はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

遭遇

2007-11-14 08:20:14 | はがき随筆
 風に秋の気配が漂う樋之谷の奥山を友と目指す。山芋のつるに棒を立て、つるが落ちる冬期の目印にした。倒木にキノコを発見するが食用か否か区別できずすっぱり断念。川に降りた私に、友が口に一本指を立て上流を指さす。30㍍先を100キロもあろう雄猪が威風堂々とゆっくり川を渡る。後に親の半分ほどの子供3頭が縦1列で続く。さらに小さい3頭も1列に、親の行く道を信頼しきった様子の足どり。家族を見守るようにしんがりを務める母猪。まるで私たちが木石かのように一糸乱れず粛々と渡っていった。山神の粋な計らいの余韻に浸る樋之谷の秋。
   出水市 道田道範(58) 2007/11/14 毎日新聞鹿児島版掲載

夢の一瞬

2007-11-14 08:04:22 | はがき随筆
 もう10年の歳月が流れる。妻のパワーはすごい。陶芸にかける情熱は並大抵でない。ますます燃えさかる妻の一心。平成18年には窯も構えた。5畳半の陶芸部屋もあり制作品がいっぱい並んでいる。素人でも玄人でもないが玄人に一歩ずつ近づける意気は高い。
 始めたころは現実の姿になろうとは想像もしていなかった。ただの趣味ぐらいだろう。2.3年もたつと飽きもくるだろうと内心思っていた。
 陶芸展に何回も入賞した。来春に向けて灯はともる。一日の大半を過ごす陶芸部屋。制作への情熱、灯以上に輝く。牛の歩みのごとく一歩一歩と。
   出水市 岩田昭治(68) 2007/11/13 毎日新聞鹿児島版掲載