方にもおすすめですよ! 興味のある方はぜひ見てみてくださいね♪

出典:世界地理クイズ問題1000問以上にチャレンジ

https://www.msn.com/ja-jp/lifestyle/life/世界地理-アラスカ北部の先住民といえば-第222問/ar-BB1rbYuI


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

見えない課題が待ち受けている!オーストラリアはグリーン革命の先導となることができるか?

2025-01-11 | 先住民族関連

 

Jomfruland.net 10. 1月 2025 by Tabitha Sherwood

オーストラリア、新たなエネルギー基準を設定

オーストラリアは、画期的なウェスタングリーンエネルギーハブ(WGEH)を通じて、グローバルなエネルギー環境における役割を再定義しようとしています。西オーストラリアに位置するこの野心的なプロジェクトは、グリーンエネルギーソリューションの新たな標準を設定し、世界が再生可能資源を見る視点を変える可能性があります。しかし、この取り組みには、成功を左右する可能性のある重大な障害と未解決の課題があります。

主要な質問への回答

1. WGEHの目的: WGEHは、海運業や鉄鋼業などの主要産業を再生可能エネルギーに移行させることを目指し、年間350万トンのグリーン水素を生産する計画です。このクリーンエネルギー源は、従来の化石燃料に代わるもので、持続可能な未来を促進することが期待されています。

2. コミュニティへの影響: ミアニング伝統地域アボリジニ法人が10%の株式を持ち、雇用創出と長期的な経済的利益を享受します。このプロジェクトは、包括的成長の重要性を強調し、持続可能な開発の展望を持つ地域社会をエンパワーメントします。

3. グローバルな影響: オーストラリアのグリーン水素のリーダーに向けた動きは、全球のエネルギー政策に影響を及ぼし、再生可能エネルギー分野における地位を強化し、国際的なエネルギーのダイナミクスに影響を与える可能性があります。

障害を克服する

WGEHは多くの約束がある一方で、重要な課題に直面しています:
財政的実現可能性: プロジェクトの莫大な初期コストは、投資と経済的実行可能性の微妙なバランスを必要とします。
環境保護: 持続可能性に焦点を当てている一方で、インフラは生態系への影響を最小限に抑える必要があります。
先住民との協力: 先住民の権利の尊重と統合を継続することが重要であり、地域の遺産や伝統の保護を保証する必要があります。

利点と欠点

利点:
環境的持続可能性: 化石燃料を代替することで、炭素排出量を削減します。
経済的機会: 地元のコミュニティが重要な経済成長分野に参加することを促進します。
エネルギーの自立性向上: 再生可能エネルギーの利用による国内エネルギー安全保障の強化。

欠点:
高い初期投資: グリーン水素生産の財政的および技術的な課題をクリアする必要があります。
広大な土地の必要性: 再生可能インフラのために広大な土地を使用することと他の土地利用とのバランスを取る必要があります。
技術的障壁: 水素を効果的に保存・輸送するためには革新が必要です。

世界が注目する中、オーストラリアの先駆的なグリーンエネルギーイニシアティブは、持続可能性に向けたグローバルなシフトを促進し、野心と実行可能な結果のギャップを埋める大型プロジェクトの可能性を示すかもしれません。

オーストラリアのグリーンエネルギー革命: 知られざる事実と論争

オーストラリアのウェスタングリーンエネルギーハブ(WGEH)は、再生可能エネルギーセクターにおいて単なる模範を示すだけでなく、興奮と議論を呼び起こしています。しかし、どのような情報が見落とされているのでしょうか?

最大が本当に最良か?

WGEHの広大さは否定できず、年間350万トンのグリーン水素を生産することを想定しています。しかし、その規模には特有の課題があり、安定した出力を維持することや地域の生態系に対する潜在的な影響が含まれます。批評家は、野心が必要とされる一方で、大規模なプロジェクトは意図せぬ生態的混乱に直面する可能性があると主張しています。

グローバルなグリーンエネルギーの先駆者か、周辺プレイヤーか?

オーストラリアが再生可能資源のリーダーとしての地位を確立しようとする中、一部の専門家は、そのコミットメントが全球的なエネルギー政策に大きな影響を与えるには不十分ではないかと疑問を呈しています。世界的に同様に野心的なプロジェクトが競争している中で、オーストラリアは本当に大規模な進展を維持できるのか、それとも単なる多くの一つになるのか?

隠れたコストと経済的考慮

経済的には、このプロジェクトは豊富な機会を約束しますが、財政的な厳密さが重要です。投資家は、潜在的な収益性と即時の資金流出の間の明確な違いに気づいています。批評家は、グリーン水素を強調することで、同様に魅力的な代替エネルギープロジェクトからリソースが逸脱する可能性があると警告しています。一つのバスケットに全ての卵を入れてしまっていないでしょうか?

先住民参加の利点と論争

ミアニング伝統地域アボリジニ法人を関与させたことが評価される一方で、プロジェクトの先住民コミュニティとの関係は継続的かつ注意深い管理が必要です。文化的および環境的利益が調和することで、倫理的かつ相互の成長を確保する必要があります。このモデルは、グローバルなエネルギープロジェクトにおける先住民パートナーシップの未来なのか?

同様の再生可能エネルギーの取り組みをさらに深く知るには、Featured Energy Newsを訪問してください。オーストラリアのWGEHは有望な飛躍ですが、グローバルな持続可能性のリーダーシップに向けたその軌道にはバランスの取れた視点が必要です。

Tabitha Sherwood

タビサ・シャーウッドは、新興技術の突破に対する洞察により名高い技術作家です。彼女は、名高いペンシルバニア州立大学のコンピューターサイエンスの学位を持ち、複雑な技術革新を分析・解釈するキャリアを築いてきました。彼女が執筆キャリアを開始する前は、数年間画期的なテクノロジー企業であるRed Hatで、データ分析部門の戦略的な位置にいました。彼女のそこでの仕事は、テクノロジー環境の新奇性の意義を見極めるための批判的な目を彼女に与えました。深遠な考えを魅力的な文字で表現することで彼女を認識し、タビサ・シャーウッドは技術文学の分野で尊敬される存在となり、デジタル進化の潜在的な影響について広範な視聴者に情報提供し、助言しています。

https://www.jomfruland.net/ja/見えない課題が待ち受けている!オーストラリア/


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

世界でたった7頭、幻のクジラが発見。史上初の解剖へ

2025-01-11 | 先住民族関連

 

TABI LABO 2025年1月10日

世界でたった7頭、幻のクジラが発見。史上初の解剖へ

© 提供元:https://tabi-labo.com/310947/wtg-whale-rarest

ニュージーランドの海岸に打ち上げられた、謎のクジラ。その正体は、世界でたった7頭しか確認されたことのない、幻の「ツチクジラ」だった。

幸運にも今回は調査に適した状態だったため、史上初の解剖が行われたという。未知の生物の謎を解き明かす、貴重な機会となったようだ……。

9つの胃袋が物語る

ツチクジラの進化の道筋

ツチクジラは、その生態のほとんどが謎に包まれている。これまで生きた姿が確認されたことはなく、「南太平洋の深海に生息する、極めて珍しいクジラ」という情報しか存在しない。2012年の調査では、「非常に深く潜る習性をもつ」と報告されているのみだ。

「Smithsonian MAGAZINE」によれば、今回の解剖によって明らかになったのは、ツチクジラが他のクジラとは異なる、特異な消化器官を持つということだ。なんと胃袋は9つに分かれており、そのなかには「イカのくちばしやレンズ、寄生虫などが見つかった」と、ニュージーランド環境保全省の上級海洋科学アドバイザーAnton van Helden氏は語る。

深海という過酷な環境を生き抜くため、独自の進化を遂げた結果なのだろうか?

退化した歯に刻まれた、進化の歴史

さらに興味深いのは、ツチクジラの顎に「痕跡的な歯」が発見されたことだ。同氏によると、歯茎に埋もれた小さな歯は、彼らの進化の歴史を物語っているとのこと。

過去の研究では、他のアカボウクジラ科のクジラは、進化の過程で「主にイカを吸い込んで食べる」方法に移行したため、歯が退化したことが示唆されている。今回の発見は、ツチクジラもまた、同様の進化を遂げてきたことを裏付けるものと言えるだろう。

進化の過程で、ある器官が必要なくなり、退化していく現象は、生物の世界では決して珍しくない。私たち人間の盲腸も、そのひとつだ。

では、私たち人間はこれから先の未来、どのように進化していくのだろう? 遠い未来に思いを馳せながら、今一度、自身の身体についても見つめ直してみてほしい。

科学と文化の調和

マオリ族の教えが導く未来

今回の調査は、科学的な側面だけでなく、文化的な意義も大きい。解剖には、現地のマオリ族の人々も参加し、生物学的知識と伝統的な知識の統合が図られた。マオリ族にとって、クジラは「タオンガ」と呼ばれる、神聖な生き物だ。調査チームの一員であるRachel Wesley氏は「先住民と科学者が協力して、クジラとその行動についてより深く理解することができた」と語っている。

先住民の知識と近代科学の融合は、近年、生物多様性の保全や気候変動対策など、地球規模の課題解決において注目されている。自然と共存してきた先住民の知恵に、私たちはもっと耳を傾ける必要があるのかもしれない。

今回の発見は、ツチクジラという謎多き生物への理解を深めるための、小さな一歩に過ぎない。今後、CTスキャンなどを用いた詳細な分析が進められる予定だ。さらなる発見により、進化の謎が解き明かされる日が待ち遠しい。

Reference: Scientists Just Dissected the World’s Rarest Whale in New Zealand. Here’s What They Found

Top image: © iStock.com / seawaters

https://www.msn.com/ja-jp/news/opinion/世界でたった7頭-幻のクジラが発見-史上初の解剖へ/ar-BB1rc39F?cvid=2CDA084BD19D4B738C17D86B031C872F&ocid=hpmsn&apiversion=v2&noservercache=1&domshim=1&renderwebcomponents=1&wcseo=1&batchservertelemetry=1&noservertelemetry=1


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【北海道の難読地名】北海道の南部にある「旅来」って何と読む?その由来は?

2025-01-11 | アイヌ民族関連

 

リビング札幌2025年1月10日

北海道といえば、難読地名の宝庫!道民ならたいてい知っているけど、それ以外の人からは、なんて読むか分からない地名がたくさんあります。

そんな地名を探して、クイズにします!

北海道の南部にある「旅来」は何と読む?

十勝川に沿うように位置する中川郡豊頃町の「旅来」。何と読むか分かりますか?

さて、正解は?

正解は・・・

「たびこらい」でした!

その由来は?

中川郡豊頃町のホームページによると

「タプ・コプ・ライ」と発音すると「タプ・コプ」は丸山、「ライ」は「死んだ」、すなわち「丸山で死んだ」となる。

しかし、別に「タプカル・ライ」と発音すると「タプカル」は「鼓舞する」となり「鼓舞して死んだ(ところ)」の意味になる。

旅来コタンのアイヌと日高アイヌが戦った折に、戦いに傷つき死に臨んで鼓舞した酋長の伝説があるが、地名との時間的前後関係は不明である。

と書かれています。

◆豊頃町 公式ホームページ

https://www.toyokoro.jp/

同じ町内では、太平洋に流れ出した十勝川を覆う氷の塊が、まるで宝石のように輝く「ジュエリーアイス」という自然現象がみられることで有名です。自然の神秘を感じられる素敵な景色、ぜひこの目で見てみたいものです。

◆豊頃町観光サイト「ジュエリーアイス」

https://www.toyokoro.jp/site/kanko/1401.html

札幌や近郊のグルメ&お出かけ情報を見るなら「リビング札幌Web」!

https://mrs.living.jp/sapporo

#北海道 #南部 #難読地名

https://www.msn.com/ja-jp/news/opinion/北海道の難読地名-北海道の南部にある-旅来-って何と読む-その由来は/ar-BB1rfBmv?ocid=BingNewsVerp


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

米中の仁義なきグリーンランド争奪戦――最後に笑うのは“北限のグローバル・サウス”先住民か

2025-01-11 | 先住民族関連

 

六辻彰二国際政治学者 1/11(土) 8:01

 【参考】グリーンランド、カースートスップの眺望(写真:アフロ)

  • トランプはデンマーク領グリーンランドの購入に意欲をみせていて、軍事力の行使も排除しないと“恫喝”した。
  • トランプ発言はグリーンランドの戦略的重要性が高まるなか、この地に進出する中国への対抗を念頭に置いている。
  • “恫喝”にデンマークや欧州各国は反発しているが、グリーンランドの分離独立を目指す先住民族の間には歓迎する意見も目立つ。

トランプ2.0“恫喝外交”

 トランプ米次期大統領は「アメリカに必要」という理由で、中米パナマのパナマ運河と北欧デンマークのグリーンランドの譲渡を求めているが、どちらも当然のように拒否されている。

 これに関して1月8日「経済的、軍事的な選択肢を排除するか」という記者の質問にトランプは「どちらも保証はできない」と返答した

https://www.youtube.com/watch?v=VRpFDranP-A

 パナマやデンマークに経済封鎖や軍事占領をしないとは約束できない、という発言が当事国以外からも反発を招いたことは不思議ではない。

 このうちグリーンランドに話を絞ると、ドイツのショルツ首相が「国境を力で変更することは許されない」と発言し、フランス政府報道官は「帝国主義的」と批判するなど、ヨーロッパ各国からも批判が噴出した。

 デンマークはEUとNATOに加盟している。

 実際には米軍によるグリーンランド制圧はほとんど想定できない。むしろ、「緊張感を一気に高めて自分のペースに持ち込む」トランプ得意の交渉術とみた方がいいだろう

 しかし、そうだとしても、トランプ2.0が第一次政権時代と比べてもなお攻撃的なトーンを強めているのは間違いない。トランプは第一次政権時代の2019年にもグリーンランド購入を提案したが、デンマーク政府に拒否されている。

グリーンランドの戦略的重要性

 なぜトランプは人口5万7000人たらずのグリーンランドに固執するか。

 一言でいえば、北極海に浮かぶこの世界最大の島が戦略的重要性を増しているからだ。

 たとえば安全保障の観点からいうと、米ロ間でミサイルが飛び交う事態になった場合、最短コースは北極点周辺だ。だからこそアメリカは冷戦時代からグリーンランドにレーダー基地を構えてきた。

 ところが近年ではロシアも北極海周辺に軍事拠点建設を計画中で、これに中国も協力しているといわれる。

 これだけでもアメリカの関心をひいて不思議でないが、経済面も無視できない。

https://www.youtube.com/watch?v=wWO4STnTe2w

 地球温暖化で北極海が冬でも凍らなくなり、この海域では天然ガスなどの資源開発レースが活発化している。グリーンランドの場合、石油や天然ガスだけでなく、ニッケル、銅、ウランなどの鉱物も豊富に埋蔵されていて、そのなかにはコバルトなどのレアアースも含まれる。

 コバルトはリチウムイオンバッテリー生産に欠かせず、テクノロジー覇権を左右する戦略物資だ。

 中国政府は2014年からグリーンランドでの資源開発に参入し、これと並行して空港などインフラ建設を進めて存在感を増してきた。現在、中国はグリーンランドからみてデンマーク本国に次ぐ貿易相手国だ。

 つけ加えると、凍りつかなくなった北極海は海上交通の面からも重要度を増している。中東情勢の緊迫で、スエズ運河周辺の航行リスクが高まっているからだ。

https://www.youtube.com/watch?v=_PGOKHU7iBc

 そのため、グリーンランドは太平洋と大西洋を結ぶ国際物流のハブ候補として急浮上している。

外圧で勢いづく独立運動

 とはいえ、だ。

 いくら重要性が増していても、「だから売れ。さもなければ…」と言わんばかりのトランプの態度が反発を招くのは当然だろう。

 ただし、デンマーク本国はともかくグリーンランドでは反発一色でもないようだ

 トランプ発言に対して、グリーンランド自治政府で初めての女性首相になった経験もあるハモンド議員は「我々を商品のように扱っている」と反発した。

https://www.youtube.com/watch?v=xV9eXhwcSPg

 その一方で、イヌイット友愛党のクノ・フェンカー議員は英BBCの取材に「トランプ発言は脅威ではない」とコメントした。

 イヌイット友愛党は先住民族イヌイットを母体とする。デンマークからの分離独立を掲げていて、現在グリーンランド議会の最大会派でもある。

 フェンカーは分離独立の急先鋒の一人で、今月初旬グリーンランドを訪問したトランプの長男、トランプJrとも会談した。

 フェンカーによれば、「グリーンランドが独立すればアメリカと協力できる」。

 また、イヌイット友愛党選出のエジェデ首相も年始のスピーチで「今こそ我々の将来に向けて歩き始める時だ」と述べた。

https://www.youtube.com/watch?v=XMvN-MPS2p0

 それはトランプのグリーンランド購入のシナリオとは異なる。しかし、デンマーク政府を揺さぶり、既存の国境線を変更しようとする点で両者の利害は一致する。

デンマークの内なる植民地

 いわばグリーンランド先住民族は外圧をテコに分離独立を目指そうというのだ

 その背景にはデンマーク本国への反感がある。

 グリーンランドは18世紀にデンマークの植民地になった。1953年にデンマークの一つの県になったが、その後もデンマーク語強制など“デンマーク化“は続いた。

 また、一時はイヌイットに対する産児制限も行われた。

https://www.youtube.com/watch?v=8nymZjhv2pE

 こうした背景のもと分離独立要求が強くなった結果、グリーンランドは2009年、高度な独立性をもつ自治区としての立場を勝ち取った。

 しかし、現在でもグリーンランド人口の約88%を占めるイヌイットの所得水準は総じて低く、ホームレスの比率でデンマーク人より50%以上高い。

 社会不満を背景に、“内なる植民地”が“支配者”との訣別を求める構図は、イギリスのスコットランド北アイルランドにも共通する。

 グリーンランドの場合、2023年4月には憲法草案がグリーンランド議会で審議されるなど、分離独立の気運は高まっている。だからこそ、デンマーク政府に対するトランプの“恫喝”を歓迎する声にもなるのだ。

北限のグローバル・サウス

 ただし、分離独立派の視線はアメリカだけでなく中国にも向かっている。

 中国の経済進出はグリーンランドのデンマーク依存を引き下げてきたからだ。

 従来グリーンランドの主財源はデンマーク政府からの補助(年間およそ5億ドル相当)だったが、近年の中国投資はそれをはるかに上回り、2023年だけで2645億ドルにのぼった。

 英誌エコノミストは2018年段階ですでに、中国投資がグリーンランド独立の原動力になっていると報じていた。

 一方の中国政府は、公式には分離独立に関して何も述べていない。

 しかし、「グリーンランド独立は好都合」という点で中国はアメリカとほぼ同じだ。規制の多いデンマークからグリーンランドが離れれば、より自由に経済活動を行えるからだ。

 その意味で、トランプ発言に対する好意的な反応とは裏腹に、分離独立派が今後も中国との関係を維持しても不思議ではない

 分離独立派は決してアメリカの一部になることを望んでいない。それでもトランプの力を利用するなら、逆にアメリカに取り込まれないように中国との関係でバランスをとるしかない。

 つまり、米中それぞれとつき合うことが分離独立派にとって最大の利益になるとみられるのだ。

 米中対立が激しくなるにつれ、どちらか一方に偏らず、バランスをとるのは今やグローバル・サウスでポピュラーな構図だ。それは米中それぞれに対する発言力を担保する戦術でもある

 デンマークの“内なる植民地”グリーンランドは、いわば北端のグローバル・サウスと呼べる。

 グリーンランドの分離独立派にとって米中対立は、多くのグローバル・サウスと同じく、リスクであると同時にチャンスでもあるといえるだろう。

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/352823490920071b8489478f984d3f06ff729a01


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする