はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

本物の魅力

2010-04-05 20:54:49 | かごんま便り
ある地場企業の幹部からこんな話を聞いた。

 業界団体の大会が開かれた時のこと。全国から訪れる人たちを鹿児島自慢の品でもてなそうという話になり、社長命令が下った。「芋焼酎の『3M』を取りそろえろ」。都会では目玉が飛び出るような高値がつくプレミアム焼酎ばかりで、地元でもおいそれとは手に入らない。八方手を尽くして何とか確保し、お陰で社長は鼻高々。自分も面目を保ったのだ、と。

 くだんの銘柄は私もうまいと思うし、特に県外の人々は大いに喜ぶだろうから、幹部氏のお手柄?にケチをつける気は毛頭ない。でも当地にはうまい焼酎がごまんとある。当然ながら価格に比例して味の序列がある訳では決してない。つかの間の旅人たちに「鹿児島には皆さんの知らない、うまい焼酎がこんなにたくさんあるんですよ」とアピールする手もあったのではないかと思った。

 左党ゆえ、つい酒の話になったが、鹿児島には誇るべき素材がいろいろある。ダイナミックで豊かな自然、時代を彩った歴史遺産の数々、極上の食べ物などなど。原口泉・鹿児島大教授は「洗練こそされていないが素材が魅力の『雑穀文化』」と評した。県のポスターのうたい文句「本物。鹿児島県」にも同じ思いが込められているはずだ。

 ただ、せっかくの優れたお宝が地元以外では余り認知されていない気がする。「鹿児島はPR下手」などと愚痴を言っても始まらない。本物はその良さが知られてこそ本物たりうる。本物の魅力をどんどん発信できる鹿児島であってほしい。

長いようで短かった2年9ヵ月。4月1日付で福岡本部に異動することになりました。まだまだ見たいもの知りたいものが山ほどある鹿児島を、後ろ髪を引かれる思いで去ります。後任は西部本社整理部デスクの馬原浩記者です。どうか引き続きご愛読ください。

鹿児島支局長 平山千里 2010/3/29 毎日新聞掲載


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