随分前に山に行った折、一株のツワを持ち帰り、庭の垣根の際に植えた。秋には黄色の花が咲き、タンポポのように綿毛を付けた種が風であちこち飛び、いつの間にか垣根の根元に株が増えた。春、株の中から薄い綿毛をまとった赤紫の茎が伸びた。柔らかいので手折り、熱湯をかけて皮を剥ぐと浅緑の茎が美しい。あくだしをして煮た味はこの時期しか味わえない山の味。足腰が弱り山歩きができなくなったが、敷地の中で取れてうれしかった。タラの芽、ウドやワラビが取れ、山道の土手はヨモギが一面、山菜の宝庫だった。山の景色が目に浮かぶ。
出水市 年神貞子 2015/4/16 毎日新聞鹿児島版掲載
出水市 年神貞子 2015/4/16 毎日新聞鹿児島版掲載