はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

「恒産」を問う

2009-06-04 13:52:43 | はがき随筆
 思想家孟子の格言「恒産なき者は恒心なし」。私の心の座標軸になっている。最近は社会の厳しい変化に揺れている。今までの有形の恒産だけでは安定しない現実に直面していると思う。これからは「無形恒産」こそ大切に思う時代が現実にある。精神的な恒産は強く自己を護り、育て向上させる。真の「恒産」は個人の人生観、経験、願望、苦節、挫折を含み伴うが、生涯の良き伴りょになる。これからの若い人達に一番必要かも知れない。私自身の恒産は小さく軽いので恥ずかしいが残りの余生の恒産を求めて行きたい。はがき随筆も私の恒産になるo 
   鹿屋市寿 小幡晋一郎(76) 2009/6/3 毎日新聞鹿児島版掲載 
  




うしろ姿

2009-06-04 13:38:03 | はがき随筆
 花に会いたくて霧島へ走る。小鳥のさえずりと新緑の中を歩くこと2時間。ミツバツツジは虫や温暖化で一足遅かった。突然おや?との声に、夫の目線の下には底が離れ小石をくわえた靴が。ウソー!と野獣の声は私。もう引き返そうと言うと靴は何とかなる、河原までいくぞと強気。新燃の鞍で昼食もそこそこに修理。今日に限ってテーピングも持たず思案の末、ストックのひもをほどき靴をしばることに。大好きな新燃から中岳へのツツジの小道をゆっくり歩いて行く……。私は最も2人らしい人生の一こまが再現されたようで笑いながら追いかけた。
  薩摩川内市 田中由利子(67) 2009/6/2 毎日新聞鹿児島版掲載
  写真はバセさん
  






投稿のススメ

2009-06-04 08:05:17 | かごんま便り
 毎日新聞地域面の人気投稿コーナー「はがき随筆」の年間ナンバーワンを選ぶ第8回毎日はがき随筆大賞発表・授賞式。郷土の代表、馬渡浩子さん(61)の「応援団」として、毎日ペンクラブ鹿児島の皆さんとともに私も北九州に乗り込んだ。

 鹿児島面で昨年、掲載された作品は387編。九州・山口全体ではおそらく4200編前後か。日の目を見ることなくボツになった作品も多々あるから、投稿数全体では相当な数に上る。各面の年間賞になるだけでも大変なのに、グランプリとなるともう想像を絶する競争率である。

 個人的には、04年の若宮庸成さん(69)以来の″頂点″をひそかに期待していた。それは残念ながら果たせなかったが、上位5傑に入ったのだから文句なしに素晴らしい。馬渡さん、本当におめでとうございました。

 近く特集紙面に掲載される入賞作はいずれ劣らぬ絶品ぞろいだ。ぜひご一読ください!

    ◇

 「はがき随筆」は71年4月、山口で誕生した。鹿児島面で始まったのは遅れて91年2月だが既に18年目に入った。

 当初の掲載規定を見ると「住所・氏名・年齢を含めて240字以内」とあり、現在の本文約250字よりやや短い。活字の大型化などに伴って体裁は微妙に変わっているが、はがき1枚を想定したと思われる基本線は、ほぼ一貫している。

 大賞審査員の直木賞作家、佐木隆三さんは講評で、はがき随筆の寸法を「般若心経より短い」と表現した。この分量で思いを伝えるのは容易ではない。だが投稿者の皆さんが「250字で収めるのは大変だが、やりがいもある」と口をそろえるように、難しさは面白さの裏返しでもある。手軽に書けそうで、実際に書いてみると意外に難しく、それでも楽しくてやめられない。そんなはがき随筆の世界に、ぜひあなたも仲間入りを!!

鹿児島支局長 平山千里

2009/6/3毎日新聞掲載

ハイドン没後200年

2009-06-02 23:21:53 | アカショウビンのつぶやき
 交響曲の父、ハイドンが亡くなって200年。その記念コンサートでモーツアルトのレクイエムから亡き夫が大好きだった「涙の日」を歌った。
 
 死期をうすうす予感していた夫は「俺の告別式はモツレクで頼むよ」と淡々と弟に話した。「まだ先の話じゃないか」と弟は言ったが、その日は数日後にやってきた。しかし、葬儀を執り行った、キリスト教会にその当時はCDプレイヤーがないことがわかり、残念ながらテープに残されていたブラームスのレクイエムで見送ることになってしまった。

 彼が好きだった作曲家は、モーツアルトとブラームス。ブラームスの室内楽は、暗い雰囲気があり、私はモーツアルトの明るさに惹かれていたが、彼はLPレコードがすり切れるくらい、若い頃からブラームスの室内楽を愛していた。でも彼の最後の願いを叶えられなかったことが、私の胸の奥にいつもひっかかっていた。

 「涙の日は、素晴らしい曲だぞ」と彼はいつも言っていたが、長いモツレクを聞かされるのを私は避けていた。独りになってから彼のCDを片っ端から聴いた。彼の言葉通り、素晴らしい曲だった。

 かれらをあわれみたまえ主よ、
 やさしきイエズスよ
 かれらに休みをあたえたまえ

 切々と歌うコーラスを聴いていると涙があふれてくる。「私もいつか、この曲を歌いたい!」と、コーラスの先生にお願いしたが、10年以上待ってもその機会はこなかった。

 ところが先日、鹿児島ハイドン協会オーケストラが、没後200年記念コンサートを、鹿屋市で開催することになり、地元合唱団と一緒に「ラクリモーサ」を歌うことになった。短い曲だけれど、初めて歌う原語のミサ曲は難しかったが、「アーメン」と歌い終わった時は涙が溢れそうだった。

 口の悪い亡夫に「これじゃモーツアルトが怒るぞ…」と言われそうな気もしたけれど、胸の中の固まりは、すーっと溶けていった。ミサ曲っていいなあ。もう少し歌いたくなった。

第8回はがき随筆大賞表彰式

2009-06-02 22:27:20 | アカショウビンのつぶやき





 いつの間にか8回目を迎えたはがき随筆大賞表彰式。

 今年は例年より早く開催されたため、夫の法事と重ならず参加できたことが嬉しい。
 鹿児島県代表のMさん、仲良しのOさんそして私、女三人寄ればの例にもれず、新幹線の車中は楽しいおしゃべりが続き、あっという間に小倉着。

 表彰式が始まり、RKBの中嶋順子アナの朗読で紹介される随筆は多くの作品の中から選び抜かれた力作ばかり。僅か252文字のなかに、これだけの内容を描ききれるのかと驚くような奥の深い随筆ばかりだ。

 鹿児島代表Mさんの作品はタイトルが「腫瘍に命名」。かなり深刻な事態にもかかわらず、ユーモアあふれる姿勢はさすが。昨年の支局長賞にも選ばれており、かなりの期待がかかる。そして「郵政事業会社九州支社長賞」と発表されると、鹿児島のテープルから思わず拍手と「ヤッター」と歓声が上がった。

 そして懇親会。初めてお目にかかるブログ仲間・山口県のOさんを探していると、とっても優しい笑顔のジェントルマンに声を掛けられた。初対面なのに旧友に逢うような懐かしさがこみ上げるのは随友のゆえか。

 いつの間にか書く力が萎えて、「私、読む人」に徹していたが随友の暖かさに触れて「書いてみようかな」という気持ちにさせられた、ありがとう。

華の古希4人組

2009-06-02 16:03:19 | はがき随筆
 はがき随筆の投稿者に4人の同年がいて、今年70歳になる。
 Iさんは毎月「昭ちゃん新聞」を発行するすごい人。仏顔だが仕事や文芸の鬼かも。
 Mさんはバッティングセンターのホームラン王。「薩摩のイチロー」と称され、テレビで十数回紹介された有名人だ ロマンチストのWさんは、第3回はがき随筆大賞を取った実力者。「新婚さんいらっしゃい」が待っていますよ……。
 あと一人は投稿とマスターズ陸上、土いじりを楽しむ私。
 1939年生まれの共通点は ″華″を求める心─か。古希なれど夢欲有りの4人組
  出水市 清田文雄(70) 2009/06/02 毎日新聞鹿児島版掲載 


ありがとうネ

2009-06-02 15:59:23 | はがき随筆
 左腕を骨折し、チタンを装着する手術を受けて8日間入院した。平成5年には、脳外科手術で4ヵ月も入院。ケガや病気に苦しむ日々が人生に含まれていたとは想定外だった。
 左手の猛烈な痛みは利き手の自由をも奪い、頼みの右手も思うように動かせず、入院の準備からして夫の手が要った。「あなたのお世話になどなりません」と大口たたきながら、ひとたび事が起きると「助けてくれ-っ」と大騒動する。故障の多
い″勝手ばば″と同居してくれる夫が、さすがに気の毒になった。「私と結婚して損ばかりだったネ」「ばかりではないヨ」
  鹿児島市 馬渡浩子(6D) 2009/5/31 毎日新聞鹿児島版掲載


バラと人と

2009-06-02 15:56:11 | はがき随筆
 ビロードの花の群落。
 「夢のよう」「かわいい」 「いい香り」。三つの言葉しか出てこない。
 母はバラが好きで、香水は「白バラ」を使っていた。
 「バラを見たい」と言ったら、娘は2時間かけて帰って来てくれた。
 バラヘの思いがまた深くなり、バラたちがいっそう輝きを増す。人と人もこんな風に感応し合えたらいいな。
 5月の空の昼下りの、とけるような半月をバックに、アーチにからんだ黄色いバラのくさりを、娘はカメラにおさめようとしている。
  鹿屋市 伊知地咲子(72) 2009/5/30 毎日新聞鹿児島版掲載
写真はzzrさん

いのちの電話

2009-06-01 23:33:28 | かごんま便り
 自殺予防が目的の悩み相談窓口「鹿児島いのちの電話」(099・250・7000)が今夏、開設20周年を迎える。

 「いのちの電話」は1953年に英国で、日本では71年に東京で始まった。鹿児島は全国32番目として89年7月に開設された。それ以来、年中無休、24時間対応の「眠らぬダイヤル」として、無償ボランティアが交代で相談に応じている。

 相談件数の推移をみると、05年1万5988件▽06年1万7583件▽07年1万8285件――と増え続け、昨年は2万1470件と2万件の大台に乗った。生活苦や健康不安、家族間の不和、仕事のトラブル、学校でのいじめ……とあらゆる悩み事が日夜、寄せられる。このうち自殺に直結しかねない特に深刻なものは、05年485件▽06年818件▽07年880件――とこちらも急増。08年は1292件と初めて4ケタに達した。最近の傾向として、従来それほどでもなかった中高年の女性からの相談が増えているという。

 相談は匿名のため、実はその後どうなったかは分からない。県警の統計を見ると過去4年間の自殺者は、05年522人▽06年547人▽07年718人▽08年647人――となっている。直接の比較は出来ないが「死にたい」と電話してくる人の数から推測すれば、一定の抑止力となっていることは間違いない。

 相談員は現在、約170人。1日6交代で2台の電話機に配置するのはぎりぎりの状況という。新たな篤志家を求めて先日、第23期の公開講座がかごしま市民福祉プラザで始まった。12月まで毎週木曜午後7時からカウンセリングなどを学ぶ。受講希望者は5月末までに住所・氏名・連絡先をファクスで099・259・5245へ。相談員にはなれなくても資金面で活動を支える賛助会員の制度もある。問い合わせは事務局099・250・1890まで。

  鹿児島支局長 平山千里 2009/5/25 毎日新聞掲載