はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

50年前のハカ

2020-03-10 16:48:52 | はがき随筆
 ワールドカップ日本開催で、にわかラグビーファンが急増した。ニュージーランドチームらによる、試合前の「闘いの舞」ハカも話題になった。
 高校一年の同じクラスにラグビー部員がいた。彼は部活が始まる前にいち早くグラウンドに出て、一人奇妙な動作をしていた。私はその姿を、教室の木枠の窓越しに見ていた。ある日彼に、準備運動のような動きについて聞いた。彼はオールブラックスに憧れてラグビーを始めたことから、ハカの由来や舞うときの掛け声の意味まで一気にしゃべった。W杯を観戦しながら彼の汗の臭いまで思い出した。
 鹿児島市 高橋誠(68) 2020/3/10 毎日新聞鹿児島版掲載

炬燵

2020-03-10 16:42:03 | はがき随筆
 「ばあば、来たよ」と孫の声。いつもの様に仏壇に手を合わせたと思ったら、スポッと炬燵に潜り込んだ。顔だけ出してニンマリしている。「まるで温泉につかったお猿さんだな」と息子は笑う。孫は来るたび炬燵が欲しいなあと言う。その度に息子夫婦は首を横に振る。
 確かに炬燵は場所もとるし季節で出したりしまったり大変だ。今の時代にそぐわないのかもしれない。でも炬燵の柔らかい暖かさは他の暖房には無い優しさがある。
 春浅い今日の風はまだ冷たい。孫と私には何ともうれしい炬燵日和である。
 宮崎県延岡市 橋本京子(76) 2020/3/9 毎日新聞鹿児島版掲載