口之永良部島の新岳噴火から今日で11日。今も住民の全島避難は続いている。避難先での暮らしはこれからどうなっていくのか。噴火への警戒はいつまで続くのか。先行きが見通せない中で、住民の不安も大きいだろう。地元の屋久島町も懸命に支援の在り方を模索しているようだ。避難の長期化を視野に入れて、課題を一つ一つ解決していくしかないようにみえる。
恥ずかしながら私自身、口之永良部での噴火というものを全く考えたこともなく、備えも何もなかった。噴火前日は県警を舞台にした志布志事件で警察、検察の控訴断念という大きな出来事を記事で紹介したばかり。翌日、支局でゆっくりテレビを見ていたら、午前10時ごろから突然、噴火の映像が流れ始めた。慌てて支局の記者を隣の屋久島に向かわせ、その後は東京や大阪、福岡などから屋久島に向かう応援記者の高速船の予約や宿泊先、レンタカーの手配に追われた。
内輪の話で恐縮だが、着の身着のまま屋久島に渡った記者の一部は宿の風呂場で下着を洗濯しドライヤで乾かしながら取材を続けた。後日、シャツや下着を買って鹿児島から現地に送ったのだが、派遣期間に限りのある記者の場合はまだ恵まれている。命の危険にさらされながら荷物をまとめる時間もなく島を後にした住民のたいへんさはいかばかりだろう。毎日新聞が実施したアンケートでも「衣類など必要なものがない」といった回答があった。今後の住む場所や仕事、健康問題など課題は山積と言っていいと思う。
それにしても犠牲者が一人も出なかったことは特筆すべきで、中でも印象に残ったのは学校の対応だ。今回、避難を決めてから全員が学校を後にするまで3分しかかからなかったという。教職員は、子どもの命を守るというなにより大事な仕事を無事果たした。素晴らしいことだと思う。
鹿児島支局長 西貴晴 2015/6/8 毎日新聞鹿児島版掲載
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