月間賞に柳田さん(熊本)
佳作は相場さん(熊本)、久野さん(鹿児島)、井手口さん(宮崎)
はがき随筆7月度の受賞者は次の皆さんでした。(敬称略)
【月間賞】 26日「あの空の下」柳田慧子=宮崎県延岡市
【佳作】6日「世界に一つの本」相場和子=熊本県八代市
14日「合歓の花」久野茂樹=鹿児島県霧島市
16日「夕暮れの畑道で」井手口あけみ=宮崎県高鍋町
今年の梅雨は例年になく早く明けた。九州南部では18日早いとか、その反動か豪雨被害や、これもまた観測開始以降で最悪の熱波に見舞われる猛烈な暑さが続いている。世界情勢はいまだ安定せずロシアとウクライナの戦闘は激化。
柳田さんの「あの空の下」はソ連崩壊4年後の初夏、ロシア上空を見下ろした旅の感想をつづって投稿。灰色に覆われたロシアの大地の恵み豊かで長大な川。「すごい」。おおらかに流れていた川の姿から果てしの無い戦闘を憂う。時は過ぎ行き、窓から見たあの空の下の国境を思う慧子さん。川が曲を描いて流れていたロシアの大地に平和が来ますようにと私たちの祈りも届けたい。
相場さんの「世界に一つの本」不思議な本のご紹介でした。その本には心というペンで虹色七色を使い毎日書き上げるのだそうです。心次第のペンは走るように書けたり、涙雨で書けない時もあるのだそうですが夢いっばいの本にしたいと。和子さんの心に神様の手が動き始めると今日のページに人生が記録されます。あなたの今は虹色に輝いていますね。
久野さんの「合歓の花」。細かい葉が鳥の羽のように付き、夜には折りたたんで垂れ、まるで眠ったかのよう。万葉の時代や江戸の時代にも人々は和歌や俳句に合歓の花を詠んだのですね。茂樹さん、あなたの随筆から私も「合歓の花」を想いだしました。英語では「ペルシャの絹の木」と言っていました。幼い頃行ったこともないペルシャ帝国のペルシャ猫の柔らかな毛を想像していました。甘美な白日夢の世界をさまようことになりました。
井出口さんの大声の挨拶から始まる「夕暮れの畑道で」のやりとり。春の庭を彩ったポピーの苗を頂いたお礼を伝えに行った時のお相手は畠での作業中だったらしく、あけみさんの声が届かない。近づいてこられての再会。ハスガラを鎌で切り「みそ汁に」と持たせたり、摘んだばかりの旬のブルーベリーも手のひらに頂いたりと、ゆったりと過ごすことの確かさに気づいた夕暮れのワンシーン。
7月の投稿では「はがき随筆」でつながっている読者の話題を楽しみました。熊本の今福さんの「新聞の良さ」、黒田さんの「90歳の宝もの」、宮崎の「始まりは」の矢野さん、貞原さんの「誕生会」。
言葉をつないで絆を紡ぐ良さを再確認しました。
日本ペンクラブ会員 興梠マリア