はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

古い手紙

2022-08-14 11:15:46 | はがき随筆
 古い手紙がある。少し色あせた和紙の巻紙にきれいな筆文字で書かれたその手紙は、私が結婚するときにいただいた。もう30年以上も前のものなのに捨てられずに持っている。
 すれ違ってもおかしくないご縁だった。それがずっと続いて、いつも親身になって見守ってくださった。最近、その方の生前の話を聞く機会があり、改めて手紙に目を通した。
 まるで父からのような愛情あふれるその手紙には、家庭生活における女性の義務は病気をしないこととある。いつまでも幸せを祈っていると……。
 感謝の言葉しか出てこない。
 宮崎市 高木真弓(68) 2022.8.14 毎日新聞鹿児島版掲載

2022-08-14 11:08:13 | はがき随筆
 毎日歩いている健軍川沿いの遊歩道。近所の奥さまが川沿いにいろいろの種類の花を植えておられる。先日、立ち止まりよく見ると、茂った花の中に小さなホオズキ、鳳仙花が咲いている。なつかしく、しばし足を止め、子供の頃に思いをはせた。
 ホオズキは中の種を出し、舌の上にのせ〝グワグワ〟と鳴らした。夜に鳴らすと「蛇が来るからやめなさい」とたしなめられた。鳳仙花は姉に手伝ってもらい、花をつぶして爪の上にのせ、草の葉で巻き一晩明かし、朝ピンクに染まった爪を見て、大人になった気がした。昔から爪を染める女心は変わらない。
 熊本市東区 川嶋孝子(83) 2022.8.13 毎日新聞鹿児島版掲載