はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

四季の遊び・夏

2022-08-12 10:15:36 | はがき随筆
 夏は川でミッジャビイ(水浴び)。僕たちはこば淵へ毎日泳ぎに行った。水浴びの前に草結びといういたずら遊びも。川へ通じる田の畔道は草ボーボー。その草を互いに結び合わせ、後ろから来る子が足をとられて転ぶ様子がスリル満点だった。
 水着などなかったので裸ん坊か赤へこ。いわゆる六尺ふんどしである。おおかた年上の連中が泳ぎ始めると、下の子たちはそれを見て飛び込んだり、潜ったりし、遊びの中でルールを学び覚え身につけていた。いじめなどなく、遊びだけは豊かだったこどもの頃。まだまだ懐かしい記憶がいっぱい。
 鹿児島県さつま町 小向井一成(74) 2022.8.12 毎日新聞鹿児島版掲載

よみがえる人たち

2022-08-12 09:58:41 | はがき随筆
 家の前の街灯からガチャンガチャンと音がした。「これはもしや」と近づいて見上げると、ほらやっぱりカブトムシだ。
 ようやく足元に落ちてきたところで角をつまんで捕まえた。すると、夏の匂いが鼻をすうっと通り抜けた。
 カブトムシの匂いが好きだ。幼少期の記憶がはっきりとよみがえる。夏休みには母の実家に泊まりに行ったものだ。酔っぱらって語り合う大人たちは楽しくて優しかった。
 「じいちゃん、ばあちゃん、おばちゃん、今年の夏もまた会えたね」。目を閉じればすうっとよみがえる。夏の匂いに。
 宮崎県都城市 平田智希(46) 2022.8.11 毎日新聞鹿児島版掲載

カボチャ嫌い

2022-08-12 09:47:41 | はがき随筆
 朝の食膳に南瓜のお煮付けが載っている。ふうっとため息をつく。思い出は戦争中に蘇る。
 ある日、学校から帰ると南瓜が台所にゴロゴロ。「どうしたの」と聞くと「今月の配給」と母の返事。「お米は?」「ゼロ」。一目見ただけでうらなりと分る。15個くらいあったかな。これで1か月分かと思うと力が抜けてしまった。来る日も来る日も水っぽい南瓜のスイトン。つらかった。栄養失調になってちょっとした傷も化膿した。日の丸弁当が懐かしかった。今の南瓜は栄養満点、こっくりと甘くおいしいのはよくよく知っている。でもお箸が動かない。
 熊本市中央区 増永陽(92) 2022.8.10 毎日新聞鹿児島版掲載

我が家のペット

2022-08-12 09:40:25 | はがき随筆
 動物大好き後期高齢者夫婦。今更、動物を飼うと私たちより長生きしそうで諦め気味。
 夜、ソファーでゆったりテレビを見ているとテレビの先のガラスに何やら頭をチョコっと。出たり引っ込んだり、ライトに寄ってくる虫を素早く尻をふりふり超高速でパクリ。ヤモリの親子だ。毎晩8時頃から活動開始。どこから顔を出して来るか、私たちもパズル開始。頭の体操、視力強化、散歩もさせず、餌もやらず、楽しませてくれるペットに会話も弾み、こんな楽しみ方あるんだ。
 どうぞ、どうぞ末永くパズルを解かしてください。
 鹿児島県阿久根市 的場豊子(75) 2022.8.9 毎日新聞鹿児島版掲載


国語辞典

2022-08-12 09:32:24 | はがき随筆
 いつの頃からだろう。私が国語辞典を引かなくなったのは。それは老眼になったのが一番の要因だが、スマートフォンなどをピッピッと押す生活に慣れたからだと思う。
 春休みに遠くの小学4年生の孫娘が帰ってきて宿題をしていた。小学1年生の弟と、時々ふざけながら楽しそうに国語辞典を引いている。宿題のテーマが「言葉を知れば学ぶ力も強くなりたのしくなるよ」だった。
 その国語辞典が気にいった。カラー写真やまんがの説明で文字も大きく私にピッタリだ。
 孫たちが帰った後、すぐに書店で同じ物を求めた。
 宮崎県延岡市 片寄和子(73) 2022.8.7 毎日新聞鹿児島版掲載