はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

はがき随筆6月度入選

2006-07-27 21:47:54 | 受賞作品
はがき随筆6月度の入選がきまりました。

△出水市高尾野町、岩田昭治さん(66)の「大きな生きがい」(1日)
△山口県光市、中田テル子さん(60)の「20歳の高校生」(12日)
△鹿児島市山田町、吉松幸夫さん(48)の「ちょい不良親父」(13日)

の3点です。

 内容が辛く苦しいことでも、読んでいて気持ちのいい文章がありますよね。書き手が、読む人の心を明るく前向きにしようと表現に気を配ったということでしょう。いいことです。
 養護学校に勤める岩田さんの「大きな生きがい」は、通学バスを迎え一人一人に声かけをする、着替え、検温、飲水、給食、排せつ、朝会、学習、そして「さようなら、またあしたね」までの1日の勤務を紹介したものですが、特別なテクニックも使わず1日の仕事を整然と並べたことと、「きょうも無事に出来たことに喜びを感じる。私自身の心の成長が楽しみと同時に大きな生き甲斐である」という結びのよさが命でしょう。かっこいい結びだというのではありません。この文章を書いた人だから、この結びは本心から出た言葉に違いないと思わせるからです。
 「20歳の高校生」の中田さんは、肺結核で高校を3年休学し苦労したのです。「6年かかって卒業したことが人生のバネになった。逆境が教師となり、息子5人の子育ても終了。元気に還暦を迎えた」と書いています。堂々たるものですね。
 吉松さんの「ちょい不良親父」、上村泉さんの「方向感覚が危ない」も、服装に自信のない吉松さんと、車庫のバック入れが下手だという上村さん、お二人ともユーモラスな文体でしゃれて明るく結びました。いいですよ。
 さて、お茶好きの吉利万里子さんの「茶の香り」、5時に散歩を始める橋口礼子さんの「初夏の朝」サッカーに熱中する息子は坊主頭が日焼けで痛いらしいが頑張っているという横山由美子さんの「一皮むけた」、ヒヤシンスの花を愛する山岡淳子さんの「遅咲き早咲き」などなど、文章のすべてが明るくいいですねえ。

(日本文学協会会員、鹿児島女子短期大学名誉教授・吉井和子)

係から
入選作品のうち1編は29日午前8時40分からMBC南日本放送ラジオで朗読されます。作者へのインタビューもあります。「二見いすずの土曜の朝は」のコーナー「朝のとっておき」です。
 はがき随筆は字数250字前後のルールを守り、かい書での投稿をお願いします。


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