共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

母との思い出

2015年02月02日 21時15分51秒 | 日記
先日お母様が急逝された大人の生徒さんが、今日久しぶりに教室にみえました。先週までは初七日法要や何やらでバタバタされていたようですが、それもようやく落ち着いてひと心地つけたそうです。

あまりに突然のことだったので、「こんなに急に逝ってしまうのであれば、なんでもっと優しく向き合ってあげられなかったのでしょう」という後悔の念を口にしておられました。何でも直前まではコミュニケーションがとれるほどお元気だったようで、お仕事をされている娘さんにあれやこれやと用を言いつけておられ、それに対して生徒さんもきつく言い返してしまったことがあったのだそうです。

私にもそんなことがありました。母が他界するわずか4日前、見舞いに来た父と交代してホスピスケアを後にする時「もう帰るけどいい?何ならもう一日くらい居てもいいけど」などと、半ばふざけたような物言いをしてしまいました。それに対して母は「仕事があるんだろ、お前はまだ社会人になりたてのペーペーなんだから、仕事してナンボだ。早く帰って仕事しろ。」と言い返してきましたが、これが生前に母と交わした最後の会話になってしまったのです。

今でも時々「何であんな心にもない言い方で末期がんの母におちゃらけてしまったのだろう。もっと大事な話が沢山あっただろうに…」と思うことがあるのですが、正に後悔先に立たず、今となってはどうしようもありません。

ただ、母が「早く帰って仕事しろ」と私を病院から追い出したのは、もしかしたら余命を悟った母の最後の優しさだったのではないか…とも思うことがあります。一人でいる時にそんなことを考えると、今でも胸が締め付けられるような気持ちになります。

ところで、生徒さんのお母様との思い出話の中で、興味深いものがありました。年明け間もない頃、お母様を車の後部座席に乗せて車を運転していたら、普段は滅多に歌などお歌いになられないお母様が突然「♪春は名のみの、風の寒さや~…」と《早春賦》を歌い始めたのだそうです。生徒さんも「いい歌ねぇ」と一緒になって歌っておられたそうですが、それが晩年のお母様との一番楽しい思い出として残っている…ということを仰っていました。

奇しくも明日は節分、明後日は立春です。そんな時節柄に思いを馳せながら《早春賦》を聴いてみたくなりました。いろいろとあった中で、中原美紗緒さんのレコード音源のものがありましたので転載してみました。

木曜日には再び関東地方に雪が降るという予報が出されていますので、正に『春は名のみ』となりそうな予感がしますが、どうなりますやら…。先ずはお母様の御冥福を御祈念申し上げながら、吉丸一昌作詞、中田章作曲の名曲をお送りしたいと思います。

合掌。

中原美紗緒:早春賦
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