はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

第九

2009-12-28 19:20:01 | かごんま便り
 師走とくれば、やはり「第九」である。
 ベートーベンの交響曲は日ごろから聴くが、それは1~8番の話。ミーハーな私にとって9番はあくまで12月限定だ。この時期、新旧のさまざまなCDを日替わりで聴くのが日課になっている。曲の進行に伴ってお湯割りのピッチも上がり、フィナーレの高揚感と共に浮世の雑事を忘れ、新たな元気もわいてくる。
    ◇
先日「かごしま県民第九演奏会」を聴いた。実演に接したのは久しぶりだったが「音楽とビールは生に限る」というのを改めて実感した。

 県の文化企画として85年に始まり、今回は節目の25回目。毎夏に合唱団の参加者を募り、10月から十数回の練習を重ねて本番を迎える。今年は83歳から高校生まで326人が宝山ホールの舞台に立った。うち2割強は初参加。「日本での思い出づくりに」と自宅にホームステイ中の留学生を誘って参加した女性や「合唱は中学の文化祭以来、四十数年ぶりです」という男性もいたという。

 一方で、10回目以上となる常連組は2割弱、皆勧賞も5人を数えた。その1人でリーダーの田鍋恒治さん(65)は「生の音楽に触れる感動を一人でも多くの県民に伝えたい」と話す。「初参加の人に聞くと『前から参加したいと思い、やっと実現した』という声が少なくない。だから、この先も続けなければ」とも。

 大都市では暮れの第九演奏会は目白押しで「猫もしゃくしも」といった風潮に批判もある。だが地方は事情が違う。「県民第九」がなければ、鹿児島でこの曲を生で聴く機会は皆無に近いだろう。また地方の第九演奏会はアマチュア合唱団がプロのオーケストラを招く例も多いが「県民第九」はオケも地元のアマ(鹿児島交響楽団)だ。この ″地産地消″がいい。

 演奏会の模様は30日午後4時から、MBCテレビで放映される。

鹿児島支局長 平山千里 2009/12/28 毎日新聞掲載

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