花ごよみ

映画、本、写真など・

悪の教典 上巻 下巻  (貴志祐介)

2012-03-22 | 本 か行(作家)

悪の教典 上

悪の教典 下

上巻の表紙は黄色に黒いカラス
下巻は黒に赤い校舎
薄気味悪さを予感する表紙です。

見た目も爽やかで、
普通のいい人のようにカモフラージュし
生徒の信頼を受け、
慕われている教師、蓮見。

本当の顔は共感能力が欠落し、
人の心を無くした、
サイコパス(反社会性人格障害)。

学校内で自分の理想的な、
「王国」を作りあげるため、
自分にとって邪魔となる人物は淡々と排除。

正しいこと、悪いことの理解や
ひとかけらの罪悪感も、
持ち合わせない不気味な怪物。
彼は人間ではないのです。

人間らしい感情の欠落した
今まで読んだ本の中でも、
1、2を争うような
邪悪な人物でした。

自分のクラスの生徒を
蓮見曰く全員「卒業」することを計り暴走。
その方法も寒気がするような手法で…

長々と続く残虐な場面に、
もういい加減止めてと
言いたくなります。

悪魔なのに外見はイケメンの好青年。
その相反するところが、
この本を面白くしているような気がします。

怖ろしい物語ですが引き込まれます。
上下2冊を一気に読んでしまいました。


三池崇史監督、主演、伊藤英明で
映画化されるそうです。
HPは→こちらです。

酷いシーンの映像化は
見るのが怖いような…

伊藤英明、見た目は好青年…
いいかもしれませんね。
魅力的なサイコパスである、
教師蓮見(ハスミン)を期待したいです。


コメント (4)
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極北クレイマー (海堂 尊)

2011-12-27 | 本 か行(作家)

舞台は赤字に苦悩する、
極北市の市民病院。

主人公はその病院で働くことになった、
非常勤外科医・今中。

今中は病院内部の事情を知るにつれ、
驚きを隠せないほどの、
疲弊した状況を知るようになる。

どうにかして改善に導こうと努力するが…

多くの問題を抱えた状態の中で、
この病院を一人でがんばっていた
三枝医師の医療事故による逮捕。

この本に出てくる三枝医師、
「ジーンワルツ」
マリア・ クリニック院長の
息子だったんですね。
事故の詳細をこの本で
知ることになりました。

病院は破滅の方向に進んでいく。

「上」を読み進んでいっても、
病院の腐敗体質、
医療問題を読者に見せる以外、
あまり展開はありません。

「下」のラストに近づくにつれ、
ようやく面白くなってきましたが
病院再建の希望も、
何も解決されない結末には、
満たされない気分になります。

2冊も読んでこの結末。
主人公である今中医師と同じく
空虚感に包まれます。

財政が行き詰まった、
市と市民病院、
あとがきには夕張を取材とあります。
この本で描こうとしたのは、
地域医療の問題と医療ミスの現実。
でもその解決策は、
結局見いだせないまま
終わってしまいました。




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アリアドネの弾丸 (海堂 尊)

2011-10-11 | 本 か行(作家)

チーム・バチスタシリーズ第3弾の、
テレビドラマを見た後、
原作を読みたくなりました。
ドラマの放映中、
居眠りをしたりしていて
分からなくなってしまった部分も
あったので…

まだ文庫化はされていないので
図書館で予約して、
借りることができました。

原作はドラマとは違っていて
余分な人間関係や過去の犯罪もなく
すっきりとした構成になっていました。

キャラクター設定も違っていて
性別が変わっていたりしています。

AIセンターの設立を願う医療側、
解剖による判断に頼る司法側との対立。
交わることのない医療と司法。

縦型MRI「コロンブスエッグ」の
画像診断と警察側の妨害工作。

本の中盤ごろからラストにかけて
MRI測定室におけるトリックを
整然と解きほぐしていく白鳥。

でもAIセンター創設を、
食い止めるという理由で
病院内で事件を起こすというのは
どうも納得するに至らなかったです。

ドラマにあった色々な事件もなく
単に医療問題と特殊な空間である、
MRI室における犯行の
謎解きが主体なので、
ドラマで映し出されたトリックを
文字によって復習をしたような感じでした。




コメント (2)
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八日目の蝉 ( 角田光代)

2011-04-23 | 本 か行(作家)

近々、永作博美、井上真央主演で、
映画が上映されます。

それまでに読まなければと思い
やっと読了しました。

文庫化されています。

内容はというと、
不倫相手の赤ちゃんを誘拐、
その後3年半にかけて、
逃亡生活を送った野々宮希和子。

その希和子によって薫と名付けられた子供、
3年半後、希和子が逮捕されたことにより
実の親の元に戻される。

そして名前は薫から恵理菜となる。
成長し大学生となった秋山恵理菜。
恵理菜は不倫相手の子を身ごもってしまう。

1章、2章と構成されています。
1章は希和子と薫の逃亡生活
読んでいてハラハラさせる展開です。

2章では薫から恵理菜となって、
実の親の元で成長した女性を描いています。

誘拐という犯罪行為でありながら、
惜しみない愛情で、
全てを捨てた引き替えである、
小さな命を守り、
はかない基盤の上に立ちながらも、
今日、明日、一日でも長く
薫といっしょにいられますようにと、
心の中で祈り続ける。

薫さえいればそれだけでいい。
薫と出会い薫といっしょに、
生活することによって、
いっぱいの幸福を感じる希和子。

ラストの希和子と、
薫が引き離されるシーンは
希和子の母親としての、
あふれる愛情の強さが表出されていて
心が揺さぶられました。
思わず涙が…

男のダメさ、
道に背いた許されない行為、
これは犯罪なんだということに、
モヤモヤ感も残りましたが…

逃亡先の希和子の周囲の人物は温かく、
小豆島の美しい景色は心が和みます。

生き生きと描かれた主人公の揺れる心。
実の母ではなくても、
子供に対する母親としての、
愛情の深さには感動しました。







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金のゆりかご (北川 歩実)

2011-01-31 | 本 か行(作家)

脳デザインプログラムによって
天才を作り出すという「金のゆりかご」。
その「金のゆりかご」により、
精神に異常をきたしたという
子供たちが…

物語の主人公、野上雄貴に、
GCS幼児教育センターの、
社長より就職の誘いが、
そんな中、GCSを調べていた、
フリーライターから
過去にGCSで起こった事件を聞かされる。
野上は自分の過去に関係する
事柄を知り、調べることになる

野上雄貴は自分が子供の頃、
GCS幼児教育センター(金のゆりかご)で
「天才」になるための、
教育を受けたものの挫折、
今はタクシー運転手となっている。

彼はGCS幼児教育センターに対し
不信感を持っている。

想像を超えた二転三転する展開は、
とても面白く楽しめました。

でも読み終えてから考えてみると
なんか納得のいかない所も
多々あります。

ページ数も多く、
細切れの時間に読んでいたので
読み終えるまでに、
かなりの日数を要しました。
なので記憶力が曖昧になって
思い違いもあるとは思いますが…

野上雄貴の現在の奥さんは
なんだかあっさり置いてけぼり、
いつのまにか心の中には
過去に関係した女性、
梨佳が大部分を占めています。

守君とは双子の篤志も、
ネタばれになるので
書けませんが、
うつろな視線、捻れた口元など、
見た目まで…?

最終的には天才同士の子供の
力量を比べるだけなの?
梓と秀人も中途半端な扱い。

この人達、結局なにか解決策を、
得られたのでしょうか?

自分本位の親たち、
子供達にも共感できる人達は、
いなかったです。

登場人物に心惹かれる人間が
一人も現れませんでした。

でも着眼点は面白く
ころころ変わる先の見えない展開、
時間つぶしには結構いい小説でした。



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ジーン・ワルツ (海堂 尊)

2010-06-20 | 本 か行(作家)

クール・ウィッチ(冷徹な魔女)と呼ばれる
産婦人科医・曾根崎理恵が主人公の物語。

理恵は顕微鏡下で行う、
人工授精分野での専門家。

理恵が週1で勤務する、
マリアクリニックという名の産婦人科医院。
その彼女のところに診察にくる
それぞれ事情をかかえた、
五人の妊婦が絡みます。

先輩である清川医師、
彼は理恵が代理母出産に
関わったとという噂を耳にし、
真実を知るため動く。

今回の作品、
崖っぷちの産婦人科の、
医療行政に対する、
問題を提起しながら
曾根崎理恵の信念を貫くストーリー。

理想とする医療を求めながらも
行政、医局の妨害に遭遇する理恵。

今の医療行政に対する問題を
理恵が代弁しているような感じ。
メッセージ性が感じ取られる作品です。

赤ちゃんポスト、代理母、
ヒトの生命の操作、
崩壊した地方医療など、
現代の産婦人科医療の状況に対する、
理恵の怒り、焦燥。

クールで強い理恵、彼女の起こす
倫理観を超えた、
ありえない行動。

大胆不敵、まさに魔女!

映画化されるそうです。
菅野美穂が主役ということです。
ちょっとイメージが違っていました。

映画化のことを読書中は、
知らずによかったです。


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夕暴雨―東京湾臨海署安積班 (今野 敏)

2010-06-05 | 本 か行(作家)
TBSドラマ「ハンチョウ〜神南署安積班」で、
もうおなじみになった、
佐々木蔵之助演じる
「ハンチョウ」シリーズの
安積警部補が活躍する新作。

安積、村雨、 須田、黒木。
桜井、速水達が活躍します。
今作は長編です。

東京ビッグサイトで開催される、
巨大イベントに対しての
インターネット上に
書き込まれた爆破予告。

テレビは見ていましたが
神南署安積班の本は読んでいません。
安積班シリーズを本で読むのは、
今回が初めて。

この本では神南署から、
引っ越ししてきたという
東京湾臨海署が舞台。

爆破予告に対処する安積班、
警戒警備にあたる相良班との軋轢、
ラストまで気が抜けない展開。

組織の中での煩わしさのなかで
部下に信頼されている安積警部補、
安積も優しいまなざしで部下を見守る。
安積の心情が手に取るように
よく描かれています。
交通機動隊の速水もいい感じ。

幻のように姿を現わす装備車両。
パトレイバーの特車二課の、
巨大トレーラーの出場は
よく分かりません。
コラボの意味が不明。
特車二課が次回のドラマに登場?
謎が残ります。

爆発物を仕掛けた人物は?
ネットに書き込んだ人物は?
ラストまで目が離せません。





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真幸くあらば (小嵐 九八郎)

2010-01-16 | 本 か行(作家)
「真幸くあらば」というタイトルと、
映画化されるということに興味を持ち、
読み始めました。

タイトルの読み方は(まさきくあらば)で、
『いは代の浜松が枝を引き結び
真幸くあらばまた還り見む』
万葉集にある有間皇子が護送の旅で
詠まれたといわれる
歌から引用されています。

主人公は死刑囚の南木野淳と榊原茜。
後には、淳は養母となった、
榊原茜の姓をとって
榊原淳という名に変わります。

自ら延命の道を閉ざし、
悔いあらためる以外に
命を絶たれるに至った、
被害者二人の苦痛を、
共有することは出来ない。
そして、愛し始めた茜と、
心を通わすことはかなわないと悟り
控訴を取り下げる決断をして、
罪の償いを完成しようとする。

宗教画、自画像そして茜を、
ボールペンによってを描くことに、
喜びを見いだす。

茜に心を奪われてからは、
絶命の恐怖にいつもおびえながらも、
真逆の生の喜びを得る。

そして迫り来る、
生命の終わりを前にして、
生きたいと切望する。

外と内での秘密通信を重ねる、
二人の愛の引力の強さが、
描かれていますが、
本を読む限りではあまり心を
動かされるということはなかったです。
映画ではどうかな?

解説によると、
この物語の作者小嵐九八郎氏は
新左翼の元活動家で
投獄の経験があるそうで、
刑務所内の事情に、
精通しているそうです。






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悪夢のエレベーター (木下半太)

2009-09-02 | 本 か行(作家)
“後頭部の痛みで目を覚ました。
思い起こせば、
エレベーターに乗っていたんだ。
そのエレベーターは停止。
密室に閉じこめられてしまった。
これは大ピンチ!!”

そこに乗っていたのは、
ヤクザ、オカマ、自殺願望の女。
浮気、犯罪、それぞれが、
秘密を抱えた人達。

3人の素性は??
密室で起こる事件。
こわーい、エレベーター内の出来事。

パニック小説かな?と思っていたら
違っていました。

閉じこめられた空間。
切迫した心理状態。
事件は起こってしまった。

それぞれの人間が面白いです。
だんだん深みにはまって、
じたばたするおかしな人達。

個々の視点から、
心の動きが書かれています。
特異なストーリーの組み立て方。

思いも寄らない結末。

一気に読めるミステリーです。

映画化されています。
10月公開予定。
内野聖陽主演。
モト冬樹、佐津川愛美が共演。

HPは→こちらです。
 

吹越満主演で舞台化もあったようです。




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海の深さを知らない者は (桐生 典子 )

2009-06-20 | 本 か行(作家)

母親の謎の死、
主人公、琶子、
老人ホームへと拉致?

図書館で偶然手にした本、
かなりの面白さでした。

琶子と、恋人修介の想いが、
順次交互していく構成で、
ストーリーが進行していきます。

琶子のメールが事件の端緒。

彼女の母親の事件に対する、
記憶の曖昧さ。
そして口が聞けなくなっている。

過去のトラウマ、背景の複雑さ。

海の深さを知らない者、
浅いだけではなく狭い自分。

嫉妬深い自分、
それを受けいることが出来ない自分の狭さ。

自分を守るために相手を非難する、
そんな悲しい防衛反応。

振幅の大きい性格。
もてあまし気味な乾いた心、
自分を制御出来ない。

とにかく主人公、琶子、
とても危なかしくって
どうにかなりそうで
目が離せないです。

物語としても
ミステリーとして読んでも
とても面白い本でした。







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