風に秋の気配が漂う樋之谷の奥山を友と目指す。山芋のつるに棒を立て、つるが落ちる冬期の目印にした。倒木にキノコを発見するが食用か否か区別できずすっぱり断念。川に降りた私に、友が口に一本指を立て上流を指さす。30㍍先を100キロもあろう雄猪が威風堂々とゆっくり川を渡る。後に親の半分ほどの子供3頭が縦1列で続く。さらに小さい3頭も1列に、親の行く道を信頼しきった様子の足どり。家族を見守るようにしんがりを務める母猪。まるで私たちが木石かのように一糸乱れず粛々と渡っていった。山神の粋な計らいの余韻に浸る樋之谷の秋。
出水市 道田道範(58) 2007/11/14 毎日新聞鹿児島版掲載
出水市 道田道範(58) 2007/11/14 毎日新聞鹿児島版掲載