元彼の遺言状には
「殺した人物に遺産を与える」という
内容が書かれていた。
関心があるのはお金だけという主人公。
「読み始めたら止まらない」ということですが
前半はテンポもよくなく、
登場人物にも魅力を感じられず
図書館の期限もきたので一旦返却しました。
でもなんとなく結末が気になり
一月ほど経ってまた借りてきて
続きを読みました。
読み進めていくうちに
少しずつ面白くなってきました。
でも犯人の動機などは
後であまり印象に残りません。
登場人物が多く人間関係も複雑で
何度も読み返し確認しました。
読み終えてから綾瀬はるかを主人公に
テレビ放映lされることを知りました。
イメージはちょっと違うように思えますが
この作品、ドラマになると結構面白そうです。
インビジブル
戦後の混沌とした大阪で起きた事件。
この時代特有の暗い空気感。
戦中の満州への開拓民、
アヘンを発端とした犯人の動機が
重く心に刺さります。
新人刑事新城と帝大卒警察官僚守屋の
バディーもの。
この二人が事件の真実を探っていきます。
魅力あるコンビです。
大阪城付近の昔の様子も
興味深く読みました。
高層ビルが林立する
現在のOBP(大阪ビジネスパーク)が
この本に書かれているような、
終戦後は秩序の乱れた地だったとは...
大阪城周辺、大阪の北部を
捜査していく物語は
この辺りの過去の状態を
新しく知ることもあって
面白かったです。
十字架のカルテ
テーマは犯罪者の精神鑑定。
精神鑑定医、影山司が主人公の
連作短編集。
影山司と助手の弓削凛が
犯罪者の責任能力を判定。
高校時代に親友を失い、
その犯人の名前、
罪も明かされないという事実をきっかけに
精神科医になった凛。
心神喪失の状態での
罪は罰しないという刑法39条。
裁判に関し重大な使命を
与えられた精神鑑定。
本当の精神疾患か、精神病の詐病、
あるいは故意、
犯罪者の深い心の闇を暴く。
ラストの「闇の貌」が特に
読み応えがありました。
解離性同一性障害(多重人格)の女性。
自らの中に潜む副人格を
操って意図的に殺人って!?
彼女の人格を呼び起こさせた環境など
弓削凛が暴く事件の真相とは?
望み (角川文庫)
家を出て連絡がとれない息子。
息子が事件の被害者か加害者か?
本のタイトルである『望み』
母親と父親の望みは逆方向。
母親は息子が加害者でも生きていて欲しい。
父親は被害者あって欲しいと。
まさに二人の望みは絶望的な望み。
母親がお腹を空かしているだろう息子に
差し入れの弁当の準備を思いつく場面、
本を読んだ後も
思い出しては、涙を誘います。
映画化され上映されていますが
もう見なくていいような・・・
悲しくてつらい、心が苦しくなる
重いテーマの小説でした。
ノワールをまとう女
雇い主である元総会屋の
ボス原田の命を受け
企業の炎上案件を
解決する仕事を請け負う西澤奈美。
炎上元のデモ団体に潜入、
裏工作しヘイトの沈静化を図る。
話し相手はAIなど
今の世の中を描写。
全体的に流れる
暗くて静かな雰囲気。
クールで強い女の反面、
脆い一面ものぞかせ、
魅力的にもみえるけど
あまり心にぐっと来ることは
なかったです。
恋人は同性。
仕事は裏稼業、
一人称で描かれていて
ハードボイルドっぽく書かれた作品ですが
もし主人公の性別が違っていたら
ありがちな物語のような..
黒幕の存在も予想できるし...
江戸川乱歩賞受賞作品。
幕末まらそん侍 (ハルキ文庫)
舞台は幕末の上野国安中藩、
安中藩主・板倉勝明は
日本初のマラソン(遠足 とおあし)大会を行う。
それに参加した藩士たちを描いています。
映画化を知り読みました。
映画のタイトルはサムライマラソン。
土橋章宏というと「超高速!参勤交代」の作家で
映画化された作品も楽しめたので
この本の映画化も面白い気がします。
「遠足(とおあし)」 「逢引き」「隠密」
「賭け」「風車の槍」と
5つの章から成り立っている
連作短遍小説。
各章の主人公が他の章にも絡む
構成になっています。
各章それぞれが藩士達の人情味溢れる物語。
殿様の命令には従うより他はない
家臣達の奮闘、
それぞれの人間模様、
涙と笑いが心に響き、
読後は心がほっこりする物語でした。
官邸襲撃
武装テログループが首相官邸を占拠。
人質となったのは
総理大臣、米国務長官、駐米大使等。
たった一人でテロリスト立ち向かう
日本初女性首相付きの
女性警護官、夏目明日香。
武装したテロリスト集団VS女性警護官。
日米政府間の連携の悪さから、
あらゆる作戦は失敗。
物語の内容としては結構よくある話。
テロ集団の探す人物、(プリンセス)は、
早い段階で分かりました。
スピード感のある展開なので
楽しく読めましたが、
単身テロリストに対し立ち向かうことになった
主人公がスーパーウーマン過ぎて
リアリティーがなく、
それゆえ安心して読めるという
利点もありました。
歪んだ波紋
マスメディアの誤報、
フェイクニュースをテーマにした
5つの連作短編集。
短編が繋がり最後に集約。
登場人物が多く、
本を読み返す場面も。
マスメディアの
誤報、虚報、捏造によって、
人生を変えられてしまうこと、
歪んだ波紋を作ってしまったことに対し
どれくらい発信者は
責任を負っているのか、
問題を提起しています。
記者達の倫理観に
歪みがないことを願いたいです。
メディアの怖さ、
誤報が悪意によって導かれ
無意識に真実から遠ざかるよう
方向づけられたとしたら
不安になります。