はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

午前10時の映画祭

2020-03-26 18:59:26 | はがき随筆
 「午前10時の映画祭」が首都圏で始まったのは、平成22年。鹿児島で開始された頃は、土日を含め午前中に映画館に行くこと自体難しい勤務体制だった。その後は、新作映画は積極的に観るが、旧作はせいぜい数本程度。昨年4月に第10シリーズの1作目「未知との遭遇」を観たが、今回で一旦終了すると知った。できる限りもれなく観ようという気になり、パートの仕事のない日は、家事や休養より映画を優先。20世紀の名作を改めて鑑賞した。これまで観てこなかった作品も半数近くある。
 終了まであと一本。コンプリートも目前である。
 鹿児島市 本山るみ子(67) 2020/3/26 毎日新聞鹿児島版掲載

会いたいなぁ

2020-03-26 18:24:31 | はがき随筆
 「わたしが5回、あなたが4回」と夫に話しかける。東京に住む4歳の孫娘に今までに会った回数である。
 スマホの壁紙は孫の写真。起きた時と寝る前に必ず声をかける。夫は孫の動画を時々眺めては微笑んでいる。
 長女は共働きの生活に追われているようで、電話にも出ないし、ラインしても既読がつくだけ。同じ東京に住む次女が、たまに様子を伝えてくれる。
 3月に長女に2人目が生まれるという。「こんどの子には会えるかなぁ」「なかなか会えんじゃろうね」何とも切ないじいじとばあばである。
 宮崎県延岡市 渡辺比呂美(63) 2002/3/26 毎日新聞鹿児島版掲載

注意散漫

2020-03-26 16:52:40 | はがき随筆
 先日年賀はがき下2桁の当選1枚を郵便局に持参した。局員が首をかしげておられる。「どうかしましたか」の問いに「これは去年の年賀はがきですよ」との返事。エッ!返してもらって驚いた。なんと去年の干支が猛進しているではないか。去年と今年のはがきの仕分けを忘れていた。
 2月に入り新型コロナウイルス防御のため、マスクだ消毒液だ、新聞やテレビの情報だと、あわただしい日々が続いた。ウイルスパニックに陥っている自分がいて注意散漫になっていた。冷静な行動をと言い聞かせて局をあとにした。
 熊本市東区 川嶋孝子(81) 2020/3/26 毎日新聞鹿児島版掲載

里帰り

2020-03-26 16:42:11 | はがき随筆
 ……18で上京、47年。65歳で東京を捨て、里に帰って来た。
 夢にまで見た里帰り。でも思っていた里帰りと現実との間にはしっくりこない何かがあった。にぎやかだった商店街が空き地になり、見知った顔が居なくなり、山には高速道路が走り、魚釣りの子らでにぎわった川はやぶに変わり……浦島太郎になった。
 夢であった現実の里帰りから1年。現実を受け入れないといけないと、しっくり来ない心の澱を玉手箱に押し詰め、昔懐かしい記憶と重なる何かを探しながら歩いている。ある訳ないと諦めきれずに……。
 鹿児島県姶良市 近藤安則(66) 2020/3/26 毎日新聞鹿児島版掲載

息子の心にあるもの

2020-03-26 16:27:02 | はがき随筆
 今日は日曜日だ。学校の休業日が続く息子は、父が家にいることで曜日を実感したらしい。
 そんな息子に「今日は理科の授業をするか」と声をかけた。日曜日に「授業」と聞こうものなら顔をしかめるはずの息子から、「うん。いいね」と弾んだ声が帰ってきた。
 早速、ズッキーニの種を買いに出かけた。父が黒いポリポットに土を入れ、息子が人差し指で穴を空けた。一粒、一粒、願い事をしながら土を被せた。「次は、体育の授業をするぞ」と勢いづく父に、「僕には宿題があるから」と息子。息子の心にはしっかりと学校がある。
 宮崎県都城市 平田智希(44) 毎日新聞鹿児島版掲載

5年連用日記

2020-03-26 15:52:24 | はがき随筆
 1冊になった家計簿と日記をつけ始め約50年。その間の日記を読み返すことは殆どない。だが、10年前「5年連用日記」を購入し今年で2冊目が終わる。
 断然良いことは毎日記帳するたびに前年度までの今日を読むことができて、昨日の出来事のように思い出される。ひ孫たち誕生の吉報、成長していく日々の慶事。そして苦い思い出は私の2度の圧迫骨折。何とか無事に日常生活復帰、早朝散歩も継続している。大震災の恐怖は忘れがたく、現在の新型コロナウイルスはいつ終止符を打つのか。来年3冊目に入るが5年間無事に記入できるのかなあ?
 熊本市中央区 原田初枝(89) 2020/3/26 毎日新聞鹿児島版掲載