はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

登校の児童から元気

2015-12-25 07:25:34 | はがき随筆
2015年12月21日 (月)

    岩国市   会 員   片山清勝

 朝7時を少し過ぎると、登校する児童らの元気な話し声が裏通りにも響きはじめ、活気が漂う。
 最低気温が5度を下回った朝なのに、白い運動着の半袖と半ズボンの姿で登校する児童が大半だ。でも、寒そうな様子は少しも見せない。
 近所で誘い合う申し合わせなのか、上級生、下級生の混在したグループで登校する。そのまとまった様子に何か安心感を覚える。
  「おはようございます」。どの子も語尾まではっきりした、あいさつをしてくれる。一日の始まりの元気を児童からもらう。
 ほとんどの子が、ランドセルのほかに大きな袋や用具を提げている。水筒も持参していて、1年生には少し重そうに見える。 
 下校時も、元気な話し声は朝と同じ。疲れた様子は見せない。時には道草を楽しんでいる。子どもらしい姿にほっとする。
 年末年始、けがをせずに過ごし、年明けに、少したくましくなった姿を見せてほしい。   

      (2015.12.21 中国新聞「広場」掲載)岩国エッセイサロンより転載

はがき随筆11月度

2015-12-25 07:21:11 | 受賞作品
はがき随筆11月度月間賞は次の皆さんです。(敬称略)

【優秀賞】10日「トゲ」伊尻清子=出水市武本
【佳作】1日「悩み事」古井みきえ=札幌市東区
    3日「民具」下内幸一=鹿児島市紫原

 「トゲ」は、トゲの使い方が効果的です。亡くなった夫君は、たくましく荒仕事をこなす頼もしい働き手。それなのに、小さなとげが刺さっただけで、痛がって気弱な表情になる。それを針で取りだしてあげたりしたが、その夫婦の交情が未練として残り、今は心のトゲになっているという内容です。心温まると同時に、読んでいる方の心にもとげが刺さります。夫婦の情愛は不思議なものですね。
 「悩み事」は、1羽で飛来した鶴への感想です。鶴は家族で行動すると聞いていたのに、なぜ1羽できたのか。連れが事故にあったのか、家族をシベリアに残してきたのか、心配でならない。早く家族が後続することを祈るばかりという、優しさのあふれた文章です。偵察に来たのではないでしょうか。
 「民具」は、食生活から消えていく民具についての講演を聴いて驚いた。かつて使っていた道具が、ほとんど民具といわれたからだ。とくに亡き父の編んでいたようなムシロが、民具といわれたのには感無量であった。たしかに民具といわれると。歴史性を感じてしまいます。
 この他に3編を紹介します。
 若宮庸成さんの「昭和史に添えて」は、世代的には戦災のただ中に育ったのだが、幸か不幸か空襲の惨状は経験していない。その後の不戦の歴史が今やキナ臭くなってきた。平成史が昭和史同様にならないことを切望するという、共感できる内容です。
 竹之内美知子さんの「思いやりの心を」は、スーパーで高齢を見かねて、優しく荷物を運んでくれた女性がいた一方では、カートをぶつけても知らない顔の男性もいた。それぞれとはいえ、やはり思いやりの心はほしい。ほんのちょっとしたことですが……。
 馬渡浩子さんの「内省」は、新しくアイロンを買ったのに古いのばかり使っている。この癖、子どものときからで、父にケチと言われた事があった。金子みすゞの詩句「みんなちがって みんないい」を思い出し、自ら慰めているという内容です。
  鹿児島大学名誉教授 石田忠彦