忘れられない味がある。学生時代、夏休みに石垣島に行った。友達2人と自転車を借りて島内一周に出発。照りつける日差しに閉口しながらも、初めての石垣島を楽しんでいた。
未舗装の道路脇に小さなパイナップルを見つけた。パイナップルを積んだ小型トラックとすれ違ったので、誤って落ちたのか。それにしては、何日かたっているようで傷み始めている。
石で割って食べた。一口頬張って、顔を見合わせた。甘くておいしくて、何とも言えない味が口に広がる。命の味と思えた。
日の紡ぐ パイナップルの味一つ
鹿児島県霧島市 秋野三歩(66) 2022.8.6 毎日新聞鹿児島版掲載