はがき随筆・鹿児島

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球技と王座

2011-08-12 15:02:56 | ペン&ぺん

 なでしこジャパンに国民栄誉賞。それが最近の明るいニュースだった。心躍る話題は紙面上、貴重に思える。
 何度もリードされ、追いついた末の世界一。たかが球技とはいえ、されど球技。国民栄誉賞は当然だ。粘り強さ、国民的人気。贈る側の菅直人首相が、あやかろうと画策した訳ではないだろう。
 まさか。あやかれるものでもないから。
   ◇
 球技は、いつ、どこで生まれたのか。そんな疑問を浮かべながら、そのボールに触れてみた。
 直径約15㌢。天然ゴム製で重さは約3.5キロ。幼稚園児が遊ぶには重すぎる。暗褐色で見慣れない熱帯の果物のようだ。
鹿児島市城山町の黎明間で開催中のオルメカ文明展の一角にあった。紀元前1500年ごろ、メキシコ東南部に栄えた文明。その遺跡からはゴムの木の樹液から作ったボールが見つかった。球技に使われたとされるが、その球技は宗教的で儀式的なものだったかもしれない。
オルメカ文明展最大の見ものは、巨石人頭像。高さ1.8メートル。重さ4㌧を超す。耳の片方はヘルメット状のかぶり物で隠れている。この大きな顔も戦士か球技の競技者だろうと推定されているという。
   ◇
ヒスイを研いで使った斧や水路に使用したU字溝など高度な文明を感じさせる展示物の中で、もう一つ、目を引く物がある。それは、高さ1㍍弱の王座。石製で小さな人二人が台座を支えている姿が彫られ、獣の皮をかけて使ったらしい。
この王座に腰掛けて、オルメカの為政者は球技を眺め、勝者をたたえたのだろうか。
もちろん、今の権力者は球技の勝者を賞賛するだけでは成り立たない。いわずもがなの事柄を思い浮かべて、会場をあとにした。
ちなみに、オルメカ文明展は9月3日まで。

鹿児島支局長 馬原浩 2011/8/8 毎日新聞鹿児島版掲載

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