はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

はがき随筆3月度

2016-04-27 20:41:46 | 受賞作品

 はがき随筆の3月度月間賞は次の皆さんです。(敬称略)
 【優秀作】18日「脳梗塞の友」小村忍=出水市大野原町
 【佳作】8日「『仮免許証』まで」萩原裕子=鹿児島市中央町
▽12日「町工場の手業」高橋誠=鹿児島市魚見町

 「脳梗塞の友」は、仲の良い友人が、2人までも脳梗塞で後遺症が残ってしまった。お一人は、自分の脚を見ながら、これを使うことはもうないと呟かれた。もう一人は、山歩きなどとが好きだったのに、もう二度と行けないと嘆かれた。どうしてやることもできない自分も、同様に悲しかったという内容です。寂寥の感があります。老、病、当人も傍らにいる者も悲しいですね。
 「『仮免許証』まで」は、娘さんとの2人暮らしのなかで、娘さんが大学の研修で外国へ。やがて1人暮らしになる予感を感じ、1人暮らしの予行演習をなさっている様子が書かれています。その不安が十分感じられる文章ですが、それを「1人暮らし仮免許証」の取得に励んでいると、ユーモラスに描かれたところに好感をもちました。
 「町工場の手業」は、テレビドラマで、下町の中小企業で働く女性工員の手仕事を見て、自分の学生時代のアルバイトを懐かしく思い出したという内容です。そこでは、竹ベラを使って銅線のコイル巻きをしていたが、今ではその会社は先進ロボット会社として注目を浴びている。まさしく今昔の感です。
 この他に3編を紹介します。
堀之内泉さんの「園内便」は、幼稚園の年長さんの間で園内便がはやっているというほほ笑ましい内容です。暴れん坊の子が、妙に感傷的な手紙を書いているのも、むしろ驚きであって、幼児たちの世界を見たようだという内容です。
 年神貞子さんの「はがき随筆」は、80歳の誕生日を記念に、今までの「はがき随筆」を文集にしようと思い立ち、贈る相手のことを考えて太目の活字にしようなどと計画されている、楽しそうなご様子が目に浮かぶ文章です。
 古井みきえさんの「二つ釜の夫婦」は、一般には、一つ釜の飯を食ったとは仲の良い関係をいうのですが、夫婦で、食事も会計も部屋も別々なのに、子供にも孫にも恵まれて、友好的に暮らしておいでのカップルの紹介です。人それぞれといったところでしょうか。
  鹿児島大学名誉教授 石田忠彦

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