はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

早期発見で治療を

2015-04-15 16:12:57 | ペン&ぺん


 12日投開票された県議選は悪い予感が的中、投票率は過去最低の48.78%だった。他県の多くの選挙も投票率が50%を割った。生活に身近な県議選、つまりは地方自治だ。選挙離れを深刻に受け止めなければならない。県内だって、川内原発やTPPに代表される農業問題、地域の過疎・高齢化など議論されるべき課題は山ほどあるはずだ。
 音楽プロデューサー、つんくさん(46)が喉頭がん治療で、声帯を摘出した報道に見入ってしまった。理由は二つあった。
 私の父も、私が子供の頃、喉頭がんを患った。声がかすれる症状が比較的早く現れたので、すぐに調べ、がんと分かった。父も当時48歳の働き盛り。事前の検査で、声帯の全摘を覚悟した。シベリア抑留経験者の父もさすがにショックだったようだ。いざ、喉を開くと声帯の全摘は免れた。術後に医師から、訓練で声が出ると聞かされた時のうれしそうな表情が忘れられない。命も声も助かった。手遅れならば、私の人生も変わっていただろう。もちろん、以前の声ではなく、かすれた声だったが、聞き取れた。
 次は、海上自衛隊鹿屋航空基地の「エアーメモリアル」前夜祭に登場した、つんくさんら「シャ乱Q」。「シングルベッド」「ズルい女」などのヒット曲で人気絶頂。1996(平成8)年5月、鹿屋に来てくれた。ステージの基地格納庫が観客で埋め尽くされたのを、今も覚えている。
 父は旧満州(現中国東北部)に渡った17歳からたばこを覚えた。吸えなかったのはシベリア抑留の4年間。結局、父は肺がんで75歳で逝った。医師は、喉頭がんも肺がんも父のがんの要因をたばこと指摘した。大好きだったから仕方がない、か。女性も乳がん、子宮がんなどが心配。つんく♂さんの快方を祈りつつ、読者の皆さんも我が子が可愛いと思うなら、早期に検診を受けてほしい。
  鹿児島支局長 三嶋祐一郎 2015/4/15 毎日新聞鹿児島版掲載

トンネルの出口

2015-04-15 16:03:14 | はがき随筆


 出水から汽車に乗り、東京で乗り継ぎ、津軽海峡を船で渡り、両親が札幌の結婚式場に来てくれた。結婚式が終わった夜、父が「みきえを連れて帰ろう」と言い、母も「出水に帰るなら今だよ」と泣きながら言った。両親のことが可哀相になり、私の心も揺らいだ。
 良き夫に恵まれ、幸せな生活が始まった。しかし、出口が遠くに見えるのにたどり着けない暗く長いトンネルを独りで歩く不思議な夢を数多く見ていた。
 両親の墓前で、幸せな家庭を築き、子供たちの巣立ちを報告した時、やっとトンネルから抜け出た気がして涙があふれた。
  札幌市 古井みきえ 2015/4/15 毎日新聞鹿児島版掲載
写真は津軽海峡

課外授業

2015-04-15 15:52:30 | はがき随筆
 早春の花が咲く紫尾の里。「泊野大好き絵画教室」で久しぶりに母校を訪れた。この地は本紙「~紫尾の山里は今~」に掲載された集落である。後輩との古里スケッチとあって、子供の頃のように心ワクワクして出掛けた。さあ「ナンゴツも楽しんでトイクンとオモシトかよ」と教室を始めた。まず目の前に広がる紫尾の風景を眺め、昔話の村と原風景の2枚を共同作業で「泊野大好き」力作が出来上がった。何気ない泊野の風景だが、ここには歴史の大きな流れがある。後輩たちには、この力作を通じて泊野を更に大好きになってほしい。
  さつま腸 小向井一成 2015/4/14 毎日新聞鹿児島版掲載