はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

「最期の朝」

2010-06-19 14:52:45 | 岩国エッセイサロンより
   岩国市  会 員   片山 清勝

 ご主人様のウオーキングに合わせて朝3時50分にセットされている目覚まし時計。その中で働き続けて何年になるだろうか。少し前から針を進める力が弱くなり、ベルを鳴らそうとすると息苦しい。

 今朝はかすかな音でやっと「リリリ……」と鳴らしたが、30分遅れだった。ご主人様のウオーキング出発を遅らせてしまった。ご主入様は「いよいよ、替えどきか」と力の衰えに気づいてくれた。狭い住み家から私たちを取り出したご主入様。「ご苦労さん」と慰労してくれ、回収袋に入れてくれた。私たちは、務めを終えた乾電池。
  (2010.06.16 毎日新聞「はがき随筆」掲載)
岩国エッセイサロンより転載

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