最近いろいろと気になるCD盤を手に入れたので試聴して感じたままを記載してみた。
☆ ベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲」
1 演奏者 ヘンリク・シェリング
指 揮 ハンス・シュミット=イッセルシュテット
オーケストラ ロンドン交響楽団
録 音 1965年
レーベル PHILIPS
2 演奏者 ヘンリク・シェリング
指 揮 ベルナルト・ハイティンク
オーケストラ アムステルダム・コンセルトヘボウ
録 音 1973年
レーベル PHILIPS
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ベートーヴェンの「V協奏曲」については先般のブログで、17種類の試聴を行い、2のシェリング演奏(ハイティンク指揮)がダントツという結果に終わった。(あくまでも自分の感想です)。
しかし、実はシェリングにはこのV協奏曲をもう一つ録音したものがあって、それが1のイッセルシュテット指揮のもの。これも定評ある名盤との噂があって、むしろ音楽専門誌などではこちらの盤の方がランキングの上位に位置している。
ハイティンク盤よりもいいかもしれないと思うと、是非購入してみなくてはと早速、HMVに注文してイッセルシュテット指揮の盤を手に入れ、両者を聴き比べてみた。
シェリング自体の演奏については録音時期に8年の差があるものの技巧の差はまず感じられない。また、さすがに両盤ともに定評ある指揮者で全体の演奏も実力伯仲といったところで甲乙つけがたし、あとは好みの差ということに。
ただし、オーケストラの響きの方は明らかにアムステルダム・コンセルトヘボウのほうが響きが豊かで好ましく、それに録音の方も同じPHILIPSレーベルなのに8年の差はいかんともしがたく、鮮明で冴えわたっていて一日の長があった。
結局のところ、ハイティンク盤だけで十分であえてイッセルシュテット盤を購入する必要はなかった。
☆ ブラームス「ヴァイオリン協奏曲」
1 演奏者 ヘンリク・シェリング
指 揮 ラファエル・クーベリック
オーケストラ バイエルン放送交響楽団
録 音 1967年
レーベル ORFEO
2 演奏者 ヤッシャ・ハイフェッツ
指 揮 フリッツ・ライナー
オーケストラ シカゴ交響楽団
録 音 1955年
レーベル RCA(レッド・シール)
3 演奏者 ジネット・ヌヴー
指 揮 ハンス・シュミット=イッセルシュテット
オーケストラ 北ドイツ放送交響楽団
録 音 1948年
レーベル PHILIPS
4 演奏者 ダヴィド・オイストラフ
指 揮 フランツ・コンヴィチュニー
オーケストラ シュターツカペレ ドレスデン
録 音 1955年
レーベル ドイツ・グラモフォン
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世評ではヴァイオリン協奏曲と名がつく曲目の中でベートーヴェンのV協奏曲が王者とされているが、自分ではベートーヴェンよりもブラームスのそれのほうが上ではないかとひそかに思っている。
きわめて内省的でありながら、奥に秘めた感情がじわ~っと盛り上がってくるような独奏ヴァイオリンの展開を聴いていると、ブラームスの音楽ここに極まれりの感があり、コレに比べるとベートーヴェンのそれは、なんだか単なる外見的なきれいごとで終わっている印象でまるで感動の深さが違うといつも思う。
こういう大好きでたまらないブラームスのV協奏曲だが、ヘンリク・シェリングの出来具合がベートーヴェンのV協奏曲のときにあまりに良かったので、どうしてもブラームスのものも聴きたくなり新たに手に入れた。
同じ頃に、今度はハイフェッツのそれも湯布院のAさんからお借りすることができたので、シェリング、ハイフェッツと一流とされるヴァイオリニストが名を連ねるとなると当然のごとくヌヴー盤、オイストラフ盤を加えて比較試聴したくなる。
これまで、何回も書いてきたように昭和30年代に盤鬼と称された西条卓夫さん(故人)がヌヴー盤を数ある同盤の中から「トドメをさす」と絶賛されているが、自分もこれは神の域に達した名盤だと思っている。
これまで約40年にわたってクラシック音楽を聴いてきたが、この盤と同じくらい感動を覚えた盤は本当に少ない。
このヌヴー盤をシェリング、ハイフェッツが追い越せるかどうか興味が尽きないところ。
オイストラフ盤については6枚持っている中でコンヴィチュニー指揮をピックアップした。以前、ブログでヌヴー盤とこのオイストラフ盤を聴き比べて、圧倒的にヌヴー盤に軍配を上げたが、最近、オーディオ装置の一部を入れ替えたことだし再度チャレンジさせてみようと参加させてみた。
≪試聴結果≫
1のシェリング盤はまるで期待ハズレだった。ヴァイオリンに力強さがなくひ弱な印象で、いろんな解釈があるのだろうが自分がイメージしているブラームスではない。ベートーヴェンのV協奏曲ではあれほどずば抜けた演奏を聴かせてくれたのにとがっかり。とうとう1楽章の途中で聴くのをやめた。これほどのヴァイオリニストでもやっぱり曲目との相性があるんだなあ~。
2のハイフェッツ盤もいまいち。まずオーケストラがよくない。緊張感が足りず盛り上がりも感じられない平板な演奏。こうなるとハイフェッツのヴァイオリンの冴えも何だか虚しくなる。これも1楽章を完全に聞き終わるまでには至らなかった。
結局のところ、あれほど期待していたシェリング盤、ハイフェッツ盤はあえなく討ち死にとなった。
3のヌヴー盤はやはりいつもどおり期待を裏切らなかった。まず気合が違う。女流とは思えない音の太さ、音色の浸透力が出色。高らかな情感を波打たせて優美に表現される情緒の多彩さは他の追随を許さない。やや粗削りなところがあるが逆に、単なる美しさだけに留まらずブラームスの音楽の核心に迫っている印象を受ける。コレはやはり神盤だと再確認した。
4のオイストラフ盤も思わずうならされた。最近、SPユニットをヴァイオリンを得意とする「アキシオム80」に替えたせいもあるのだろうか、以前よりもずっとずっとヴァイオリンの音色がいい。豊潤という言葉がピッタリ。オイストラフはやっぱりすごいなあ~。ヌヴー盤と遜色がないと思ったほどで認識を新たにした。
こうなると世評の高いクレンペラー指揮、セル指揮の同盤を引っ張り出して改めて聴き比べてみたが、好みの差はあろうがやはりコンヴィチュニー指揮の盤を断然かう。
自分の場合、ブラームスのV協奏曲はヌヴー盤(イッセルシュテット指揮)とこのオイストラフ盤(コンヴィチュニー指揮)があれば完結する。あとの盤は要らない。