
今夏、鹿児島から全国へ、世界へとニュースを発信した。先月18日に起きた桜島の爆発的噴火とドカ灰、27日のイプシロンロケットの打ち上げ延期。記事はインターネットでたちまち海外へ。支局の記者や私も国内外の友人、知人から「桜島の噴火は大丈夫か」と安否を尋ねるメールや電話が相次いで届いた。鹿児島市民、県民は過去にもっと大量の降灰を幾度も経験しており、落ち着いて対応していた。だが県外、国外の人には非常事態に映ったのかもしれない。
「3、2、1……あれ?」イプシロン打ち上げ予定の午後1時45分前、私もテレビの前で童心に帰って秒読みをした。県外から夏休みを利用して肝付町まで見学に行った人は本当に残念だった。特に子供たちには、ごう音を上げて宇宙に向かうロケットを見せてあげたかった。
私もかつて内之浦宇宙空間観測所から先代のM5などロケット打ち上げを取材したことがある。取材を重ねるうちに私もドキドキして打ち上げを待った。天に昇るロケットに「よし行け!」と手を振り、声援を送ったものだった。27日は県外ナンバーの車も多く、大勢の見学者でにぎわった。
鹿児島には種子島、肝付町とロケットの射場がある。これは全国で鹿児島県だけ。江戸時代に天体観測をした天文館は有名だ。テレビがイプシロンの打ち上げ延期を報じてくれたおかげで全国の人が肝付町を知った。これを機に「宇宙に近い県」を更にPRし「宇宙を学ぶなら、体験するなら鹿児島へ」と盛り上げていきたい。
全回、この欄で読書に触れたら「子供の頃に読んで心に残る本は?」と聞かれた。それは太宰治の「走れメロス」、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」、森鴎外の「高瀬舟」。さあ今度こそ我々に雄姿を見せてくれ「飛べ、イプシロン!」。
鹿児島支局長 三嶋祐一郎 2013/9/3 毎日新聞鹿児島版掲載