はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

秋はサンマ

2007-11-05 14:52:35 | はがき随筆
 秋の声が聞こえてくるとサンマがおいしくなる。脂がのって値段も安い。
 自転車がまだ少なかったころは、道路際に七輪を持ち出して、炭火をおこし、サンマを焼いた。
 あちらの家、こちらの家から、夕焼けの赤い空にもうもうと煙が立ち、サンマの焼けた香りが町に漂う。浴衣を着た子供たちが「わーっ」と歓声を上げ跳び回る。焼けたサンマはすぐ、ちゃぶ台に運ばれて一家だんらん。
 今では「チーン」と音がすれはよいという訳でもあるまいに、何だか便利さがすさんだ地球を作り上げていくような気がする。
   鹿児島市 高野幸祐(74) 2007/11/5 毎日新聞鹿児島版掲載