はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

不思議な夏

2013-09-23 19:19:36 | はがき随筆
 夏休み前、児童が毎朝校門の前でいろいろと見せてくれた。ダンゴ虫、カマキリ、トカゲ、カブトムシ、カミキリムシなど。
 セミの抜け殻を喜々と見せる子もいたが、今年の家のセミの抜け殻はわずか数えるほど。昨年までと、何か違った。
 立秋を過ぎても庭に違和感を覚えた。かねてはお盆にご先祖さまが乗って帰ってくると聞かされていた赤トンボが姿を見せなかった。お盆の墓地も静寂に包まれていた。
 夏休み明けに、アキアカネの初見があった。例年の蝉時雨も聞かない温暖化の進む、おかしな夏が終わろうとしている。
  いちき串木野市 新川宣史  2013/9/20 毎日新聞鹿児島版掲載

茶わん虫の歌

2013-09-23 19:12:07 | はがき随筆
 里帰りした孫にかごっま弁講座を開いた。まず、つらの名称からびんた、みん、くっ(首)くっ(口)……と教えたが首を傾げたので、あっじゃっ!「茶わん虫の歌」をと歌ってみた。
 ♪うんだもこらいけなもんやあたいげんど茶わんなんだ日に日に三度も洗るもんせばきれいなもんごわんさ 茶わんに付いた虫じゃろかい まこてげんねこっじゃ わっはっは~と♪すると、テンポが良かったのか、すぐ覚え歌い出した。
 これが契機となり、かごっま弁の良さを知ってくれたらと、ほのぼのとした気持ちになった。
  さつま町 小向井一成 2013/9/19 毎日新聞鹿児島版掲載

重宝

2013-09-23 17:46:59 | はがき随筆
 確か6月中旬、斎藤明・元毎日新聞社社長永眠の記事に、書評欄「今週の本棚」を誕生させたとあった。活字離れを問われて久しいが、字を書かなくてもキーをたたくと文字が表れる時代の代物に、書籍離れを危惧した氏の先見性に感服する。
 読書欄改革には紆余曲折があったと推察する。8月22日の「余録」に「改革には不退転の決意で」「改革を断行する困難さは国や時代を超えて共通する」に共感する。おかげで日曜版の今週の本棚で紹介される書籍評に読みたくもなりまた、読んだ気分にもなり、私は重宝している。
  出水市 宮路量温 2013/9/23 毎日新聞鹿児島版掲載

ようかん

2013-09-23 17:33:59 | はがき随筆


 お盆に息子から供え物が届いた。どっしりと重量感のあるようかんは、亡夫の好物だった。満悦した顔が浮かぶ。思えば入院中、病院食以外にこっそりとようかんとシュークリームを持っていったことがあった。
 「お父さん、どっちを食べたい?」と娘が聞くと、にこっと笑って「シュークリームにしようかな」と、ちょっと照れたような表情に思わず娘と顔を見合わせ笑った。あの日の笑顔がつい、この前のことのように思い出される。あれから2年半、今もようかんとお茶のセットでお供えしている。時にはシュークリームもいいかな。
  鹿児島市 竹之内美知子 2013/9/22 毎日新聞鹿児島版掲載

初秋

2013-09-23 17:22:05 | はがき随筆


 日の出が遅くなり、その前の朝焼けの空が美しい季節。いつのまにか蝉時雨が消えて。昼の残暑は厳しいが、朝夕の風はもう、秋のものである。庭先やあぜ道に赤い彼岸花が咲き、紫色の葛の花が風情を添えている。
 今、早朝散歩が素晴らしい。朝早く起き、朝食を済ますと、すぐ歩く。夏が終わり、冬を迎えるまでの短い秋。寂しい季節ではあるが、妙に落ち着き、何をするにもいい時季である。
 残り少なくなった人生だが、自然を大事にし、自然の美しさの中に溶け込んで生きてゆきたい。朝のひととき、そんなことを考える。
  出水市 橋口礼子 2013/9/21 毎日新聞鹿児島版掲載