回転すし屋を出ると幼稚園児ぐらいの女の子とその母親が軒先を見上げ立ち止まっていた。
「ほら、ツバメのヒヨコだよ」とお母さんの声が聞こえた。私は「ヒナですよ」と心の中でつっこんだ。女の子は「うわあ」と口を開いて瞳をまん丸に輝かせている。お母さんは娘に目をやると表情を確かめて再び見上げた。きっと娘の心にドンピシャな言葉として「ヒヨコ」を選んだのだろうと思えた。なんてすてきなんだ。
ツバメのヒヨコとヒトのヒヨコが向き合うそのひと時に、その親はそれぞれの子育ての楽しさを語り合ったに違いない。
宮崎県都城市 平田智希(45) 2022.6.6 毎日新聞鹿児島版掲載