はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ネズン退治

2011-11-01 23:26:35 | ペン&ぺん
 新聞を編集していると文字数の制限上、どうしても文章を削ることがある。このコラムしかり。削りすぎてニュアンスが伝わらぬことも。
 先日、27日に鹿児島面に掲載した「さつま懐かしの四季」も、その一例だ。行数制限から粗筋の紹介のようになり、味わいを失った。
 そこで執筆者、小向井一成さんのお許しを得て、とんち話の加筆修正版を以下、書いてみる。
   ◇
 昔、一人暮らしのばあさんが悪さするネズン(ねずみ)に困っていた。天井にある米俵をメバン(毎晩)いたずらするのだ。
 ある日、隣のじいさんがやって来たので「マコテ(誠に)困っちょっが、なあ~ないかアッナ(何か解決法はあるか)」と相談した。すると、隣のじいさんは一瞬、考え込んだが「アッド(あるぞ)。ユッカスッ(教える)でな、まあ~、ソツ(焼酎)イッペ(1杯)」と言う。
 ばあさんがソツとシオケ(つまみ)を用意すると、じいさんは「こら、よか」と飲み出す。「もうイッペ」「もイッペ」と杯は進む。だが、ネズンの話は一向に出てこない。
 隣のじいさんは、赤ら顔のヨカアンベ(よい具合)になったところで、「もう、こげな時間じゃあ」と腰を上げかけた。ばあさんは驚き「ネズン捕(と)いの話はどげん?」と叫んだ。
 隣のじいさんは「あっ、じゃったなぁ」と、ひざをたたき「そやな、ネコを飼え」と一言。それだけ言い残して帰ってしまった。ばあさんは、あまりのことに、あきれ果て大笑いしたとさ。
   ◇
 この話、聞き手が「じいさん、焼酎を飲みたかっただけか」と感じるように中盤を引っ張ることが必要。さらに欲を言えば、薩摩弁をまじえた語りなら、とんちが、マコテひき立つと思えるが、ドゲンだろうか。
  鹿児島支局長 馬原浩  2011/10/31 毎日新聞掲載

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