花ごよみ

映画、本、写真など・

ジェネラル・ルージュの凱旋(上・下) (海堂尊)

2009-03-08 | 本 か行(作家)



内部告発、
速水部長に収賄の疑惑が…。

外科医・速水が主人公、
彼の魅力がたっぷり!

緊急医療の現場、
スタッフに指揮する
速水部長がとにかくかっこいいのです。
まるでジェネラル、凱旋将軍。

負傷者が多数搬送、
救急医療現場に携わるスタッフ達に対し、
指揮する彼のここでのが活躍が、
目に浮かびます。

この役を映画で演じる堺雅人、
きっと、かなりおいしい役だと思います。

深い紅のルージュを塗るのだろうか?
これはちょっと気持ちが悪いと思いますが…。

倫理問題、緊急用のヘリ導入の問題なども
提起されています。

もちろんチームバチスタのコンビ、
田口・白鳥も登場します。
でも、今回は速水のかげに隠れ、
希薄な印象しかなかったです。

上巻はあまり印象には残らなかったです。
下巻になって段々ストーリーに引き込まれ
後半からラストは俄然盛り上がり、
臨場感たっぷりでした。

映画化され7日封切りです。
この作品、
どういう風に映像化されているのか
見に行くつもりです。





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サクリファイス (近藤史恵)

2008-06-27 | 本 か行(作家)

主人公、白石が新たに
生き甲斐を見出したのは、
自転車ロードレース。

ツールド・ジャパンの、
メンバーにまで
頭角をあらわします。

彼の本来の役割は石尾のアシスト。
その石尾に関する過去の暗い噂。

犠牲によって成り立つという
自転車ロードレースという競技の特性。

タイトルに秘められた真実とは?

サクリファイス=犠牲、
多重なサクリファイス。

このテーマのもつ悲しさ。

自転車ロードレース選手特有の姿勢とは?

自転車ロードレースの魅力も
味わうことができました。

人間の表と裏。
ミステリー…。
人の心のミステリーなのです。

後を引くラストの展開。
思いもしなかった結末。

これ以上物語の、
真実に触れることは、
この小説の性質上できないです。

淡々として、
読みやすい小説ですが、
この物語の中に、
秘められているものは、
決して軽いものではないです。

コメント (10)
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新世界より(上・下) (貴志祐介)

2008-05-02 | 本 か行(作家)

新世界より 上 新世界より 下

貴志祐介さんの作品は【黒い家】【天使の囀り】
【クリムゾンの迷宮 】【青の炎】
【硝子のハンマー】を既読。
寡作な作家としては、
結構多く読んでいます。

図書館で予約したら、
上巻と下巻が同時に手元に。
それも分厚い!!
上下合わせて1071ページ。

そこでページ数の合計を日数で割って
1日に読むページ数のノルマを
決めてなんとか読み終えようと
努力しましたがやっぱり
期間中に読了は無理でした。

結局、読み残したまま再度予約をして、
やっと、なんとか読み終えることができました。

貴志祐介3年半ぶりの、
作品ということです。

こういう世界を考える貴志祐介さん
すごいです。

不思議生物に対しても
何気なく書かれていて、
作者の記す情報によって当の生物の
全体像が違和感なしに伝わってきます。

風船犬、バケネズミ…
色んな化け物の登場、
気持ち悪いのだが、
なにかユーモラス、
少年、少女の物語、のどかな田園風景…。

なーんて高をくくっていたら
物語の世界が知らされるにつれ
気持ち悪さもエスカレート。

恐ろしい光景がちらちら
目に浮かんできます。
前半には伏線が引かれています。

多数で構成される社会、
多彩な価値観。
人間の愚かさ、なによりグロい描写。

【クリムゾンの迷宮】、
【天使の囀り】を彷彿させる
貴志祐介さん特有の、
においがする作品でした。





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チーム・バチスタの栄光 (海堂 尊)

2008-02-11 | 本 か行(作家)


第4回“このミステリーがすごい!”
大賞受賞作品。

この作品が海堂 尊のデビュー作。

心臓手術を行う特殊チームに起こった、
術死を巡る疑惑。

その疑惑を解決すべく、
選ばれた二人の人物。

厚生労働省から来た、
情け容赦ない、
ロジカルモンスターの白鳥と、
心療内科、愚痴外来の、
任務に就いている田口。

多重監視網をくぐり抜けての
マジシャンばりの犯行。

医療システム、医療人、
この二つが重なって成立した
密室での恐るべき行為。

上巻の途中で他の本を、
読みたくなったので、
一時、人に貸して、
しばらく期間をおいて
また読み始めました。

上巻は伏線が張られてはいるけど
その記憶も薄れてしまっていました。

上巻の本をどこまで読んだのか、
目印もしていなかったので
分からなくなりましたが、
下巻から読み始めても
別に大丈夫みたい。

強烈キャラの白鳥が、
登場する下巻からが、
断然おもしろいです。

展開が気になって、
一気に読んでしまいます。


鮮明な登場人物のキャラクター。

現代社会の病巣のような犯人。

犯人登場はすこし、
あっさりとした感じです。
残りのページ数からして、
もしかしたら、
もう一度どんでん返し?
とも想像していました。

物語中、この犯人はあまり
重要視されていないのかな
と感じました。

ミステリーだけに終止しないで、
白鳥、田口、
この二人の探偵コンビの、
コメディタッチ、医療問題が
物語に厚みを加えています。

映画化されて、
もう上映が開始されています。

田口は本では男でしたが、
映画化では竹内結子、白鳥は阿部寛、
阿部寛は原作の小太りということを、
除いてはこの役に全くぴったりです。

どのように映像化されたのか
楽しみです。


☆追記 
映画を見ました。
感想は→こちらです。






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天才たちの値段  (門井 慶喜 )

2007-09-20 | 本 か行(作家)
2003年オール讀物、
推理小説新人賞受賞作家の
デビュー作品ということです。

テーマは美術、
連作形式をとっています。

「天才たちの値段」
ボッティチェッリの名画についての真偽。
本物か贋作か?
そこで登場する佐々木と、
美術品を、味覚で判別出来るという、
天才、神永美有。


「紙の上の島」
イヴォンヌの姉の破談に関して
毀した古い蔵から残されていた、
大航海時代の地図の謎。


「早朝ねはん」
エアロビクスをしているよう見える、
涅槃図の釈迦の不思議。


「論点はフェルメール」
政治家が息子を試すため、
フェルメールの贋作のついての
ディベートを催す。

「遺言の色」
佐々木の縁者の遺言の開示。
ガラス工芸に関して回答した方が、
財産相続出来るという。


トリックもあって、
期待感を持ちながら、
読み進めていくことができました。
大学講師の佐々木先生は、
いい味を出していて楽しめます。

佐々木先生、イヴォンヌ、神永美有、
人物の設定が巧妙です。

美術作品の謎解き、深い考察に
気持ちがひかれます。
最後には意外さがあります。

実際にこの目で作品を見てみたい。
そんな願望を
持たせてしまう物語です。

ミステリー小説ですが、
殺傷はなく悪人も出て来ません。

でも読んでいるときは、
話に入り込めますが
読み終わるとすぐ忘れてしまうような…。

美術品の真偽、鑑定という日常から
かけ離れた世界だからでしょうか。



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果断 隠蔽捜査2 (今野 敏)

2007-08-22 | 本 か行(作家)


『隠蔽捜査』に続く第二弾。
立てこもり事件に関しての、
竜崎の責任の行方。

前編の隠蔽捜査が以前に、
ドラマ化されたのを見ているので
どうしても、
竜崎→陣内孝則、伊丹→柳葉敏郎が
イメージとして頭の中で、
浮かんでしまいます。

冒頭の怜悧な官僚的な話し方も、
前編を読んでいるので
イヤミとは感じないで、
むしろこの主人公の性格の
おかしさを感じ、なつかしいです。

人からはどう思われようと我が道を行く。
横にはぶれない、
その一途な姿勢は相変わらず潔い。

伊丹は伊丹でまた前編と同じく
組織内でそつなく動く。
この姿も相変わらずです。

現場で対立する、
武器は情報、交渉力という、
捜査一課特殊班(SIT)と
武器は制圧のための武力というSAT。

指揮する竜崎。
思いもしなかった事件の展開は?

 「責任ならとってやる」
潔い言葉です。

前編と同じく主人公の言動に
一種のさわやかさを感じました。

この本だけでもおもしろいですが、
前編の隠避捜査を読み
竜崎のちょっと変わったタイプの
人となりを把握していると、
より面白さが増すと思います。
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曙光の街 (今野 敏) 

2007-06-20 | 本 か行(作家)
 
『白夜街道』の前編になる『曙光の街』。

曙光……暗い状況の中に現れてきたわずかの希望。
   明るいきざし。


前編があるとは知らず、
先に白夜街道の方を読みました。
でも前作未読でも
全然問題はありませんでした。

白夜街道の方は、
自分好みの本だったので、
いつか前編になる曙光の街を
読んでみたいと
思っていました。

白夜街道は舞台がロシアまで飛び、
日ソ問題も顔を出したりして、
スケールの大きさを感じましたが、
こちらの方は日本からは
離れずそれも東京、しかも、
六本木近辺で
話が進んでいきます。

ヴィクトル、兵籐、倉島といった、
負の要素たっぷりの三人の
男達が前方へ一歩を
踏み出すといった感じで
白夜街道とはちょっと違った
物語の方向性、
イメージを持ちました。

ロシアのヒットマン、
ヴィクトル対
警視庁公安部、倉島の
バトル。

そののかげに隠れた
心の結びつきといった、
白夜街道のような
内容とは違い、
三人それぞれの立場、職業、
生い立ちなどによって、
生じる心の屈折を経て、
生きていく上での曙光を
見つけることができるのかを
描いているように
思われました。

人物設定も分かりやすく、
読みやすい作品でしたが、
白夜街道のような読んでいて
ワクワクするといった感じには
至りませんでした。


陣内孝則、柳葉敏郎でドラマ化された
『隠蔽捜査』に続く、
今野敏の新作、
『果断 隠蔽捜査2』
これもぜひ読みたいと思っています。
 







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陰日向に咲く  劇団ひとり

2007-03-02 | 本 か行(作家)
 
作者は[劇団ひとり]
TVドラマ「電車男]の頃より、
気になる俳優でした。 

【バブルへGO!! タイムマシンはドラム式 】にも
出演しています。

とても読みやすい作品です。

「道草」
「拝啓、僕のアイドル様」
「ピンボケな私」
「Over run」
「鳴き砂を歩く犬」の5つの
連作短編集。


悲しいと言い切ってしまうのではなく
もの悲しいという言葉が
ふさわしい感じの話でした。
 
陰日向の陰の方、
隅っこで生きている
登場人物達の悲しみ、
愛すべき人々。
それを温かく見守り描く。

作者の人を見る目の優しさが、
見え隠れします。
物語はどこかでリンクしあって
そういう面白さもあります。 
 
文章は優しくて
独特の世界、ものの見方が、
感じられます。

孤独でわびしくって…。 
 
でもその寂しさをを
フワッと抱きかかえるような、
包容力も感じました。

  


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白夜街道  (今野 敏)

2006-11-14 | 本 か行(作家)

吉川英治文学新人賞の(隠蔽捜査)に続き、
読むのはこれで、2冊目の今野敏作の本。

面白いです。 

元KGBの殺し屋ヴィクトルが、 
貿易商ペデルスキーと一緒にロシアから来日。
 
外務省のエリート職員が貿易商と密談、
ロシアに帰国後、外務省職員が急死。 
 
警視庁公安部・倉島警部補はヴィクトルと、 
ヴィクトルに警備されている貿易商、 
この2人を追って、白夜のロシアへ。 
緊迫の追跡調査を描く、アクション小説 。
 

ヴィクトルと倉島、それぞれの視点で、
物語が進んで行きます。 
 
ヴィクトルシリーズの1弾目の
前作、(曙光の街)を読んでいなくても大丈夫でした。 
この本、単独でも充分楽しめます。 


舞台はロシアと東京。
右翼、やくざ、なども登場します。

最終決着は、ロシアのハーロフスク、
といっても場所、位置は不明ですが…。

緊張感いっぱいの、
狙撃のプロ相手の銃撃戦。 

公安と外務省の微妙な対立。
公安の仕事の危うさ。

ロシア、カザフスタンの民主化問題。
危ういバランスの上の平和。 

この事件のバックには、
日露間にある問題にまで及んでいきます。

感情を交えない乾いた文章。 
ドロドロ、女々しさなど皆無のストーリー。 
 
すっきりまとまっていて、
主立った登場人物の中では、
本当の悪人はいないし、
後味のいい作品です。

警察小説の隠蔽捜査も良かったですが、
こちらの小説も面白くて楽しめました。
 
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隠蔽捜査 (今野敏)

2006-11-01 | 本 か行(作家)

竜崎、警察庁長官官房総務課長、
自分が一番正しいと思いこんでいる男。

息子とのかみ合わない、
一方通行の会話。
この家族にこれから一体、
なにが起こるのかと
不安材料が一杯。

ある事件が起きる。 

警察の威信を守るための
隠蔽工作。 
 
供述の信憑性がないという理由をつけて
事件に目をつぶり、
犯罪をもみ消すように、
指令がおりる。

保身に走ろうとする一つの勢力。
 
しかし竜崎はもし、そのような画策をして 
警察自体の権威が失われたら、
警察官僚の権威も失われるという
考えの上で反対する。 

自分自身の警察官僚のポストが 
失われるのは我慢ならないという理由で。
 
息子の犯罪をも隠蔽しない竜崎は、
感情というものには作用されない、
理性的な人間。

自分自自身の正義に沿って、
起こした行動が 
警察機構の危機を救うこととなる。

緊迫感一杯で
ラストは爽快感が残りました。 

最初はなんて
この男は変人なんだろう、そして
エリート臭くて嫌みな官僚だと思っていたのに、 
読み進んで行くうちに、 
結構、魅力的な人物に感じてきて、
自分のためにとはいいながらも、
結局は組織を救う為に
奔走する姿勢は、 
すがすがしくもありました。
 
同じ警察小説の横山秀夫の震度0と比べても
こちらの方が読後感がいいです。 

最後の(これからおもしろくなりそうじゃないか)の記述。
この主人公の正しい選択により 
仕事も家族とも 
うまくいきそうな気がしました。


06年第27回吉川英治文学新人賞。
 
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