慈雨
主人公は警察官を定年退職した神場智則。
彼は妻の香代子と共に四国八十八ヶ所 、
遍路の旅に出る。
旅の途中、16年前捜査し、
犯人を逮捕した事件と酷似した
事件が発生したことを知り心が乱れる。
冤罪の可能性があり、
深い悔恨を神場の心に残した事件だった。
神場はかつて部下だった緒方を通じ
その事件に係わりを持つようになった。
そして過去の事件に
もう一度向き合うことを始めた。
組織の忠誠心と自らの正義。
四国巡礼と事件の経過が平行して展開。
隠蔽された事件の真実、
過去の事件の犯人の再犯の可能性に
心苛まれる警察官の心の葛藤。
どんな場面に出会っても
動揺しないいい奥さん、
いい娘に育った幸知、
部下だった緒方もいいやつ、
みんないいがつきます。
それぞれが人間味のある
魅力的な登場人物です。
過去の犯人との繋がり、冤罪かどうか
気になる物語でしたが
とにかく泣ける小説でした。
引きこまれます。感動ものでした。
いままでの困難を乗り越えてきた
明るい奥さんの同行で
物語の持つ暗さが半減されます。