はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

吾(わ)を待つらむや

2013-12-22 17:00:45 | はがき随筆
 ひどい風邪をひいてしまい10日ほど寝込んだ。養護施設のボランティアも休んだ。半月ぶりに出向くと子供たちが「あれっ」という顔で私を見る。
 「風邪をひいて休んでいたのよ。みんなは元気だった?」。
 はるちゃんが横に来て「九九覚えたよ」と小声で唱え始めた。宿題をしようと誘うと、ぐずぐずしている子供たちが今日はさっさと宿題を始めた。隣の子の宿題を見ていると、膝の上に誰かが乗ってきた。「この赤ちゃん誰かな」と冷やかしていると、背中にも誰かがおぶさってきた。「ひゃー、つぶれる」と熱い歓待に心が満たされていく。
 出水市 清水昌子 2013/12/22 毎日新聞鹿児島版掲載

しめ飾り

2013-12-22 15:34:15 | はがき随筆
 年の暮になると、祖父は毎年ワラの束を抱えて帰ってきた。正月用玄関飾りの手作りのためだ。子供の頃、社宅に住んでいた。新年を迎えると、どの家もしめ縄を円にし鶴の形をした物を飾っていた。我が家だけ、エビをかたどった棒状のしめ縄だった。1軒だけ異質な飾りに、私の心は餅のヒビの様にカサついていた。
 祖父はワラを足の親指にかけ、縒り上げて縄を作り、細かい個所から太い部分へと造形した。胴下にワラを差し込み足に。ウラジロとミカンを付け完成。二つと無い飾りの手順を習わなかったことを悔やんでいる。
  鹿児島市 高橋誠 2013/12/22 毎日新聞鹿児島版掲載

流れ星

2013-12-22 15:28:24 | はがき随筆
 夜明けがますます遅くなる朝5時。空気は澄み、星は輝き増す。そんな時、滑るように走る流れ星に甘酸っぱい記憶がよみがえる。
 金ボタンとセーラー服の二人が、消えるまでに願いごとをすればかなえられると語り合ったこと。手もつなげない2人が何を願おうと思ったか、この愛が永遠であれとひそかに思ったのはぼくだけだろうか? 文学などには縁遠いぼくにヘッセを読ませ太宰を語ってくれた頃、こんな日がずっと続くと思っていた。早朝の散歩は少年の日のぼくと語り合う時でもある。
  志布志市 若宮庸成 2013/12/20 毎日新聞鹿児島版掲載

クリスマスデコレーション

2013-12-22 15:27:59 | アカショウビンのつぶやき


あらあら…
書きかけで保存したまま、
何とクリスマス当日まで忘れてました。


鹿屋キリスト教会では、11月最後の日曜日、
毎週持たれている日曜礼拝の後
全員で大掃除とクリスマスの飾りつけをします。

外では、イルミネーションの取り付け作業。




屋内では、のっぽさんが選ばれて頑張ってくれます。




クリスマスの雰囲気になりました。




立て看板は、毎年かおり姉妹が書いて下さいます。


付属施設のベテルホームも、可愛い手作りの飾りが一杯です。
12月22日の日曜日は、クリスマス特別礼拝。
12月24日のクリスマスイブは、お祝いの会があります。

この日は、グループの讃美やハンドベル、ゴスペルコーラス、キャンドルサービス
などで、この世の救い主、イエス・キリストの誕生をお祝いします。

Mary Christmas!


「一難去って」

2013-12-22 15:22:21 | 岩国エッセイサロンより
2013年12月22日 (日)

   岩国市  会 員   山本 一

 ある日突然不眠になり、2日間一睡もできない。慌てて、病院に駆け込む。生まれて初めて睡眠薬なるものを処方され、その翌日は平常に戻った。これでめでたしめでたしのはずが、これだけでは終わらなかった。
 眠れなかった夜のこと。途中で何度も起きだし、トイレに行ったり本を読んだりしても、隣で寝ている妻は大いびき。眠れないいら立ちも手伝い「たとえ僕が危篤になってもおまえは寝ている」と妻をいびった。これが尾を引いた。「別の部屋に寝るわ」と一方的に通告される。長年の夫婦の慣行が破れた。また目がさえる。

   (2013.12.22 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載

ルウ、6歳

2013-12-19 14:52:30 | はがき随筆
 台所にいると、孫のルウがそっと来て「ケンちゃんはあれくらいのことでどうして怒るの」と。兄のノアが暖炉に火をつけようとしたら、大声で怒鳴ったのだという。ケンちゃんに伝えると「ごめん、ごめん」と平謝りだった。
 先日、ノアが折り紙で手裏剣を作っていた。「僕も」とルウも作り始めた。初めは不格好だったが、20枚もおったろうか、しっかり形が整った。その根気、集中力に驚いた。そう言えば、自転車も1人りでひたすら練習して、半日で乗れたのだった。゜
 ルウ、6歳、来年は小学生です。
  薩摩川内市 馬場園征子 2013/12/19 毎日新聞鹿児島版掲載

クリスマスカード

2013-12-18 16:56:25 | アカショウビンのつぶやき


 私が関わっている鹿屋キリスト教会では、
毎年手作りのクリスマスカードを全国の信友に贈る。

今年も可愛いカードとミニリースができました。

プレゼントに添えるお手紙をみんなで書きます。

わいわいがやがやと楽しいひとときです。

カナダ、合衆国、ベルギーと海外にまで、70通の封筒は、飛んでいきました。



Mary Christmas!

日だまり

2013-12-18 16:15:18 | はがき随筆
 不意の出来事だった。夫のいとこというその方に初めてお会いした。岐阜在住との事。夫とは幼友達で、弟のように可愛がっていたと話され、40年ぶりに訪ねてこられたのだった。
 夫の他界を知り絶句。「もっと早ければ」と肩を落とされる。「一緒に飲みたかった」──とも。奥様共々、仏前に丁寧に合掌され、しばし無言のまま。
 懐かしいアルバムを開き、思い出話に耳を傾ける。「体を大切に」と気遣ってくださり、その数日後、記念にと撮った写真入りの厚めの封筒が届いた。それは、冬の日の日だまりのように心温まるものだった。
  出水市 伊尻清子 2013/12/18 毎日新聞鹿児島版掲載

由緒ある大慈寺での取材

2013-12-17 22:32:38 | アカショウビンのつぶやき








今年もラジオ番組の取材で志布志市の大慈寺に行ってきました。

この寺は、室町時代(1340年)の創建で、臨済宗京都妙心寺の末寺であり、
江戸時代には16の支院と100名以上の僧侶が学問に励んでいたそうですが、
廃仏毀釈により、一時は廃寺となりましたが、
明治12年に旧大慈寺宝地庵跡に再興され今に至っています。

ここの住職さまのお母様は歌人で、
私が関わっている地域エフエムのラジオ番組「心のメモ帖」で、
お歌を紹介させて頂いています。

久しぶりにお邪魔してきました。
「短歌は日記代わりです」とおっしゃる86歳歌人、イツ子夫人は、
穏やかな口調で、先々代の住職様の逸話もお話下さいました。

珍しく暖かな日だまりの中で、取材をさせて頂きました。
いつまでもお元気でと祈りつつお寺を後にしました。

人生いろいろ

2013-12-17 22:03:35 | ペン&ぺん
 2013年も残すところ、あと2週間余り。年末の大掃除や年賀状書きに忙しい毎日を送っておられるだろう。今年の流行語大賞や1年を現す漢字も「輪」と決まった。皆さんの我が家、職場の流行語や漢字はどんなものがあるのだろうか。
 今年は7月の参院選、公金を投入した県職員らの中国・上海研修、桜島の噴火・大量降灰と慌ただしかった。今は医療法人「徳州会」グループによる公職選挙法違反事件が県政界を巻き込み、気が抜けない。いずれもこれらのニュースを鹿児島支局から発信し、全国に伝えている。
 選挙に金がかかるのは想像はつく。でも今も昔ながらの手法が鹿児島で取られていたとするならば、これを機会に一掃すべきだ。組織内で反目し、干された人物が金の流れを示すチャートや名簿、通帳など一切の資料を持って警察や地検に駆け込むのは世の常ではないか。「有らぬ疑い」に迷惑しているなら、まして薩摩の男なら、正々堂々と真実を語ってほしい。
 伯父、叔母が相次いで、がんで逝った。2人は開腹した時は手遅れだった。伯父は戦争末期、小型ボートに爆薬を積み、敵艦に体当たりする訓練を受けていた。貴重な生き証人だったのに、ついに詳しい話を聴けなかった。悔みきれない。
 今年も多くの著名人が鬼籍に入った。「大地の子」で知られる作家の山崎豊子さん、「人生いろいろ」と島倉千代子さん、「恋の季節」「君といつまでも」など数々のヒット曲を世に出した作詞家の岩谷時子さん。島倉さんは他人の多額の借金を背負い、がんを患ったりとまさに波乱万丈の人生だった。
 皆さんもご家族、友人、知人で亡くなられた方がおられるでしょう。きっと天国から見舞ってくれているはずだ。だから、天国のご先祖さまから叱られるような生き方だけはしたくない。
  鹿児島支局長 三嶋祐一郎

はがき随筆11月度

2013-12-17 21:38:25 | 受賞作品
 はがき随筆11月度の入賞者は次の皆さんです。(敬称略)

【月間賞】25日「CD文庫」鵜家育男(68)=鹿児島市武
【佳作】7日 「思秋期」西田光子(55)=志布志市有明町 原田
▽17日 「皇帝ひまわり」伊尻清子(63)=出水市武本


 CD文庫 老眼で活字が読みづらくなり、CD文庫で朗読に親しむようになったという内容です。文学の受容が始めは音読による聴覚からのものであったことを考えると、この読書法もあながち不自然なことではないでしょう。CD文庫の朗読が、かつての祖母の絵本の読み聞かせを思い出させたというところは、新しさと古さの絶妙の対比です。
 思秋期 子供は自立し、夫は転勤になり、専業主婦の毎日、時は秋。こういう状況で思うのは、社会のために役に立つ仕事をしてみたいということ。といって何をしたらよいのか。気候も年齢もまさしくもの思う秋ですね。1人になって時間ができて、社会という存在を考えるようになった気持ちがよく表わされています。
 皇帝ひまわり 晩秋に咲く皇帝ひまわりの花を見上げていると、いきなり孫娘の来襲。母親との感情的な行き違いからの小家出。2.3日間の山村留学を楽しんで、けろりと帰って行った。どこにでもある親子げんかの小事を、皇帝ひまわりという名前のもつ威厳が見守っているという取り合わせが、優れた文章にしています。
 この他、興味を惹いた3編を紹介します。
 津島友子さんの「運動会準備」は、鹿児島に越してきて、幼稚園の運動会の家族ぐるみ地域ぐるみの準備騒動に圧倒されたことが、素直な驚きとして表現されています。住んでいると当たり前のことですが、初めての人には驚きでしょう。すぐ慣れますよ。 
 一木法明さんの「ヤー、久しぶり」は、今年もジョウビタキの番が庭に来た。その渡り鳥を擬人化しての表現が、まるで遠来の客をもてなすような、楽しみと親しみとをもって描かれています。
 種子田真理さんの「私の社会勉強」は、裁判の傍聴に行って、いろいろの事案を見学するにつけても、素直に罪を認めない被告人の言動に悲しい憤りを感じるという内容の文章です。「ハガキ随筆」の素材はどうしても身辺雑記にかたよりがちですが、こうしう文章には新しさを感じます。
  (鹿児島大学名誉教授 石田忠彦)

せっかち

2013-12-17 21:29:25 | はがき随筆


 年賀状にえとの動物の顔をだるまにのせた絵を描き初めて12年、午年でとょうど一回りした。さて来年はどうするか……。
 天井を見上げていたら、カミさんが「何考えているの?」。来年の年賀状の図案を考えていると答えたら「まだ懲りないの? 毎年書き終わってから喪中の知らせが届くことを繰り返しているのに」。
 そうなのである。今年も6通届いた。カミさんもせっかちだったのだが、自分をのんびり派に変えて、釣り合いを保っているのかも。カミさんは……偉い? それはそれとして、未年の図柄をどうするか……。
  西之表市 武田静瞭 2013/12/17 毎日新聞鹿児島版掲載

住職退任の日に

2013-12-17 21:13:29 | はがき随筆




 住職継職法要の冒頭、決意を仏前に向かって述べる表白で、長男は次のように結んだ。
 「私ははなはだ浅学非才にして、その力は十分ではありませんが、歴代住職の足跡をたどり、門徒同行のご助力を得て、み教えの灯を絶やさぬよう精進いたします」と。 後継ぎの彼は大学卒業後、約20年間会社勤めの後、大学院で宗学を学び昨年9月に帰山してこの日を迎えた。当日は近隣の寺院や門信徒が集まって退任と新住職の就任を祝っていただいた。私は、住職の座を去る惜別よりも、息子の今後の努力に期待する思いで胸が熱くなった。
  志布志市 一木法明 2013/12/16 毎日新聞鹿児島版掲載

クリスマス

2013-12-17 21:02:48 | はがき随筆
 クリスマスには苦い思い出がある。若い頃、上司から小倉のキャバレーの招待券を2枚もらったので同僚を誘い、2人で大いにクリスマスを楽しんだ。トイレに行こうとしたら、同僚が「ボーイがトイレにいて客がチップを渡している」と言うので、辛抱することにした。
 終電車に乗ったが、我慢ができなくなり、途中の駅で降りた。酔いも覚めて、寒い夜道を門司の寮へと2人で歩いて帰った。
 当時の寮生はよく飲みに行っては金欠病になり、給料を前借りして評判になった。クリスマスの声を聞くと、あの夜の記憶がよみがえり、苦笑している。
  鹿児島市 田中健一郎 2013/12/15 毎日新聞鹿児島版掲載

晩秋のある日

2013-12-17 20:55:45 | はがき随筆
 76歳。いつ、何があってもおかしくない。かかりつけの歯科医院の隣に葬祭場ができた。「見学できます」の張り紙に、治療の帰りに寄ってみた。
 係の方に案内していただき、パンフレットをもらって帰った。中規模で一日一つの葬儀。家から近いのもよい。雅楽が縁で結ばれた娘夫婦には竜笛を奏して送ってほしい。娘は涙で吹けるだろうか。いろいろ考えていると、不覚にも涙が出た。
 「死は古い着物を脱いで新しい着物に着替えるようなもの」。またこの世に出直してくる。明るい展望がある。涙を拭って夕げの支度にとりかかった。
  鹿児島市 内山陽子 2013/12/14 毎日新聞鹿児島版掲載