はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

「五十回忌過ぎても友達」

2012-09-25 00:53:14 | 岩国エッセイサロンより
岩国市  会 員   横山 恵子

 この夏、地元の山あいにある祖父母の墓参りをした時のこと。仲良しだった幼なじみの女の子、Sちゃんを思い出した。
 
 Sちゃんは小学3年の夏休み、川で溺れて帰らぬ人になった。彼女のお母さんが、横たわる亡きがらに話しかけたり体をなでさすったりする様子を見て、つらかった。その後、道端でお母さんと会う度に「大きくなったね」と言われ、返答に困ったものだった。
 あれから何十年たったろう。私は思い切ってSちゃん宅を訪ねた。90歳で一人暮らしだというお母さんは一瞬驚いたが、すぐに懐かしそうに私を見つめ、「Sが生きていたら時々帰ってきて家の片づけをしてくれただろうに……」と話した。

一昨年に五十回忌を迎えたとのこと。私は仏壇に手を合わせ、笑顔の遺影をなでた。Sちゃんはお母さんの心の中で、生き続けているんだね。ずっと友達だよ。
 (2012.08.28 読売新聞「私の日記から」掲載)岩国エッセイサロンより転載

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