はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

父が見た星空

2013-09-11 16:13:14 | はがき随筆
 4年前、父の膵臓に大きながんが見つかった。87という年齢を考慮して一切治療を受けないことにした。自宅でゆっくりと好きなように過ごした日々。死ぬ1カ月前には和室にベッドを入れ、寝起きするようになった。訪問診療を受けながら最後まで家族と生活し、私の作ったプリンを毎日口にしてくれた。
 ある日の昼下がり、ベッドでじっと天井見つめている父に母が聞いた「何見てるの?」「星」「え?」と聞き返すと「星だよ。スター」と言ったそうだ。私も星空が大好きだ。人生の最後に板張りの天井に星が見えたら、ちょっと幸せかもと思う。
  鹿児島市 種子田真理 2013/9/11 毎日新聞鹿児島版掲載

明日があるよ

2013-09-11 16:06:18 | はがき随筆
 長女に長男が生まれた。初孫だ。長女も初産で、なりたての母親として子育ての不安がまだ先行している。妻の友達がお祝いに産院を訪ねてきた。談話室で自分のめいの体験を話し、娘に励ましの言葉をかけいてた。
 隣のテーブルで若いお母さんが、大きな声で携帯電話に必死に語りかけている。どうやら「離婚届と出生届のどちらを先に出すべき」か、行政と配偶者の母に相談しているようだった。
 新米の母子がさまざまな人生のスタートを切る産院。その日のことを笑い話で語れる日が早く来ることを願って「明日があるよ」とエールを送りたい。
  鹿児島市 高橋誠 2013/9/10 毎日新聞鹿児島版掲載

親の宿題

2013-09-11 16:00:53 | はがき随筆
 娘が小学校に入学して初めての夏休み。宿題がこれ程大変とは思わなかった。
 まず、自由研究。いくつかのテーマから選ばせた結果、アイスキャンディを氷と塩を使って作る実験になった。
 やる気があるのは最初だけ。すぐに飽きてしまう。欲張ってジュースをできるだけ多くし、凍らないとすぐに「飲んでいい?」。結局、私だけが必死になって完成させた。
 次に、読書感想文。長い文章を書いたことがないそうで、すぐ疲れてしまう。誘導するのも一苦労だ。「親の宿題」はまだまだ終わりそうにない。
  鹿児島市 津島友子 2013/9/7 毎日新聞鹿児島版掲載

冠水時 運転に配慮を

2013-09-11 15:57:50 | 岩国エッセイサロンより
2013年9月11日 (水)

   岩国市  会 員   片山 清勝

 大雨で膝下まで冠水すると、舗道や側溝など道の状態は全く分からない。それでも通らなければならない人や車はある。そんなとき、ひどい運転マナーの車を何台か見た。
 冠水した道路を減速せずに走り抜けると、水しぶきが車高より高く左右に飛び散る。映像的には迫力があるが、水しぶきは閉じている商店のシャッターやフェンスをたたき、大きな音を立てる。運転者は分からないのだろうか。
 さらに怖いのは、歩いていいるとき。押しのけられた 水が強い波となって襲ってくる。不意打ちなら、子どもでなくても転倒するほどの力がある。狭い道では、しぶきも波も避け切れない。
 道路冠水で自宅や職場などへの心配が先に立つのだろうか。急ぐ気持ちが気遣いを失わせるのだろうか。
 でも大方の車は、慎重に迷惑の掛からないように静かな運転をしている。それがマナーだろうし、自分の安全にもつながる。周囲ヘの配慮を保った運転を心掛けたい。
    (2013.09.11 中国新聞「広場」掲載)岩国エッセイサロンより転載