叔父が昔、出世魚で縁起の良いブリの養殖業を営んでいた。ワカシ、イナダ、ワラサ、ブリ……と、成長する中で名称が変わる不思議な魚。餌のイワシの子は種子島、屋久島の近海へ捕りにいく。日々餌をやり、台風や赤潮のときは漁師が四六時中見守る。ゴムの合羽、長靴の装いで勇ましい海の男衆。漁師の叔父は手際良くブリをさばいた。まな板に乗らないほどの立派な出世魚は刺し身が一番。一切れ一切れ丁寧に包丁を入れた。目玉はレンズのように大きい。魚の王様と思って神々しくあがめた。壮大な桜島、自然と海の幸に恵まれた。感謝。
鹿児島県姶良市 堀美代子(75) 2020/3/15 毎日新聞鹿児島版掲載