はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

筍ざんまい

2009-07-05 19:46:48 | 女の気持ち/男の気持ち
 筍が好きで、毎日のように食べても飽きない。寒山竹は今が旬。果肉が厚く柔らかいので鹿児島では「大名竹」と呼ばれる。アクが少なくゆがかずにてんぷらやバーベキューにいい。梅雨鯵、春ジャガと煮ても季節の味だ。
 「一人息子に食べさせるくらいの筍は一年中とれる」と聞いたことがある。昔の人たちが自然に溶け込んで暮らしてきた様が思い浮かぶ。改めて食べられる筍を数えてみると、春先の孟宗竹から初冬の矢竹まで10種以上の筍があり、とれる時期も長く独特の調理法がある。
 珍味は「メダケ」の直火焼き。皮ごと焼き、焦げ目ができたらむいて熱々にミソを付けて食べる。「キンチク」と呼ばれるホウライ竹はお盆のころとれるので、煮そうめんの汁にする郷土料理だ。
 私の郷里には「盆釜」と言って子供たちだけで炊き込みご飯を作らせる習わしがあった。底先に石でかまどをこしらえて材料を準備し、後は子供たちが料理する。ホウライ竹の筍と新米をしょうゆの薄味で炊き、柿の葉にくるんで食べると風味も格別だった。
 息子たちが小学生のころ、この盆釜を復活させた。孟宗竹を割り、それを釜にして炊いた。生竹の甘い香りとしょうゆの焦げ目が絶妙だった。
 今朝も「また、筍の話?」と妻に言われながら、筍の調理法のうんちくを傾ける。昨日もらったハチクの千切り炒めに舌鼓を打ちながら。
  鹿児島県鹿屋市 上村 泉・68歳 2009/6/21 の気持ち掲載
写真はyushitaさん

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