はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

はがき随筆9月度月間賞

2009-10-28 15:23:11 | 受賞作品
 はがき随筆9月度の入選作品が決まりました。
▽鹿屋市寿5、田中京子さん(58)の「ほめ言葉」(30日)
▽指宿市山川岡児ヶ水、宮田律子さん(75)の「エアメール」(27日)
▽出水市明神町、清水昌子さん(56)の「風をかわして」(24日)
の三点です。

 9月は「風」の特集があり、たくさんの投稿を読ませていただきました。また最近、西部版の「男の気持ち・女の気持ち」の欄でも鹿児島の方の投稿を見かけます。みなさんのご活躍を喜ばしく思います。
 田中さんの「ほめ言葉」は、入院中の病室へ、ご主人と見舞いに来てくれる「愛犬ひかり」に、携帯でほめてあげたら、しっぽを振って反応したという、ほほ笑ましい文章です。何よりもケータイと犬との取り合わせが奇抜です。
 宮田さんの「エアメール」は、ユングフラウの絶景に「神々の存在」を感じ、その感激を絵ハガキで、自分あてに投かんしたという内容です。ところが帰宅すると相変わらずの日常。この両者の対比に人生を考えさせられます。
 清水さんの「風をかわして」には、八代市に墓参りに行って無事帰ってきた。ところが、その直後の高速道路で死亡事故があったことを新聞で知り驚いていると、熊本県警から問い合わせの電話がかかるというオマケまでついた。「まがまがしい風」をかわしてほっとしたという内容です。豊富な内容がよくまとめられています。
 以上が優秀作です。他にも優れたものがたくさんありましたので数編を紹介します。
 年神貞子さんの「バームクーヘン」(14日)は野外活動の時、このお菓子を竹に巻いて焼いて作ったという、ワイルドな驚きの体験談です。本山るみ子さんの「せみしぐれ」(1日)は、老母の見舞いとその死、葬儀、そして十三回忌と、それらの記憶がせみしぐれとともによみがえってくるという内容です。西尾フミ子さんの「私の秋」(20目)は、42年前の9月12日に男の子を出産した。その時、エアコンもない病室に一陣の秋の涼風が吹きこみ、元気な産声を聞いた。私だけの秋、がいいですね。戸高昭子さんの「風は私の絵本」(21日)は、自分の生活の中に、いろいろの風が懐かしい絵本のように訪れてくれるという詩的な文章です。

(日本近代文学会評議員、
鹿児島大名誉教授・石田忠彦)

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