光媒の花 (集英社文庫)
『隠れ鬼』
認知症の母親と暮らす男の
とざされた過去の秘密。
『虫送り』
小学生の兄妹が
ホームレスに対して犯した罪。
『冬の蝶』
少女と少年のひそやかな約束。
隠された少女の哀しい秘密。
『春の蝶』
両親のトラブルが原因で
耳が聞こえなくなった少女。
『風媒花』
トラック運転手の青年が、
母親に抱いていた誤解。
『遠い光』
自信喪失の女性教師と、
彼女の教え子に対する想い。
以上6つの短編からなる物語。
各章ごとに違った登場人物です。
それぞれの物語がリンクしていて
連作になっています。
暗くて重い物語ですが、
静かな優しさもあるので、
読後感もよく、
穏やかな印象が残りました。
光媒の花、
風でも虫でもなく、
光が花粉を運ぶ花。
光が必要な花。
心の暗闇、
そこに当たる光、
哀しさ、暗さが支配する世界を、
優しい光が射すことによって、
花を咲かす。
その明るさに包まれ、
心の傷が癒される。
一筋の希望の光を見ました。