はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ぼちぼち読書

2011-08-23 14:33:42 | ペン&ぺん
 ドリトル先生は「やぶ医者」だった。
そんな説が岩波少年文庫「ドリトル先生アフリカゆき」の巻末に出てくる。児童文学者、石井桃子さんの文章に「もし無理に訳したら(ドリトル先生は)やぶ先生というような名前になるかも」との指摘がある。
 ドリトル先生のスペルは、DOLITTLE。リトル(ほんの少しだけ)ドゥー(します)。つまり、ほとんど(診察)しないヤブ医者という語感が隠されているらしい。
 むろん、そこは物語。ドリトル先生は動物の言葉をあやつって病気を治し、機知を効かせて悪い海賊から船を奪う。ほとんど何もしないという訳ではない。
 ヒュー・ロフティング氏の原作を井伏鱒二さんが訳した際、主人公の名前をローマ字読みにしたようだ。なるほど「やぶ医者先生アフリカゆき」ではタイトルとしても、締まりが悪いですよね。
   ◇
 ドリトル先生にも登場する海賊。歴史的には鹿児島の近海にも出没したらしい。
 時は1601年。中国・明の船が薩摩に到着直前、海賊に遭遇し沈められた。海賊行為を働いたのは山川に住んでいた堺の商人、伊丹屋助四郎とされる。琉球新報新書「薩摩侵攻400年 未来への羅針盤」に、そんな記述が出てくる。
 幕藩体制が確立する前の殺伐とした時代とはいえ商人が海賊行為とは。なんとも手荒なこと。しかし、そこは史実。さしもの明の船には海賊を退治するドリトル先生は乗っていなかった。
   ◇
 さて、節電の夏。クーラーの設定温度は高めにして本でも読んでみますか。あくせく焦らずに。夏休みの子どもたちも、ドゥー・リトルで、ほちぼち読書も良いかもしれません。
 毎日新聞社は今年も青少年読書感想文コンクールの作品を募集しています。どうぞ、ご応募を。
  鹿児島支局長・馬原浩  2011/8/22 毎日新聞掲載

「下流の宴」の希望

2011-08-23 06:45:06 | はがき随筆
 この新聞小説は2年前に289回載る。感動して随筆に。幸い切り抜きを残しており再読している。
 今回NHKで作品が8回放送され、小説と異なる映像シーンが残る。母親願望の3時代に人生の階段を失った主人公の寂しい横顔、珠緒さんが医学部への厳しい入学努力に拍手する。主人公が将来に一転し新しい発見を希望したい。
 玉緒さんが面接で「私は誰よりも貧乏を経験しています。医者になれたら貧しい人のために尽くす医者になります」の言葉は、今少し元気のない日本に希望の活力をくれる。
  鹿屋市 小幡晋一郎 2011/8/19 毎日新聞鹿児島版掲載