蒸し暑い夏の夜。「今日も何もしなかったなあ」。私はアパートの窓を開けて外を見た。
星はまたたき、雲はゆっくりと流れている。私はいつしか子供のころの夢を見ていた。
僕は小学1年生、70年も前の僕です。ゴトン、ゴトンと揺れる夜汽車の窓から田んぼの向こうに、ちらほらと家の明かりが見えて来た。
「母ちゃん、あれだよね、ばあちゃんっ家、だね?」
「違うよ、まだ着かないわ。もっとデンキが増えてからよ」
目を覚ました私はフッとため息をもらしていた。この70年で何を得て何を失ったのか。
鹿児島市 高野幸祐 2011/8/18 毎日新聞鹿児島版掲載
星はまたたき、雲はゆっくりと流れている。私はいつしか子供のころの夢を見ていた。
僕は小学1年生、70年も前の僕です。ゴトン、ゴトンと揺れる夜汽車の窓から田んぼの向こうに、ちらほらと家の明かりが見えて来た。
「母ちゃん、あれだよね、ばあちゃんっ家、だね?」
「違うよ、まだ着かないわ。もっとデンキが増えてからよ」
目を覚ました私はフッとため息をもらしていた。この70年で何を得て何を失ったのか。
鹿児島市 高野幸祐 2011/8/18 毎日新聞鹿児島版掲載