はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

笑いたいけど

2010-06-19 14:42:07 | 女の気持ち/男の気持ち
 人の体と心はつながっていて、一つのものだと感じるこのごろ。そんなとき、何気なくつけたテレビで「心から笑うことは体にとても良いし、おかしくなければ本当に笑わなくても、まねをするだけでも良い」と言っていた。笑うまねをすると、体が勘違いをするらしい。
 私は早速、1日に1度心から笑おうと決心した。そんなことはたやすいこと、何を今さら。けれど一日中、1度も笑うことなく、気が付くと床の中にいたという日が続く。笑うことがどんなに難しいことかと改めて感じた。
 高齢者の方の特徴をつかみ、見事に表現して笑わせるAさんのビデオテープを見て思いきり笑った。けれど2度目に見た時はもうおかしくなかった。
 仕方ないので作り笑いをすることにした。それも家族のいる所でするのは恥ずかしくてはばかれる。誰もいない1人の部屋に行き、テレビで見た防府市の伝統あるお笑い講よろしく、大声で作り笑いをした。けれど1人でするそれはとてもバカらしく、ただむなしかった。
 今日も夫が庭に出たので、大声で作り笑いをした。寝ていたチワワのチビが、何事かと跳び起きて、私の顔をまじまじと見ていたが、また横になって大きなため息を1つした。
 その様子がとてもおかしくて、心から大笑いした。
 今日はやっと笑えたなあ。
 山口市 平井フサヱ(73)
2010/6/15 毎日新聞の気持ち欄掲載

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