はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

おはよう

2019-08-03 10:20:27 | はがき随筆

 友達を待っているらしい高校生に「おはよう」と声をかける。少し間をおいて返ってきたのが「おはよう」。「おいおい、年長者に返すならおはようございます、じゃないのかい」と思いながら通り過ぎる。

 知人に話したら「昭和生まれとは違うんだ。平成時代は知らぬ人に声を掛けられても返事しないように、と教育されてるくらいだから」と笑われる。

 長幼の序は厳として存在すると思いたい一方で、敬語抜き、友達感覚の短いあいさつでも返ってきたのを良しとすべき時代なのかという感も。複雑な気持ちは簡単に消えそうもない。

 熊本市東区 中村弘之(83) 2019/8/3 毎日新聞鹿児島版掲載


まっかなカンナ

2019-08-03 09:43:53 | はがき随筆

 スリッパをしっかり履かずに動き、あっという間に転倒して足の親指と胸を強打。「アア、窓ガラスでなかった」とつぶやく、この一件を知人の女性に話した。「誰かに守られているネ」。別々の所でふたりにしゃべったのに同じ返し。こんなプラス思考があったなんて知らなかった。

 そう言えば深紅のカンナを朝夕ながめ、亡き父に重ねてみている。庭に何十年もあり、懐かしいのではなく心の痛みを伴って。寂しかった幼少期。まっかな大きなカンナ。守ってくれているのは誰。私には寂寥感が漂う花だと思う。

 鹿児島県鹿屋市 春のフキ子(69) 2019/8/2 毎日新聞鹿児島版掲載