はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

文化祭

2015-12-24 22:57:56 | はがき随筆
 加治木町錦江地区の第8回文化祭が開催された。書道、絵画、手芸、工作、陶芸……。臨書「花は霧島、たばこは国分、燃えて上がるはおはらはあ桜島」。92歳の作品には感銘を受けた。高齢者の作品は年輪が加わり、神様のたまもの。小中学生の小論文も絵画も、手芸、縫物も丹精込めた
傑作だ。
 私も「はがき随筆」を展示した。地区長から「文化祭の模様を公開してください」と依頼された。地区の皆さんはベテランぞろいで日常の暮らしで熱心な方ばかりのよう。地区の宣伝と区民の健康、繁栄を祈り「はがき随筆」投稿もよろしく!
  加治木町 堀美代子 2015/12/24 毎日新聞鹿児島版掲載

携帯電話

2015-12-24 22:49:10 | はがき随筆
 携帯(ガラケー)スマホ、今では必需品となっています。私も70歳を過ぎて、必要にせまられもつようになり、離れて暮らす子や孫たちとメールするようになりました。現在3台目ですが、買える度に性能もよくなり、生来不器用ときているのでいつもあたふた。販売店に聞くのも面倒で説明書を読むのですが、肝心なところを見つけ出すのに苦労しています。小学生が簡単に使っているのに、年だけ重ねて現代社会についていけず、残念です。説明書は丁寧に書いたのでしょうが、大概電気製品の説明書を読み
こなすのが、老人には難しいです。
  鹿児島市 津田康子 2015/12/22 毎日新聞鹿児島版掲載

錦繡の秋

2015-12-24 22:36:13 | はがき随筆


 晴天が続き、観光バスで九重の大吊橋に行った。車窓から沿道の紅葉に感嘆の声をあげ、遠く涅槃像の阿蘇の五岳、綿毛になったススキの草原は、普段家の中ばかりの私には感動の連続だった。大吊橋が紅葉の中に銀色に光って見えたとき、一枚の絵になって脳裏に残った。高さ173㍍、長さ390㍍の日本一の橋、渓谷を挟んだ山は赤、黄、緑に彩られ、遠くまで続いた。渡る橋の揺れを忘れるほどの美しさ。眼下は紅葉した葉が日を受けて更にその色を増した。人は大吊橋を「天の散歩道」と言う。錦繡に輝いた山、素晴らしい秋の一日だった。
  出水市 年神貞子 2015/12/21 毎日新聞鹿児島版掲載

孫の努力

2015-12-24 22:23:46 | はがき随筆
 小学2年生の孫が自転車に乗れないと知った。練習しない理由を聞くと、転ぶのが怖い、ママの後ろに乗れる、と意に介さない。末っ子の性分と思いつつ「小さい子も乗れるのに、じいじは悔しい」と諭す。すると「手を離さないでよ」と孫は条件をつけ、やる気になった。
 中学校の校庭で実技。ゆっくりでも、バランスがとれると倒れないと手本を見せる。特訓開始。何回も倒れ、転び、泣きべそをかく姿に私の心が折れそうで、中止しようと思ったとき、手を離した。すいすい前進した。乗れた。汗で汚れた笑顔が誇らしく、思わず抱きしめた。
  出水市 宮路量温 2015/12/20 毎日新聞鹿児島版掲載

耐えるしかない

2015-12-24 22:17:11 | はがき随筆
 2日続きのゴルフコンペを5日後に控えて、ひどい腰痛に襲われた。家内は辞退しろと言うが、諦めるわけにはいかない。すがる思いで病院へ行く。医師に事情を訴え懇願するしかない。生まれて初めて腰に注射をされた。シップとの相乗効果もあったのか、翌朝は痛みが半減。家内を安心させるべく早朝散歩へ。そして、好天に恵まれた晩秋の2日間、心ゆくまでゴルフを楽しむ。しかし今度は、右ひじに激痛が走る。箸を口に運ぶのもままならず、歯磨き、ひげそり、ボタン掛けなど苦痛で顔がゆがむ。だが、この顔を家内に見せるわけにはいかない。
  志布志市 若宮庸成 2015/12/19 毎日新聞鹿児島版掲載

刎頚の交わり

2015-12-24 22:10:20 | はがき随筆
 昭和三十三、四年ごろだっただろうか、世の中随分落ち着いて、食料も不自由なくなっていた。家族そろって夕食をとっていたとき、かねて厳しい父が大粒の涙を流し「禎二兄が死んだ」と言って涙と共に飯をかき込んだ。
 終戦前後、米は厳しい統制下におかれた。禎二おじは米の配給所を営んでいた。父はそこから闇米を得ていたようだった。私も運んだことがあった。これは米の横流しであり、露見すれば2人の破滅は必至だった。偶然出てきた二人の写真をみて、これこそ刎頚の交わりだったんだと思うことであった。
  鹿児島市 野崎正昭 2015/12/18 毎日新聞鹿児島版掲載

我が家のウナギ

2015-12-24 21:55:25 | はがき随筆


 ウナギの生臭さがイヤで外食はしない。が、生意気にも自分で調理したものは食べるのだ。
 「ウナギ好きの父ちゃんにウナ丼を作って!」。15歳の夏、病で寝たきりの母が言う。料理番の私は母の指示通りに初めて白焼きのウナギを調理した。それは臭みが消える調理法だった。
 妻の入院で娘二人が帰って来た。「ウナギを食べるか?」「あれっ、お父さん大丈夫?」「うん、ばあちゃん流ならね」。家を徹底清掃した2人に奮発してやりたかった。「おいしーい! どうやったの?」。かくて母の口伝を全て伝えた。歴史とはいとおしいものだ、と思う。
  出水市 中島征士 2015/12/17 毎日新聞鹿児島版掲載

さよなら快さん

2015-12-24 21:43:52 | はがき随筆
 夜、眠れないので、お茶をいれて椅子に座り、テレビをつけた私は、「ウソッ!」と叫んで手に持ったお茶をこぼしそうになりました。テレビにあの阿藤快さんが映っていたのです。それも元気な顔で。
 阿藤快さんは11月14日が69歳の誕生日。2日後の16日に、一人ベッドで亡くなっているのが分かったのです。
 その人がいまNHKのドクターGという番組で、あの大きな声で病気のことをしゃべっているのです。
 私は聞いてるうちに、自分もいつかはそうなるのかなあと悲しくなりました。
  鹿児島市 高野幸祐 2015/12/16 毎日新聞鹿児島版掲載

貴重な経験

2015-12-24 21:37:12 | はがき随筆
 2年ぶりにイタリアを訪問した。仕事を済ませて観光に出掛けた。駅で切符を買い、電車に乗って座った途端に違和感を覚えた。バッグを開けてみたら、切符とパスポートがない。盗まれたと理解するまで時間は要らなかった。
 警察でポリスレポートをもらい、領事館に手続きを聞き、戸籍抄本や写真、必要書類をそろえた。午前の観光をフイにした。幸い次の日はローマに移動予定で、日本大使館は近かった。セキュリティーが厳しい大使館の中まで入れたのは貴重な経験であった。親切な大使館員のおかげで予定通り帰国した。
  出水市 御領満 2015/12/15 毎日新聞鹿児島版掲載

フラダンス

2015-12-24 21:31:21 | はがき随筆
 加入している会の周年行事に余興をするらしい。参加依頼が来た。役員のほかに7名。即、踊り手に。フラダンスとのことで講師も待機ずみである。グローブのような指とアツダゴ体型では、安来節むきではあっても、フラにはむかない。「コンナヨカッタ」と悔やまれる。ところが回数が進むにつれ、寝ても起きても頭の中では曲がフル回転。あんなに長い時間練習したのにたったの3分半。アッという間で「モチットドマ」。やみつきにはならないが夢中になった。ビデオは、安来節的にもみえたが、楽しかった。
  阿久根市 的場豊子 2015/12/13 毎日新聞鹿児島版掲載

縄文の森より

2015-12-24 18:24:59 | はがき随筆
 11月21日、縄文の森で吟行句会がありました。展示館前に「親子料理教室団栗クッキー作り」の看板を目にし、そこへ行ってみました。まだ一組もみえていません。小屋のそばの広い穴に園内の倒木を薪にした木々が、赤々と燃えています。
 「縄文の根石あたため榾の燃ゆ」「縄文に思いを馳せる榾火かな」
 職員の方にいろいろ教わりました。団栗の粉が鹿児島になく、長野より取り寄せたとのこと、クッキーは根気よく30分焼く。今の電子レンジのように思えました。
  姶良市 中野勝子 2015/12/12 毎日新聞鹿児島版掲載

年賀状

2015-12-24 17:43:00 | はがき随筆
 3年前、同級生Kさんからの年賀状に、次の干支までは? と添え書きがあったのを思い出す。12年後はと問われても、女性の平均寿命だから大丈夫ろだろうと軽く受けとめていた。
 といいながらお守りに巳年の湯飲みを買い朝夕使っている。最近、Kさんが3年前乳がんの手術を受けたことを耳にした。次の干支までは?の謎が解けた。病気に向き合い、悩み苦しみ闘って強くなったKさんのおっとりした顔が目に浮かぶ。
 今年の年賀状には次の次の干支までも「せわーない」と書こう。
  薩摩川内市 田中由利子2015/12/11 毎日新聞鹿児島版掲載

平成の藤吉郎?

2015-12-24 17:34:09 | はがき随筆
 隣に住む息子のお嫁さんに「留守中に代引きが届いたらお願いします」と頼まれた。
 その日は、まさしくバケツをひっくり返したような雨。そんな中、頭からぬれた宅配便のドライバーさんが駆け込んで来た。彼はさっと上着をまくり、おなかあたりから小さな紙袋を差し出した。雨にぬれないよう気をつけて持ってきてくれたようだ。帰り際「冷蔵で保管してくださいね」とひと言。 
 紙袋の中身は、病院から届いたアトピーの軟膏。3歳の孫息子には欠かせない者。
 将来、孫に語ろう。平成の藤吉郎のことを……。
  垂水市 竹之内政子 2015/12/10 毎日新聞鹿児島版掲載

五郎丸選手

2015-12-24 17:27:15 | はがき随筆
 「サッカーは女々しい」と書いてお叱りを受けたとある男性が書いていた。ルールも知らないサッカーやラグビーだが、私もラグビー派。W杯イングランド大会は面白かった。
 男たちの肉弾戦。トライを決めるときのすざまじい形相。初めて見る光景だったが五郎丸選手の「ルーティン」。息の詰まるような静の中でグラウンドに聖なるものさえ感じた。
 五郎丸さんという珍しい、楽しくなる名前、さわやかな顔立ち。ラグビーというより、五郎丸さんのファンだ。
 4年後のW杯開催国は日本。彼の雄姿を見たいものです。
  鹿児島市 内山陽子 2015/12/9 毎日新聞鹿児島版掲載

秘湯巡りの旅

2015-12-24 17:20:35 | はがき随筆
 書棚の本の間から何かが落ちた。全国秘湯の宿のスタンプ帳だ。
 時はバブル経済が終焉に向かい、同時に50カ国を巡った私たち夫婦の世界旅にも終止符の打たれた頃。北は北海道カムイワッカの湯滝から、南は屋久島平内海中温泉まで回り尽くした。カラスの行水の私と、入浴時間1時間の妻。鼻を突くイオウの臭いと、湯気の中で触れ合う人情。そして、秘湯巡りの旅の結末が、ここ霧島(温泉引き込み)への移住へとつながる。
 今はもう、日々のひのき風呂にて感謝感謝の私たちである。
  霧島市 久野茂樹 2015/12/8 毎日新聞鹿児島版掲載