2011年3月30日 (水)
岩国市 会 員 吉岡 賢一
窓の向こうに瀬戸内海が広がる。その見晴らしを半分さえぎるように小高い雑木林が横たわる。その一角に初めて、アオサギが巣を架け、3羽のヒナを育てたのが一昨年の春。
昨年は4組のつがいがやってきて9羽のヒナを育てた。
今年もまた2月下旬に大勢でやってきた。すでに数組のカップルが出来上がっている様子で、巣作りを始めている。
地上10㍍の、ヒョロヒョロと伸びた木の最上部は、風が吹けば右に左に大きく揺れて巣が落ちそうになる。雨や日照りを避けるすべもない。
「何故あんな危なっかしいところに巣を架けるのか」毎年ハラハラする。
彼らにとっては、近くに海があり餌は豊富。産卵・子育てには天敵を避ける高い木の上が最適。子孫繁栄の条件が整っているのかもしれない。
新しい命を育む野生の懸命な営みを眺めていると、こちらも元気が出てくる。窓の向こうに、とってもぜいたくな時間が流れる。
さて今年は何羽のヒナが、元気な巣立ちを迎えるのだろう。
(2011.03.30 朝日新聞「声;特集『 私のぜいたく』」掲載)
岩国エッセイサロンより転載
写真は吉岡さん提供
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