はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

温泉ざんまい

2010-03-03 06:38:22 | かごんま便り
 鹿児島は温泉天国だ。

 環境省の統計を見ると、全都道府県で泉源数は2位▽ゆう出量は3位▽温泉施設数は5位(うち公衆浴場は3位)――といった具合だ。

 指宿、霧島など著名な温泉地も数多いが、特にユニークなのは銭湯のほとんどが天然温泉という県都・鹿児島市。都道府県庁所在地のそこここに温泉があるのは、全国広しといえども鹿児島だけである。

 そもそも銭湯自体が多い。人口145万人を擁する福岡市でも20カ所そこそこなのに、人口60万人の鹿児島市に何と56カ所。全国的に銭湯が減少の一途にあることを思えば驚くほかない。

 多くは早朝から開いているのも私のような飲んべえにはうれしい。二日酔いの身も心も、朝風呂でさっぱりする。ちなみに都会の銭湯は夕方からの営業で、朝は日曜・祝日だけが通り相場だ。

 また大人が360円、回数券を使えば330円という値段も、全国的には安い部類である。

 県公衆浴場業環境衛生同業組合の田中秀文理事長によると、昔は市内の銭湯も沸かし湯で、どこも煙突が建っていた。昭和30年代初め、市内の銭湯は現在の倍以上あったが、温泉に切り替わり始めたのは内湯が増えて廃業が相次いだ昭和30年代終わりごろ。最初は掘ったところで本当に温泉が出るのか半信半疑だったらしいが、仲間を募って掘ったら当たった。やがて周囲も追従し、温泉が普通になり、燃料費が要らないお陰で二度のオイルショックや昨今の石油高騰も乗り越え、今に至っているという。連日の朝風呂が可能なのも、温泉の恵みによるものだ。

 良いことづくめの温泉銭湯が、県外に余り知られていないのは実にもったいない限りだ。私も赴任して驚いた一人だが、何度か当地を取材で訪れた東京在住のフリーカメラマン氏に話すと、今まで知らなかったことを大いに侮しがっていた。

鹿児島支局長 平山千里 2010/3/1 毎日新聞掲載

最新の画像もっと見る

コメントを投稿