はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

「褒めて伸ばす」研究成果に納得

2013-01-06 19:21:48 | 岩国エッセイサロンより
2013年1月 5日 (土)

    山陽小野田市  会 員   河村 仁美

生理学研究所(愛知県)の定藤規弘教授らの研究グループが、運動トレーニングをした際に他人から褒められると、何もされない時より技能が高まるとの実験結果を明らかにした。教育の場などで、より効果的な褒め方を考えるきっかけとなる可能性がある。

「おばあちゃんはよく人を褒めるね」と娘が感心するくらい、私の母は実にタイミングよく、さりげなく人を褒める名人だ。ところが娘2人は、私が「だからお母さんも褒めて育てたつもり」と言うと、顔を見合わせて「全然だめじゃん」と□をそろえる。それくらい褒められた記憶がないらしい。耳が痛い話だ。

所属しているエッセーの同好会では毎年、各人にその年の活動にふさわしい表彰状と副賞を授与する。虫のいい話かもしれないが、褒められると大人でもうれしいものだ。褒めてくれる人の存在が物事を上手にすると改めて思う。
  (2013.01.05 毎日新聞「みんなの広場」掲載)岩国エッセイサロンより転載

「生命に感謝し新年を迎えたい」

2013-01-06 18:56:33 | 岩国エッセイサロンより
2012年12月29日 (土)

   岩国市  会 員   山下 治子

 年の瀬に届いたはがきは、甥からだった。「服喪中のため」と太字の後に「中央自動車道笹子トンネル崩落事故で、義妹が短い生涯を……」とあった。惨状からの救出と身元確認に手間取り、葬儀をようやく終えたとの由。親類に偶発的な不幸が襲っていたとは。ニュースをひとごとにしか捉えていなかった。

この事故で、車が押しつぶされたが、助かった人が1人いた。同じ車に乗っていて生と死を分かつその一線とは何なのだろうか。

先日、車で姑を病院に連れていく際、自分の用事もあったので少し早めに出ていつもと違う道を通った。そしたら丁字路で車がぶつかってきた。その時ふと思った。もし予定通りの時間にいつもの道を走っていたら、衝突は防げたのだろうか、と。それとも、そうなることが自分の生涯の道筋では、お決まりの設計だったのだろうか。偶然の巡り合わせを不思議と思う。

近頃は事件や事故が多すぎて、自分たちのことだけで精いっぱい。世知辛くなってしまった。今年も貯金は残らなかったけれど、事故の後遺症に苦しんでいる長男が少し回復し、家族の命は何とか守れた。

失われた命に合掌し、今ある命に感謝しながら新年を迎えたい。
   (2012.12.29 朝日新聞「声」掲載)岩国エッセイサロンより転載