はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

クリスマスツリー

2015-12-27 16:42:16 | はがき随筆
 幼い娘がたっぷり楽しんだお下がりのツリーを窓辺に置いた。点滅する光に浮かび上がる雪や星を闇に透かしてベツレヘムの馬舎を思い浮かべていた。ところが、数年前硬派で整理魔の神父が焼いてしまった。
 今年もやって来た神父に「ツリー買おうかな」と言ったら「だめっ」。堅物には太刀打ちできない。「心に飾るか」と言ったとたんに気がついた。待降節に入り心にほんのり明りがともっていたことに。イエスを待つ喜びはどこからともなく沸いてくる。ツリーの助けを借りる必要はなかったようだ。
 新婦の意図はこれだったか。
  鹿屋市 伊地知咲子 2015/12/27 毎日新聞鹿児島版掲載

タブレット

2015-12-27 16:41:41 | はがき随筆
 タブレットPCに指で触れると、社会の情報が画面に表れる。有益なものから無駄なものまで。書き込みもできる。
 小中学生の頃、板塀で囲まれた場所が多かった。そこに貼られたポスターやビラ。映画ポスター、店の売り出し、求人、商品宣伝、犯人捜査から政治主張、迷い犬捜しもあった。サイズも色合いも不統一のまま並び、白墨のいたずら書きも。大人の社会への好奇心をかきたてるものもあった。近所のおばさんに変な目で見られないように、足早にその前を過ぎた。子供時代の板塀は、アナログタブレットだったかもしれない。
  鹿児島市 高橋誠 2015/12/26 毎日新聞鹿児島版掲載

予知能力猫?

2015-12-27 16:25:47 | はがき随筆
 3歳になった猫のイー君は予知能力を身につけたのかも。これまでは雨の日も外で用を足し、前足を泥だらけにして帰ってきていたのだが、朝から雨の日のこと、家の中のトイレで大きい方を済ましたのに、外に出ると騒ぎ出したのだ。取りあえずは出してやったのだが、正午近くになったらなんと晴れてきたのである。
 そういえば、先日家で寝ていたので珍しいことがあるものだとみていたら、そのうちに雨が降り出したことがあった。降っていても出たらやみ、出なかったら降り出す……。イークンは予知能力猫になった!
  西之表市 武田静瞭 2015/12/25 毎日新聞鹿児島版掲載