1月21日(月)は拙宅のピアノの調律の日。アップライトのしがないピアノだが現在は誰も弾く人間がいないので応接室の部屋の隅に置きっ放しになっている。
したがって、調律は必要なさそうだが少なくとも一年に一回程度はこまめにやっておかないと、いづれ大きな故障につながる可能性があり、そのときはかえって高くつく恐れがあるとのこと。
これまでは二~三年に一回程度のペ-スで調律をしてもらっていたが今回から長兄の知り合いのTさん(妙齢・超美人・残念(?)ながら新婚ホヤホヤ→写真)に比較的割安で調律をお願いできることになり、小雨混じりの空模様が思わしくない中わざわざ福岡から見えていただいた。
10時40分頃から調律を開始し、ネジの錆磨きや、直径5mmほどのフェルト5枚の交換、掃除など付帯作業もあって12時10分頃に終了。ワタシの目前で懇切丁寧に解説しながら調律していただいた。普段ならここで昼食をどうぞということになるのだが、午後は湯布院方面に次の予約が入っているので、なかなかあわただしいご様子。
それではせめて、我が家のオーディオ装置を聴いていただいてピアノの音が正しく鳴っているかどうかを教えて欲しい旨あつかましくお願いすると気持ちよくご快諾。
本音を言えば、ピアノの調律よりも自分のオーディオ装置の調律の方が大切なのだ。だって、それはそうだろう。ワディアのCDトランスポート(270)とDAコンバーター(27ixVer.3.0)を合わせた額だけでもピアノの値段よりも3倍以上するんだから・・・・。
この際、是非プロの専門家の意見を聞かせてもらおう、それも調律士さんという日頃オーディオとは無縁の素直な耳で実際に聴いてもらう機会など滅多にあるものではない。
生のピアノの音と我が家の電気回路から出る音の違い、いわば限界なるものをくれぐれも遠慮せずに率直に教えて欲しい旨お願いして試聴に入った。
まずは、最近頻繁に聴いているモーツァルトピアノ協奏曲25番第二楽章から。約5分ほど聴いてもらって「どうです、ピアノは自然な音が出ているでしょうか」と高鳴る心臓の鼓動を抑えながら、ややうわずった声(?)でお尋ねしてみた。
「ぜんぜん不自然な音ではないですよ」とやさしくおっしゃっていただいたが、「欲を言えばもう少し低域の下の方へと音の伸びが欲しいですね、そうすると全体的に音の広がりと開放感がもっと出ると思います」とおっしゃる。
ウーム、なかなか厳しい指摘!この時点では低域の音量をやや絞った状態にして聴いていたので、思わずボリュームに飛びつくようにして最大限に上げた状態にやり直して、もう一度同じ箇所を聴きなおしてもらった。「良くなりましたね~」とおっしゃったが、これはいささか、気休めに慰めてもらった感じ。
以前から気にはなっていたが、やはりあのグランド・ピアノの深々とした低音を38cmウーファーから出すのは至難の技と思い至った。スピーカーの箱に少しばかり工夫した我が家の装置でもこれが限界というものだろう。音色に不自然さがないだけ良しとしなければ・・・・。
もし対策を講じるとすれば、スーパー・ウーファーを追加して30ヘルツぐらいから下をブーストするぐらいだろうか。余分のアンプが1台あるし、出力端子にも余裕があるのでやる気になれば出来ないこともないがここはひとつじっくりと仲間の意見を聞くことにしよう。
続いて、マリア・ジョアオ・ピリスが弾くモーツァルトのピアノ・ソナタK.475。腹にズシーンと力強く響く打鍵音に始まるソナタである。しばらく聴いておられて、ふと「ピアニストの息づかいが聞こえてきますね」といわれる。
ピアニストは鍵盤から指を上げるときに大きく息を吸う訓練を受けているそうで、「はじめは楽譜をめくる音かと思いましたがよく聴いてみると演奏者が吸う息の音で随分繊細でかすかな音を再生していますね」と今度は褒めてもらった。
限られた時間の中、早々にピリスを切り上げて、今度はジャズでビル・エヴァンスの「ワルツ・フォー・デビイ」の1曲目マイフーリッシュ・ハートを。「トリオのせいかピアノの音を意識して丸くして主張を抑えていますね。ベースの音が素晴らしくよく録れています」とのご感想。
最後に、ヴァイオリンも大好きとのことでグリュミオーが弾くモーツァルトのヴァイオリン協奏曲5番第二楽章。「よく響くヴァイオリンですね~、ヴィブラートをかけているのがよく分かります」、「そうですね、楽器はストラディヴァリ」ですとワタシ。
曲の途中で、とうとうこらえきれずに一番気になっている質問を。「ヴァイオリンとピアノの音ですが、我が家の装置ではどちらが生の音らしく聴こえますか」と祈るように聴いてみた。
しばらく考えておられたが、「強いて言えばヴァイオリンでしょう、ヴァイオリンは純音ですが、ピアノは平均律の音という違いがあります。ピアノの生の音は聴く位置によって音が汚くなることがありますが、この場合は一番いい位置で聴いている感じできれいすぎます」とのことだった。
以上のようなコメントをいただいて、本日の目的はおおむね達したようなもの。いささか割り引いて聞くとしても我が家のオーディオはどうやら間違った方向には進んでいない様子で、これでひと安心。これもオーディオ仲間のお陰と心から感謝、感謝。
深く霧がかかって運転しずらい湯布院までの行程をくれぐれも気をつけてと念を押しながらTさんのクルマを見送った。